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1) 開発仕様
次の仕様・環境に基づいて実装を行った。
・PCにダウンロードして利用するクライアントプログラム Area Messenger
−Windows環境における動作(将来的には全てのプラットフォーム上で動作可能に
する)
−Visual C++2005にて実装
・Area Messenger Server
−OS : Debian GNU Linux
−チャットサーバ : Jabberd2
−webサーバ :
Apache2 (スクリプトとしてPHP,地図表示にgoogle mapsを使用)
−D Bサーバ :
postgreSQL
本プロジェクトの成果を図示すると、次のようになる。

図1 Area Messengerの全体概要
クライアントプログラムであるArea Messengerの機能に本プロジェクトで開発した全ての機能が含まれているため、Area MessengerのGUIとこれに備える4つの機能を記述する。
2) Area MessengerのGUI
Area Messengerは実証実験に用いたα版と、現在製作中であるVer 2.0があるため、GUIに関しては両方を紹介する。(機能はα版・Ver 2.0ともに同一である。)
<ログイン画面>
Area
Messenger α版 Area Messenger Ver 2.0
<ログイン画面>
Area
Messenger α版 Area Messenger Ver 2.0
<設定画面>
Area
Messenger α版 Area Messenger Ver 2.0
3) 機能別詳細
続いてArea Messengerが備える4つの機能に関して記述する。
・チャット機能
事前に登録された友人ユーザとメッセージをリアルタイムに交換する機能。現在普及しているメッセンジャーサービスが提供している機能と同様のものとなる。既存のメッセンジャーサービスでは絵文字の表示やファイル交換等、多くの機能が実装されているが、本メッセンジャーではテキスト交換と位置情報の送受信のみに限定した。テキスト交換は通常のメッセンジャーと同じく、ネットワークに接続している2ユーザ間にて短いテキストデータの交換を行う仕組みである。位置情報の送受信は、クライアントプログラムの画面内に表示されている地図の中心座標をユーザ間で送受信する機能のことを指す。
本機能はJabberd2の仕様に基づき、実装を行った。Jabberd2はオープンソースで開発されたインスタントメッセージングサービスであり、IETFのXMPPというインスタントメッセージングのプロトコルに準拠している。そのため、クライアントプログラムもXMPPに基づき実装を行った。
・位置情報取得・マッピング機能
ユーザが接続しているネットワークのデフォルトゲートウェイのMACアドレスによってユーザの位置を判別する機能。該当するMACアドレスと、そのネットワークの物理的な場所を表す地理情報(緯度・経度)ならびに場所の名称を予め位置情報DBに登録しておく。ユーザが本アプリケーションにログイン時に当該ネットワークのMACアドレスを取得、サーバにリクエストすることによって緯度・経度及び場所名を取得することができる。
位置情報を取得するためには、リクエストされたMACアドレスが登録されていることが必須である。位置情報DBに未登録のMACアドレスがリクエストされた場合、ユーザにボランタリーに緯度・経度・地点名を登録してもらう仕組みとなっている。
また本アプリケーションの一部が地図(google,Inc.が提供するgoogle mapsを利用)となっており、この地図上に自分・友人の位置情報を表示する。これによりユーザ同士が位置に関連したコミュニケーションを創発しやすい環境を提供する。またgoogle mapsを利用しているため、地図に関しては、Area
Messenger内に実装されたウェブブラウザを通じて取得することになる。そのため、サーバサイドのjava
scriptを変更することにより、ユーザのクライアントプログラムをアップデートする必要なく、容易に位置情報を利用するサービスを提供することができる。
・住所検索機能
街区レベルの住所から緯度・経度を割り出し、必要に応じてArea
Messenger内の地図の中心座標を割り出した座標に変更する機能。位置情報のコミュニケーションを円滑に進めるための機能となっている。
この機能は、未登録のMACアドレスをリクエストした際に大きな利便性をもたらす。本メッセンジャーの仕様上、ユーザが未登録のネットワークにて利用した際、MACアドレスと緯度・経度・地点名をボランタリーに登録してもらう必要がある。MACアドレスは自動的に認識し、地点名の入力もユーザに大きな煩雑さをもたらすことはないが、緯度・経度の登録はユーザにとって煩雑な作業となる。そこで本機能により、現在位置の住所を入力すれば、その周辺の座標まで地図の中心点を移動させることができる。これにより、ユーザの入力の煩雑さを軽減し、ボランタリーな位置情報の収集を容易にする。なお街区レベルの住所とその緯度・経度のDBには国土交通省国土計画局が無償で提供している街区レベル位置参照情報ダウンロードサービス(http://nlftp.mlit.go.jp/isj/)を利用した。
・SNS連携機能
既存SNSのユーザ名・パスワードを入力することにより、SNS上で友人としてリンクしているユーザを本メッセンジャーの友人リストに加えることができる。また、本メッセンジャーの友人リストに加えられているユーザが外部SNSに登録している場合は、当該ユーザのSNS上のマイページを簡単に参照できる機能も実装した。Area Messenger上に登録されているA君のプロフィールを知りたい場合、この機能を利用することで外部SNSのA君のプロフィールページやblog,友人関係を参照することができる。
将来的にSNS上でblogを更新した際に本メッセンジャーに通知する機能の実装も検討している。また、ユーザがSNS・本メッセンジャーを透過的に利用できるよう、プロフィール更新作業に関してもSNS・メッセンジャーにて共有の仕組みを提供する。(前項の設定画面のキャプチャを参照)
4) 開発成果の特徴
本プロジェクトが開発したArea Messengerは、2.背景及び目的にて明記した二つの特徴を有している。
・位置情報を用いたマッチング機能
・同期型・非同期型のコミュニケーションをシームレスに提供
まず前者の特徴に関しては、現在発表されている同様のシステムと比較すると、位置情報を利用して具体的なサービスにまで踏み込んでいる点で特徴的である。
PCベースで位置情報を検知するシステムは、下記のようなサービスが現在発表されている。
・locky(http://www.locky.jp/)
−名古屋大学大学院情報科学研究科河口研究室
−無線LANを用いた位置情報・測位に関する総合ポータル
−ユーザによる協調的なデータ収集
−収集されたアクセスポイント数:99276 (2006/08/29現在)
−応用システムの開発を目指す
・PlaceEngine(http://www.placeengine.com/)
−ソニーコンピュータサイエンス研究所
−Wi-Fi機器を利用した位置情報を使って現在位置を推定
−クライアントプログラムが収集したアクセスポイントのMACアドレスと電界強度の情報を
PlaceEngineサーバに送信し、データベースと照合して現在位置を取得する
−東京都内の主要商業地域にあるアクセスポイントが登録済
−ユーザが自らアクセスポイントを登録することも可能
これらのシステムはアクセスポイントの情報を用いてPCの位置情報を検知していることはArea Messengerと同じ仕組みだが、具体的な応用サービスまで提供していない。技術的にPCベースで位置情報を検知できることを示しているにすぎず、この仕組みを応用したサービス開発が今後の焦点となるであろう。Area Messengerは位置情報を公開することによって、チャットを中心としたコミュニケーション支援に活用することを提案・実装していることに特徴がある。
また、後者の同期・非同期型コミュニケーションの統合に関しても、特徴的である。
米Microsoftが2006年7月に発表したWindows Live Spacesのように、SNS・メール・メッセンジャーといったインターネット上のコミュニケーションツールを統合する動きが大手サービスプロバイダーの間でも見られる。前述したようにインターネットのアーキテクチャ上、ブラウザやメーラーを介した非同期型コミュニケーションが全盛ではあるが、クライアントプログラムを組み合わせることによりメッセンジャー・音声通話といった同期型コミュニケーションも統括的に扱うことができる。ユーザがインストールしたいと思わせるような誘引設計・サービスクオリティを実現することができれば、インターネットを利用したコミュニケーションポータルの形成も可能であると考えられる。
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