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開発された機能は以下の7点である。
(1) ファイル分散保存及び復元
1つのファイルを暗号化後、複数の断片に冗長性を持たせて分割し、ネットワーク上の異なる端末へ分散保存する機能。また、その逆で、別々の場所に保存された断片を結合し1つのファイルへ復元する機能。断片単体からは全体の情報を復元できないので、一箇所が攻撃されても全ての情報が漏洩するわけではなく、情報の機密性を高めることが出来る。また、全ての断片を集めなくても全体を復元可能なため、障害などへの耐性もある。
(2) 管理者不在での安全な運用
有能な管理者を置くことなくシステムを安全に運用できる機能.本システムでは,ファイル保存において,ユ ーザが管理する公開鍵と秘密鍵を用いたファイルの暗号化・複合化を通じてアクセス管理を実現する。仮想ファイルサーバは暗号化されたデータを仲介するだけであり、管理者権限が奪取されても生の情報は一切漏洩しない。また、ファイルを公開鍵で暗号化することはそのファイルに指紋を残していることと同じであるため、不正利用の嫌疑で鍵が押収された場合、その鍵はすべての所有データに対して否認不可能な証拠となり、情報の管理責任の所在を明確にすることができる。
(3) 管理者不在での共有環境
有能な管理者無しでファイルを共有できる機能。本システムでは、共有用公開鍵暗号を所持するメンバーだけがファイルの暗号化及び複合化を行えるようにすることで、管理者無しのファイル共有を実現する。ユーザレベルによる公開鍵の作成と更新を可能にすることで、共有時における安全性の向上や、過去のファイルへのアクセス権管理といった新たな共有方法も実現可能となる。
(4) 複数組織間での実用性
複数組織間での運用時におけるファイルの復元確率やIO 速度の向上を意識した断片の分配及び再配置機能。保存先の空きディスク容量、マシンの利用状況、通信速度などを考慮した評価関数を設計し、どのネットワークにどれだけのファイル断片を保存(もしくは取得)すればよいかを決定する。これにより、保存先のPC が停止していて必要な断片数を取得できない、保存先との通信速度が遅く復元に時間がかかる、といった運用上の問題を解決することができる。
(5) プロセス毎のアクセス制御
本システムが提供するファイルシステムにアクセス可能なプロセスの種類を限定する機能。システム全体及び各ユーザが個人的に許可したプロセスのみが保存されたファイルにアクセスできるようにする。これにより近年その被害が著しい Antinny や山田オルタナティブといった暴露型プロセスからの情報流出を防ぐ。実施計画に存在しなかった新たな機能である。前述の特定の問題点の解決ではなく、昨今の事情全般を考慮して導入した。
(6) 障害発生時の容易な復旧
障害発生に備えた仮想ファイルサーバ情報のバックアップ、及び迅速かつ容易な復旧機能。仮想ファイルサーバには、各ファイル断片の保存場所といったメタ情報が記録されている。このメタ情報を、他のファイルと同じように、本システムが提供する分散ストレージ上に定期的にバックアップを行う。障害発生時には、仮想ファイルサーバの初回起動時に作成したいくつかの情報を入力するだけで、分散保存されたサーバのファイルを自動的に取得し直ちに元の状態に復旧可能である。
(7) ステガノグラフィ
システム上に保存されたファイルの情報から、元のファイルを推測されないようにする機能。断片のファイル名やサイズに一定の傾向があれば、その規則性を持つ断片のみを回収して攻撃を仕掛けることが可能である。そこでファイル名に関してはランダムに、サイズに関してはすべて共通にしてしまうことで、第三者にはこの断片がユーザファイルの一部なのか、仮想ファイルサーバのバックアップデータなのかという区別がつかないようにしている。
以上の機能を具体的には以下の形で実現した.
(1) FS ゲートウェイ
先述の(1)〜(4)
と(7),(8) の機能を提供する仮想ファイルサーバ。
Linux 上で稼動するサーバソフトウェアとして実装した。
(2) 分散保存デーモン
仮想ファイルサーバから送られてくるファイル断片を保存したり、逆に要求に従ってファイル断片を返す。Windows 及びLinux で動作するデーモンとして実装した。
(3) Windows クライアント
Windows からFS ゲートウェイの各種機能を使ってファイルの保存、取得が可能なクライアント。OS
の機 能とは分離され、エクスプローラに類似した独自のGUI ランチャーとして実装した。
(4) Linux クライアント
Linux からFS ゲートウェイの各種機能を使ってファイルの保存、取得が可能なクライアント。ファイルシス テムと透過的に実装されているため、Linux 上のシェルやエディタなど任意のプロセスからは通常のディレクトリツリーの一部として分散保存・復元の機能を利用可能である。また、先述の(5) のプロセス認証機能も利用可能である。
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