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2005年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 



1.担当PM


 竹内 郁雄   (東京大学大学院教授)



2.採択者氏名


 代表者

藤井 大輔(RED- ZONE SOFT株式会社 代表取締役)

共同開発者

澤口 徹  (RED-ZONE SOFT株式会社 取締役)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社オープンテクノロジーズ


  4.委託支払金額


 2,957,989円



5.テーマ名


 個人・少人数による開発向けの、ネッ トワーク利用型ゲームフレームワークの開発



6.関連Webサイト


 http://prismflux.net/



7.プロジェクト概要


 一般に困難とされて いるオンラインゲームの開発に対し,容易に入手・利用が可能なフレームワーク (基礎となるプログラム群) を開発する.
 特に個人や少人数など技術資源・経済資源・時間資源の少ない人たちに配慮した仕様を心がけ,「草の根 (個人・少人数による自主制作活動) 」ゲーム文化にオンライン機能を普及させる起爆剤とすることを目指す.

 ここ数年の間に「草の根」ゲーム制作がブームとなりつつある.インターネットにより,そうした自主制作作品の発表の機会が増えたことがその主な原因と考 えられる.商業ベースの作品と比べて遜色ない質と人気を誇るゲームすら現われ始めた.
 しかしながら,ネットワークそのものをソフトウェア内で利用したゲーム,いわゆるオンラインゲームが個人・少人数によって制作されるケースは「草の根」 ゲーム全体の割合と比較して圧倒的に少ない.
 我々は,自身の経験,同世代の開発者へのヒアリングに基づき,以下の3つの理由が「草の根」オンラインゲーム開発を阻害する要因となっていると考える.
(1) ネットワークゲームを利用した機能,特に通信やサーバ内プログラムの実装が,クライアント側のそれに比べて取り掛かりの難易度が高く,知識も入手しづらい こと.
(2) ゲームを運営するのにサーバを稼動させる必要がある場合,そのレンタル (あるいは自宅内稼動) にかかる費用を個人・少人数単位で請うには経済的負担・リスクが大きいこと.
(3) ネットワーク利用部を含むゲームシステム全体が健全性を保つために,継続的な管理責任が制作者に課せられ,それが時間的拘束などが大きな負担となること.

 これら3つの課題 (すなわち,技術・経済・時間の制約) をクリアし,草の根制作者に配慮したオンラインゲーム共通のフレームワークの開発・公開を本プロジェクトの目標とする.
 具体的には以下の要件を優先度順に実装していく.カッコ内は使用言語等.aは必須機能,bは準必須機能,cは余力があれば手を出す分野を表す.

a サーバ側フレームワークの開発 (Java)
a クライアント側フレームワークの開発 (Java)

 上記の両プログラムは互いにインターネットを介した通信を行なって連携することが前提となる.また,実装に当たっては各パッケージの独立度を高め,各個 制作者が容易に独自の改造を施せるよう留意する.

b ゲーム情報をWebサイトで管理・閲覧する機能の実装 (Java,MySQL,PHP,XML等)
b サーバ負担を監視し,負荷超過時に管理者に通知する機能
b 本フレームワークの使用法について「明朗快活に」説明した文書の作成と公開

c 自作以外のクライアント側フレームワーク (DirectX,Flash等) との互換性
c ゲーム内情報を携帯電話で操作できるアプリの開発
c 本フレームワークで開発されたオンラインゲーム群を同一サーバ内で同時に運営可能とする上位フレームワーク




8.採択理由


 自らが立ち上げたゲー ムソフト会社での開発から,オンラインゲームを多くの人が容易に開発できるようなフレームワークを抽出して提供する,いわばオンライゲームベンチャー文化 を醸成しようという提案だ.現在開発中の3つのまったく異なるジャンルのゲームからフレームワークを抽出するというのだが,それほど道は平坦ではないはず であり,そこのアイデアがまだよく見えない.しかし,なせばなるの意気込みと実力を感じることはできた.このプロジェクトで,同人ゲームという世界が,ど う進化していくのかを占えるかもしれない.



9.成果概要


 本プロジェクトでは以 下の機能の開発を行なった.

(1) サーバ側フレームワーク機能
 オンラインゲームに必要なサーバ機能を抽出し,その開発を行なうためのフレームワークを構築する.具体的には,ゲームの場およびルールの定義/編集機 能,ゲーム内で利用するオブジェクトの定義機能,ネットワークライブラリ,およびこれらの要素を利用して稼働するサーバ機能などからなる.
 これに関しては通信をするオブジェクトにハイブリッド暗号方式を用いた暗号化と復号を行なう機能を実装した.

(2) クライアント側フレームワーク機能
 「サーバ側フレームワーク機能」で構築したサーバを利用するクライアントを開発するためのフレームワークを構築する.これはクライアント開発用のライブ ラリ群 (ネットワーク機能部分を含む) と,ソースコード生成機能からなる.
 実装したのは,ゲーム画面簡易作成機能,時間進行に合わせて映像のフレームを適正に吐き出すシステム (fps体系作成機能),ゲーム内オブジェクト簡易作成機能,アニメーションパターンと移動パターンの設定機能,画面の奥から順に物やキャラクタを描画し ていくためのレイヤ管理機能,サウンド再生機能のほか,図2.8.1 アニメエディタの画面のようなアニメエディタを作成した.このグリッドを順次適当に選択し,フレーム数を指定することによって,簡単にキャラクタのアニメ を作成することができる.作成したアニメを,WYSIWYGですぐにチェックできる.

    

    図2.8.1
     2.8.1 アニメエディタの画面

   

  

(3) サーバ管理機能
 本フレームワークを利用して開発したオンラインゲームをサービスとして稼働したときのサーバ管理を行なう機能を開発する.具体的には,サーバ情報,ユー ザ情報,ゲーム情報の管理機能と,サーバおよびゲームの状態監視機能を持つ.
 残念ながらこれは実装できなかった.

(4) フレームワークを利用したゲーム開発
 本システムの実用性を検証するため,開発したフレームワークを使って実際のゲームの開発を行なう.
 PrismFluxはRED ZONEで開発したゲームである (図2.8.2 PrismFlux).ハイスピードで展開するネットワーク利用型アクションRPGであり,一人でも十分遊ぶことが出来る,短時間でも遊ぶことができる, アクション要素が高い,ストーリーがちゃんとあるといったコンセプトを実現すべく開発したものである.これのプログラムコードをベースにリファクタリング を行ない,フレームワークの抽出を進めた.不足している,または必要な機能は随時追加した.

    図2.8.2

   

    2.8.2 PrismFlux

  

   多くの部分が未実装となってしまったが,ユーザがある程度Javaプログラミングの知識を持っていればクライアント側のフレームワークを用いて比較的容易 にゲームをつくることができるようになった.また,アニメーションに設定できるコマの数は,この手のツールとして有名なRPGツクールが最大4枚までとい うのに対して,本フレームワークでは2枚以上から何枚でも設定することが可能である.


 


 



10. PM評価とコメント


 オーディションやブー スト会議ではとても元気のよかった藤井君であるが,途中から体調を崩してしまい,開発が思うように進まなくなってしまった.その結果,共同開発者の澤口君 に負担がかかり,開発が中途半端になってしまった.とても残念である.プロ管の佐野さんもずいぶんと走り回ってくれたのであるが,ずれてしまった歯車はそ う簡単に元に戻らないものである.
 ゲーム業界というのはとても熾烈なところである.特に藤井君のような小さな会社でいわば同人誌のようなスタイルでゲームを開発するのは,胃がいくつあっ ても足りないような大変さだと思われる.
 計画はとても面白いと思ったのだが,会社として日銭を稼ぐ仕事も同時にしないといけない環境で,いわば万人のためのこのプロジェクトを進めるのは相当に きつかったと思う.そういえば,ブースト会議の夜のセッションで藤井君が「僕は血反吐を吐きながら地べたを這いずり回ってゲームソフトをつくっています」 と言っていたのを思い出す.たしかに,PMが現場訪問したときに目の当たりにした開発現場風景から,そのような状況もむべなるかなという印象を強く受け た.
 計画に比べるとちょっと残念な成果しか出ていないが,初志でやらんとしたことはいまでもしっかりと通用するコンセプトである.藤井君の再起に期待した い.

 なお,Prism Fluxで遊びたいと思った方は以下のWebサイトにアクセスすればよい.無料でプレイすることが可能である.
  

  

   http://prismflux.net/

  

 


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