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当プロジェクトは、従来の平面
的なマンガの世界を超越しつつも、3D
CGに見られるようなアルゴリズムによるリアルさの追求とは一線を画する「立体マンガ」制作のための専用ソフトを開発するものである。
作業にあたっては、CADアプリケーションや3Dデータの立体ディスプレイに対する表示関係のプログラミングを手がけてきたプログラマの中野洋一を中心
として、IT関連技術やデザイン関係のコンサルティングなどを行っているテクノロジーライターの大谷和利がユーザーインターフェイスやユーザビリティの面
で協力。さらに、「ルパン三世」などの作品で知られるプロの漫画家であり、東京工科大学大学院メディア学研究科において立体マンガの研究を行ってきたモン
キー・パンチ氏が実作者の立場からアドバイスを行うことで、実際の作品制作に使用できるレベルの仕上がりを目指す。
昨今、アルゴリズムによる質感の生成やモーションキャプチャを利用した動きの追求など、リアルさを重視した3Dアニメーションのような映像表現が当たり
前のものとなってきているが、これは動画・映画の方法論を用いてマンガ的な世界にアプローチしたものと言える。しかし、本来、マンガにはマンガとしての文
法や約束事(コマ割りによるストーリーの展開法や動きを表すグラフィックス、擬音語・擬態語の表記、時間・空間的な表現など)があり、それらがマンガ独自
の世界やアート性を生み出してきた。また、電子的なディスプレイ装置は、臨場感を追求するために解像度や色の再現性、視野角などを向上させてきた。ところ
が、この方面での進化はすでに高いレベルで飽和状態にあり、今後のブレークスルーを担うのは紙媒体の置き換えを狙った電子インク技術と、人間にとって自然
な裸眼立体視が得られる3D表示装置になると考えられる。
そこで、マンガ本来の特性を活かしながら立体視を前提とする表現技法の研究がモンキー・パンチ氏などの先進的なマンガ家の手で行われてきたが、このよう
な「立体マンガ」を実作するにあたって不可欠となる電子的な高機能エディタはこれまで存在していなかった。マンガは、すでに日本の重要な産業の1つとなっ
ているものの、その電子化にあたっては、印刷物をそのままスキャンして画像ビューワ向けに配信するような物量作戦に出た諸外国の急激な追い上げを受けつつ
ある。このことからも、高い付加価値によって日本のマンガ産業のリードを保つことが可能な「立体マンガ」を確立するためのツールの整備は、未踏ソフトウェ
アのテーマに相応しいものと考えられる。
なお、このソフトウェアは、リーズナブルな価格と市場での入手のし易さから、シャープ製の3D液晶技術を採用した外付け15インチディスプレイ「LL-
151D」での表示を前提に開発されるが、最終的な表示装置はこれに限定せず、新たな、もしくは複数の異なるディスプレイへの対応も考慮した内部構造を採
る予定である。
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