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2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   長尾 確 (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)


2.採択者氏名

開発代表者

 吉江 弘一  (NPO法人エフテキスト 理事長)

共同開発者

 なし


3.プロジェクト管理組織


  株式会社 リオ


4.委託金支払額


  3,926,315


5.テーマ名


  よせがき教科書出版のためのHowToコミュニティサイト「yosemite」の開発

 


6.関連Webサイト


  http://www.ftext.org/


7.テーマ概要


 私達は,オープンソースモデルの文章執筆システムを提案する.

 Linuxの開発の端を発したオープンソース運動は,いまやソフトウェアに限らず,文章・音楽・画像の共有化を図るオープンコンテント運動へと拡大しつつある.最近では,Wikipediaの活動が有名で,総合リファレンスサイトへと躍進している.しかし,私達はこのような現状に全く満足していない.Wikipediaは百科事典という18世紀の近代合理主義的なコンテンツを,ネット時代の方法で書いているに過ぎず,新しい知の文法を生み出しているわけではない.
 そこで,私達は「よせがき執筆」という文章作成作法を提案する.よせがき執筆は,1人あたりのテキスト生産コストを低く保ったまま,全体としての「物語性」を紡ぎだす仕組である.私達はこの方法を使い,HowToをたくさんの人が寄せて書くことによって,身体知を軸とした新しい学びの文法をつくってゆこうと考えた.しかも,このHowToは一意で体系的であるわけはなく,人やコンテクストによって異なってよいのである.


8.採択理由


 Wikipediaのように、オンラインで不特定多数の人間が協同執筆できる事典が現れたこともあり、コミュニティによる協同コンテンツ制作という考えは一般的なものになりつつある。ただし、事典のようなそれぞれの項目がある程度独立しているものならともかく、教科書のような比較的長い内容を一貫性を持って不特定多数の人間が執筆するのは困難である。それに対して、「○○をやるにはどうしたらいいか」というHowToの形式にして、学習者の疑問に答える形でコンテンツを充実させていく手法は有効だと思われる。また、複数のHowToが包含関係や依存関係を持って連結するというのも、オンラインならではの正しい構成であろう。ただし、ソフトウェア開発に関しては、特に大きな新規性はなく、既存の仕組みの組み合わせで、ある程度実現できると思われる。特に、コンテンツ制作を容易にする仕組みの構築に力点を置き、コンテンツ配信や紙媒体との連携に関しては、今回の提案からは除くことにする。それによって、リソースをコンテンツ制作に集約し、特に、オンライン教科書の新しい構成法の実証に集中することを条件に採択とする。「新しい歴史教科書」運動などの、いわゆる教科書認定問題に対して、「教科書は国が決めるものではなく、学習者が適切なものを選べるようにするべきだ」というスローガンを提示するきっかけになってくれるとよいと思う。





9.開発目標


開発者の予備校・塾・短大講師という経験から、学習上大切なこととして、概念レベルの話と身近な感覚をどこまで結び付けられるかという考えがあった。しかし、これを授業で教えることは簡単ではない。なぜなら、概念とリアルを結び付ける力は、その子が行動や観察によって培った総合的判断によって生まれるものだからである。

この問題に対して、コンピュータやインターネットができることを考えた結果の1つが「行動を通じて物事の意味を学べるような学習環境」を構築することである。具体的には、行動のHowToについて考え、まとめることができる事典のようなものを作っていく運動をするということである。

普通、事典というのは、「〜とは何か」に答える形に作られているが、私達の提唱するのは「〜はどのようにすればいいのか」に答える辞典である。この新しい辞典によれば、例えば「楽器」の意味は「音楽を演奏するために用いる器具。弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器などの総称」ではなく、"ギターで弾き語りする方法""ショパンをピアノで弾く方法"の中で解消されることになる。さらに、この事典は、ただ読まれるだけでなく、読者の体験を述べることも誘導するので、主体的な取り組みへのインセンティブを与える。つまり、読者が同時に執筆者となるという、なめらかな関係を構築する。

こうした人間の知的活動のコラボレーションを実現するため、本プロジェクトはよせがき執筆というテキスト作成作法を提唱している。今回はHowToを軸にした教科書"よせがき教科書"を作り、新しい知の文法作りの足がかりとすることを目標とする。


10.進捗概要


よせがき的な執筆をシステムとして実現していくため、yosemiteでは文章を"機能をもった枠組み(メタ情報)""具体的なコンテンツ"からなると考える。より具体的には、次の4つの要件を導入する。

@「〜する方法」でくくられる1つの塊をHowToとする

AHowToはいくつかの枠組み(Frameと呼ぶことにする)から作られる

BFrameには文章・画像・動画・音楽等のコンテンツが入る

CHowToは他のHowToFrameとなりうる(HowToの再利用)

 

以上の要件を満たしたソフトウェアを試作した。


11.成果


1 タグ付けされた文章のwysiwyg編集機能

 

 コンテンツ入力のためのエディタを開発した。入力された文章には、「MERIT」や「GOAL」などの属性がメタ情報として追加されて、保存管理される。

従来のwikiにあるような編集画面による編集ではなく、見たままの画面で編集(wysiwyg)を実装した。

図4−1 コンテンツ編集の場面

 

2 入れ子になった文章の編集機能

 

エディタでは、現在読んでいる画面と分断されることなく、階層化したHowToを自然な形で意識できるよう設計した。画面遷移をすることなく、ユーザの要求に応じてAjaxで動的に取り込み、拡大して覗いて見るような読書感を演出する。これにより、windowの開閉に邪魔されず、快適な読み書きを実行できる。

         図4−2 階層を開いた状態での編集の場面

 

 

3 見出しのツリー表示機能

 

HowToの入れ子構造を分かりやすくするためのもう1つの機能として、見出しのツリー表示機能を実装した。画面左にあるツリーには、現在開いているHowToの階層構造が、ツリー形式になって表示されている。

 

    →    

図4−3 ツリーを開いた場面

 

4 画像、音声、映像などメディアファイルの挿入機能

 

 エディタ部分に表示させるための画像ファイルなどをアップロードし、指定した部分に表示することができる。アップロードされた画像ファイルなどのデータは、写真共有サイト「フォト蔵」のAPIを利用して保存される。

 

          

図4−4 コンテンツに画像を挿入した場面

 

5 新規作成画面&ルートHowTo表示機能

 

 サイトにアクセスした際には、新規作成用のフィールドが表示される。また、他のいかなるHowToの子となっていないHowTo(ルートHowTo)を、新着順に表示することにより、読み応えのある記事を見せることができる。

図4−5 新規作成とルートHowToの表示場面

 

6 HowToの検索機能

 

 画面左上の検索窓に単語を入力し、検索ボタンを押すことによって、その単語を含むHowTo一覧が更新順に表示される。

   →   

図4−6 新規作成とルートHowToの表示場面

 


12.プロジェクト評価


Wikipedia
のように、オンラインで不特定多数の人間が協同執筆できる事典が現れたこともあり、コミュニティによる協同コンテンツ制作という考えは一般的なものになりつつある。ただし、事典のようなそれぞれの項目がある程度独立しているものならともかく、教科書のような比較的長い内容を一貫性を持って不特定多数の人間が執筆するのは困難である。本プロジェクトは、それに対して、「○○をやるにはどうしたらいいか」というHowToの形式にして、学習者の疑問に答える形で、複数人でコンテンツを充実させていく手法を提案し、そのためのシステムを開発した。ただし、ソフトウェア開発に関しては、特に大きな新規性はなく、既存の仕組みの組み合わせに留まっている。今後は、HowToコンテンツのポータルサイトなど運用面での成果を期待する。


13.今後の課題


HowTo
を引き出し集約するサイトを運用していくにあたり、現在実装されている機能に加え、以下のような機能が必要である。

これらの機能は徐々にユーザーを増やし,ユーザーの声を反映させながらチューニングを行っていくものである。

文章に並列した構造をもたせる

タグのカスタマイズ機能

逆リンクを知る機能

紙に出力する機能

履歴(差分)管理機能

ユーザー登録によるセキュリティ管理

趣味を登録してどこを書いて欲しいかをメールで配信するなどの機能

 

また、開発者が代表を務めているNPOFTEXThttp://www.ftext.org/)等を用いて、ユーザーに具体的にアピールしていくべきである。

 




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