|

「紙のキーボード」のコンセプトは、手書き入力への作家としての山之口氏のこだわりと、自然言語処理研究者としての野口氏の想いのシナジー効果で生み出されたと考えることができる。図6は上段と下段にシステム構成と要素技術をまとめ、それらの関連を示す。
図6 「紙のキーボード」システム構成と開発した要素技術
今回のシステムは、携帯型の執筆ツールの実現に向けて、必要な要素技術を揃え、それらを適切な形で連携させ、実用レベルの性能を達成した。ペンの位置検知というデジタルペン装置の基本機能に、多様なペンジェスチャ、キャリブレーション、手書き文字再利用などのアイデアを付加したのはもちろん、そのままでは実用レベルにない手書き文字認識の性能を、文法的解析やユーザに負担をかけないカスタマイズなど独自の要素技術で「使える」レベルの手書き入力ヒューマンインタフェースを実現した。
以下のその主要な成果について説明する。
図7 デジタイザ方式の「紙のキーボード」の印刷面
「紙のキーボード」のユーザは、一人で長く使い続けるユーザであることを仮定している。このため、文字の書き方の癖を学習してゆくプロセスを組み込むこととした。その中でも重要なのが、新たなパターンを登録したり、誤った認識結果を適応させる、カスタマイズ機能である。しかし、この機能が、面倒な場合ユーザにとって敷居が高く、認識精度の向上に寄与できないこととなる。新開発のソフトキーボードでは、文字パターンのカスタマイズは、インクファイルを変換後に、誤認識した文字を訂正する操作の一部として行うようにした。ユーザが気軽にパターンの登録を行えることを優先させたからである。図8に、「画像と文字」モードで生成されたHTML文書の表示結果を示す。図9のように文書が生成された後、「文字パターンのパーソナライズ」画面を開くと、いま認識した手書き文字と認識結果の上位10文字までが一覧表示される。
図8 「画像と文字」モードでの生成結果

図9 「手書き文字のカスタマイズ」画面
「紙のキーボード」とは、デジタルペンを用いて文章の執筆を支援する一連の技術であり、小説家としての観点から「紙のキーボード」を設計し、下記の成果が得られた。
@日本語文章の執筆作業の支援機能を備えたデジタルペンを開発し、その有効性を確認した。
A一部をキー入力など、「紙のキーボード」に固有の条件を活かして単語辞書検索や後接文字列連接解析、個人への文字パターンカスタマイズなどの技法を組み合わせることにより、手書き文字認識技術が実用レベルで利用可能なことを示した。
B従来のPDAや携帯電話の日本語入力にくらべて簡便で速いツールを実現した。
Cパターン認識方式の「紙のキーボード」では加えて携帯性も向上させた。
D紙とITを連携させることで、テキストデータをPCへ集約する手間が大幅に軽減された。
|