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2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   原田 康徳 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)


2.採択者氏名

開発代表者

  宮原 美佳 (ビデオローグ 代表)

共同開発者

 なし


3.プロジェクト管理組織


  有限会社トリガーデバイス


4.委託金支払額


 1,498,522


5.テーマ名


  Movie Cards(ムービーカード)」創造的ワークショップのためのシステム

 


6.関連Webサイト


  http://www.moviecards.org/


7.テーマ概要


 今日、人々の情報収集や社会参画にメディアが深く関与しています。とくに映像メディアはあふれていますが、受け手としての利用がほとんどで作り手としての経験が欠けていました。提案者は、映像メディアを活用し発信する能力を身に付けることは、教育で注目されている「メディアリテラシー」の獲得にも役立つと考えています。
 本提案では、映像メディアをかんたんに編集できる開発中のカードインターフェイスのシステム「Movie Cards」を用いた参加型ワークショップの企画・開催を通して、このシステムをさらに発展し普及することを目指します。
 具体的には、ワークショップ開催のためのティーチングガイドの作成、オンライン・アーカイブ機能をはじめとした実用的な機能の追加、細かなインターフェイスのチューニングなどを行います。
 「Movie Cards」は単なる映像編集ツールを超えた、個人のメッセージを伝える「新しいメディア」をつくりだすクリエイティブツールです。ワークショップでは、幅広い人々へ向けてクリエイティブな経験やアイデア・思考を構築する魅力を提供します。
 本プロジェクトでは、より多くの人に「Movie Cards」を経験してもらうことで、一般市民による新しいメディアの流通を促進し、市民のメディアアクセスが活性化する社会の実現に貢献したいと考えています。


8.採択理由


 前回,共同開発者として参加したムービーカードシステム(代表者杉本氏はスーパークリエータに認定)を普及させるためのパッケージ化と教材の開発を行う.
 ムービーカードはUI的にはありきたりの技術しか使っていなかったが,その成果の各方面の反響は非常に高いものがあった.
 今回の開発が成功すると,ムービーカードは誰でも簡単に使えるようになり,開発者が想定していなかった応用も展開されるだろう.
 核となる難しい部分の開発は前回すでに終了しており,いよいよ宮原氏の本領発揮となる教材開発が非常に楽しみである.




9.開発目標


 現代は「メディア社会」と呼ばれるように、人々はメディアを通して世界を理解し社会に参画している。近年、メディアを主体的に読み解き、積極的に活用するための実践的な学習プログラムのニーズが高まっている。各地でメディア教育の実践がはじまっているが、映像メディアへの取り組みは少ない。映像メディアの政策実践においては、指導者に撮影・編集機材や経験のハードルが高いからだ。

 このような背景のなか、開発者は、映像編集を手軽に体験できるツールとして、「Movie Cards」ワークショップと専用のシステムを開発した。「Movie Cards」ワークショップの特徴は、映像メディアの理解と、映像を通したコミュニケーションを創造できることにある。映像の各シーンを紙製のカードに出力し、カードを議論の道具や編集のインターフェイスとして利用する。参加者は自分が撮影した映像のシーンをカードとして手で触りながらその場で編集結果を確認できる。このワークショップ専用のシステムを開発した。ワークショップは2005年より実践し、すでに一定の成果を上げている。

 また、「Movie Cards」では、個人が表現する新しいメディアとしての映像が流通するメディア社会をつくりだすことを目指している。そこで今回の開発期間では、ワークショップを普及するためのシステム開発等を行った。具体的には、開発者以外の人でもワークショップを企画運営できることを目標に、システムの改良と、ファシリテーター用のガイドブック作成を行った。また、開発内容を検証するため、随時ワークショップを企画・開催した。


10.進捗概要


 本プロジェクトでは、「MovieCards」ワークショップ専用システムの開発・改良を行った。ワークショップの普及のため、開発者以外の者でもワークショップを円滑に実施できるように、システムを開発・改良することを目標とした。その結果、インターフェイスの統一化、新規機能の追加等を実現した。

 また、ファシリテーター(ワークショップの進行役)向けのガイドブックを企画し、サンプル版を作成した。

 なお、開発期間中は、随時ワークショップを実施し、システムのテスト・評価を行った。


11.成果


 開発内容は以下の通りである。

 

4.1 システムパッケージ化機能開発および委託

システム改良の開発委託を行った。開発および改良のポイントを以下に挙げる。

 

4.1.1 Mac OS X対応

 従来から要望が多かったMac OS Xで動作するように、動作OSを移行した。

 

4.1.2 インターフェイスの統合

 これまで機能ごとに別々のソフトウェア群となっていたところを、ひとつのインターフェイス上で操作可能とした。また一部のインターフェイスの日本語表示に対応した。なお、基本的な操作感は、従来のシステムの使い勝手を継承しているため、画面上に大きな変更はない。

図1:旧インターフェイス(Windows)

図2:新インターフェイス(Mac OS X

 

4.1.3 教材パッケージ専用バージョンの新設

 一部機能を省略した教材パッケージ専用バージョンを新設した。これにより、システムのインストール作業が容易になった。教材パッケージ専用バージョンで省略した機能を以下に挙げる。

 ・DVビデオ取り込み機能(既存カードのみを使用)

 ・カメラによるカード位置検出・カード順入力機能

 

4.1.5 カード位置検出機能

 カメラによるカード位置検出機能を向上した。カード認識のアルゴリズムを見直し、認識率を向上した。

 

4.1.6 ファイル入出力機能

 ファイル入出力機能については、従来よりできる限り自動化してユーザが意識しなくてもすむように設計していた。この自動化された入出力機能に加えて、ユーザが任意の場所に保存できる機能を追加した。これにより、ワークショップ毎の設定ファイル等を保存・読み出しするなどの利便性が向上した。ユーザが保存できるファイルは以下の3種類である。

 ・プロジェクト…カードのセットを保存・読込

 ・カード順………テーブルに配置したカードの座標位置データを保存・読込

 ・シーケンス……編集結果のシーケンスムービーを保存

 また、ワークショップ中のトラブル発生によるデータ損失を避けるために、変更があるたびに、各種設定ファイルを自動保存する機能を追加した。

 

4.1.7 タイトルカード機能

 映像の上に静止画を合成するタイトルカード機能を追加した。これにより、映像編集作業で、映像と同時にタイトルや字幕等を挿入できるようになった。

 

4.1.8 トランジション(切り替え効果)カード機能

 カットとカットの切り替え時に効果を追加するトランジションカード機能を追加した。これにより、映像編集作業で、クロスフェード・ワイプ・スライド等のカット切り替え時の映像効果を付加できるようになった。

図3:トランジションカードの例

 

4.1.9 印刷機能

 印刷機能を強化した。カード印刷において、これまではカード内容のシーンの冒頭単一フレーム画像のみ印刷されていたものを、複数フレーム画像をレイアウトする機能を追加した。また、カード内容のシーンの時間長を視覚的に理解できるグラフィックを追加した。

 ストリップ印刷において、ロール紙以外の用紙サイズへの印刷に対応した。また、印刷前にレイアウトを確認できる機能を追加した。ストリップ印刷機能は、従来シーン内の必要時間を切り取るトリミング作業を目的としていたが、さらにフリップブック制作にも使用できるように、バーコード印刷の有無を指定できるようにした。

 

4.2 ティーチングガイドブック企画、サンプル作成

 ワークショップファシリテーター用のガイドブックを企画し、ワークショップで使用できるサンプル映像を作成した。

 ガイドブックについては、構成を企画しサンプル版を作成した。今後、内容を精査して、出版を目指す。

 

 ガイドブックの概要

  タイトル:「Movie Cardsファシリテーターズガイドブック」

  サイズ:B5判変型

  ページ数:60ページ程度

 ガイドブックの内容(目次案より)

  はじめに

   本書の構成

  ムービーカードのコンセプト

ムービーカードとは/編集ツールとして/コミュニケーションツールとして/メディアリテラシー教材として/クリエイティブツールとして/ムービーカードの応用範囲/ムービーカードが描く社会像

  ワークショップをひらこう

ワークショップとは/ワークショップの進め方・手順/イメージゲーム/クリエイティブゲーム/映像を企画する/ビデオ撮影の基本/映像的な美を追求してみよう/編集でつくりだせる効果をためそう/音楽をつけよう/ナレーションをつけよう/タイトルをつけよう/発表・上映しよう/ケーススタディ・事例紹介/ワークショップの記録をとろう

  システム

システムの使い方/必要な機器/ソフトウェアのインストール/ソフトウェアの起動

  付録

 ムービーカードプロジェクトの活動

図4:ガイドブック

 

 また、ワークショップで使用するためのサンプル映像を作成した。これまでのワークショップでは、基本的に参加者自身が撮影した映像を素材として使用していたが、パッケージ化にあたり、既存のサンプル映像が必要となった。そこで、編集の効果をわかりやすく伝えるためのサンプル映像を数点撮影・作成した。映像素材については、今後も作成・収集を引き続き行う。

 なお、信州メディアリテラシーネット研究会との教材共同開発の際には、テレビ信州提供のニュース素材映像をサンプル映像として使用した。

 なお、音素材については、今後も協力者との連携を進める。

図5:サンプル映像のカード

 

4.3 ワークショップ企画、開催

 開発期間中は、随時「Movie Cards」ワークショップを企画、開催した。これらのワークショップは、前記2項目のテスト・評価を兼ねている。主なワークショップ開催実績を以下に挙げる。

 

「せんだいメディアテークこども映画教室:

 ムービーカードを使って映像編集をしてみよう」

開催日:2006219

会場:せんだいメディアテーク(宮城県仙台市)

対象:小中学生

 ワークショップ開催に先立って、28日同会場にて教育関係者と勉強会を行った。

写真1:ワークショップの模様(せんだいメディアテーク)

 

「ムービーカードを使ったワークショップ

〜映像を編集してストーリーをつくろう〜
〜映像にナレーションを入れよう〜」
開催日:2006615日、29

会場:須坂小学校 視聴覚教室・放送室(長野県須坂市)

対象:小学生(3〜6年生)23

 長野県の須坂小学校での学年縦割りの総合学習「ビデオで須坂を紹介しよう」第2回・第3回の授業でMovie Cardsワークショップを開催した。これは、信州メディアリテラシーネットと共同開発している教材開発のための研究授業の一環として実施した。

写真2:ワークショップの模様(須坂小学校)

 

「ワークショップ:ムービーカードで映像をつくろう」

開催日:2006715日、16

会場:メディアセブン(埼玉県川口市)

対象:小学生・一般

写真3:ワークショップの模様(メディアセブン)

 

Movie Cardsワークショップ」
開催日:200689

会場:千曲市総合教育センター(長野県千曲市)

対象:小学校教諭等

 ワークショップ開催と学校教育での活用可能性について議論した。

写真4:ワークショップの模様(千曲市総合教育センター)

 

 上記のほかにも、随時、調査・実験を実施した。


12.プロジェクト評価

 

Movie Cards」システムは以下の特徴を持っている。

・簡単な映像編集機能

 ワークショップ参加者は、パソコンを使用することなく映像編集ができる。

 こどもから高齢者まで、だれでも映像編集を簡単に体験することができる。

・紙製のカードによるインターフェイス

ワークショップ参加者は、実物のカードを操作することで、直感的に映像編集作業ができる。物理的実体を手触りしながら、企画を考えたり映像編集をするため、創造性を発揮しやすい。また、パソコン編集よりもより身体的な経験となる。

 実物のカードで映像編集できるツールは、他に例をみない。

・一般的な機材で構成

  システムは大規模な装置ではないため、高価な機材が不要である。ワークショップのハードウェアの大部分は、日常的な機材の組合せで実現できる。設置や調整が簡単に行え、運搬・移動も容易であり、機材・部品の入手も比較的安価で済む。

 ・ワークショップの企画支援

  これまで「Movie Cards」ワークショップを様々な対象に向けて多数開催してきており、ワークショップのノウハウが蓄積している。今回企画したガイドブックを活用することで、より多くの企画者の手によってワークショップを開催できるようになった。

 

さらに使い勝手を増したシステムを軽いフットワークでワークショップによる評価を行った点を高く評価したい。紙によるインタフェースは多人数で議論をしながら操作するシステムとして最適である、というコンピュータの新しい使い方を明らかにした点も興味深い。

 


13.今後の課題


システムについては、更なるインターフェイスの改善と機能強化を行う。使いやすいインターフェイスについては今後も研究を進める。システムの動作OSについては、WindowsMac OS 双方の要望が多いため、両OSへ対応するか検討する。またDV以外の映像フォーマットへも対応したい。

 カードの機能も、拡張を予定している。カット切替効果以外の演出効果をほどこすカードや、システムの動作を指示する動作カードなどを開発する。

 今回のシステム開発・改良の結果、ワークショップ普及への活動を一段と進めやすくなった。システム実用化に関しては、システムとサンプル映像をセットにしたメディア教育の教材としてのパッケージ化を進める。パッケージ化・実用化に向けて、研究機関、メディア教育施設、オルタナティブ・メディア組織、放送局、ハードウェア・メーカー、ソフトウェア・メーカー、出版社、販売代理店などとの連携を計画している。

 



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