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2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   千葉 滋 (東京工業大学大学院 情報理工学研究科 助教授)


2.採択者氏名

開発代表者

 岡嶋 大介 (フリーランス)

共同開発者

 平田 豊  (日本電気株式会社 コンピュータ事業部)


3.プロジェクト管理組織


  株式会社アイティーファーム


4.委託金支払額


  7,784,000


5.テーマ名


  ターミナルエミュレータを軸とした統合環境の開発

 


6.関連Webサイト


  http://ja.poderosa.org/


7.テーマ概要


 現在、申請者が中心となって開発・公開しているターミナルエミュレータ 「Poderosa」(ポデローザ)をベースに、リモートホストでの作業全般に適用可能な、プラグイン指向でオープンソースの統合環境を開発する。
 代表申請者である岡嶋は以前より上記のWindows用ターミナルエミュレータPoderosaを公開している。また、共同申請者である平田は、国内で最も有名なターミナルエミュレータTeraTermの開発を現在引き継いでおり、その開発経験を生かして当プロジェクトに参加する予定である。
 純粋なターミナルエミュレータとしてみれば、Poderosa,TeraTermともに完成度は既に高い水準に達しているが、今回の申請においては、Eclipseを参考にしたプラグイン指向の設計を導入して現在のPoderosaを改良し、次の目標を達成することを主目標としている。
*
複数のホストにまたがった作業の自動化、Webインタフェースとの連携など、従来のターミナルエミュレータの範囲を超えた機能を単一の環境で動作させることを可能にする
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ユーザが各自の目的に合った機能を選択的に搭載できるようにする
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新規の開発参加者に必要とされる知識量を減らし、オープンソースモデルの利点である「必要な人が必要な機能を作る」プロジェクトとして運営可能にする
 最終的に、Poderosaはターミナルエミュレータを中心としたリモートホスト操作の汎用プラットフォームであることを目指す。


8.採択理由


 提案者が開発し広く普及している Windows 用ターミナルエミュレータである Poderosa を拡張し、Eclipse で採用されているような plugin アーキテクチャを取り入れ、CUI 用の汎用的なプラットフォームにしようという計画である。開発するシステムの応用例や、plugin アーキテクチャの設計は、現段階ではまだまだ不十分であるが、Poderosa の開発基盤としての完成度や、計画の潜在的な可能性を評価して採択と判断する。

 





9.開発目標


Eclipse
などに採用されているものと類似のプラグイン指向の設計を従来のPoderosaに導入し、次のようなことを実現することを目標とする。

 

l        ユーザが各自の目的に合った機能を選択的に搭載できるようにする

l        ユーザ自身、あるいはユーザの所属する部署内専用の、特殊性の高い機能であっても単一の環境で動作することを可能にする

l        新規の開発参加者に必要とされる知識量を減らし、オープンソースモデルの利点である「必要な人が必要な機能を作る」プロジェクトとして運営可能にする

 

純粋なターミナルエミュレータとしては、採択以前でもPoderosaの完成度は既に比較的高い水準に達していたが、ユーザからのフィードバックを元に分析すると、将来の進化のためにはプラグイン指向の設計を導入することが必要である。その理由は、ユーザの新機能の要望の具体例として次のようなものが見られたからである。

 

l        複数のリモートホストが関係する作業を自動化する

l        Webベースの管理ツールを使用する場合など、シェルだけでは完結できない作業までを統合する

l        ユーザが、自社あるいは顧客の環境にあわせて独自に作成したGUIツールと連携する

 

これらは、必要性を感じているユーザは全体のうちのごく一部であるため、標準機能として搭載してしまうとその他の多数のユーザにとっては余計な機能がついたとしか感じられない上、開発側としても少数のユーザしか満足させられないので開発効率は悪くなってしまう。そこでプラグイン指向の設計の導入により、広範囲のユーザの要望を満たしつつ、単体アプリケーションとして機能過剰な重いものになってしまうことを避けることをねらう。

 


10.進捗概要


従来の Poderosa も十分に完成度の高いものであったが、プラグイン指向の設計を導入するにあたり、プログラムの大幅な書き直しをおこなった。しかしながら書き直し作業は順調に進み、4月には従来の Poderosa の大半の機能は新しいプラグイン指向の Poderosa に移植された。これはβ版としてユーザに一般公開され、その後、プラグイン機構の詳細を詰めるとともに、ドキュメントの整備などを進めた。開発作業は7 月には完成し、開発成果は正式版新 Poderosa として一般公開された。

 


11.成果


従来の Poderosa をプラグイン指向のアーキテクチャに進化させた新版の Poderosa を開発、公開した。開発成果は以下で公開されている。

 

http://www.poderosa.org/

 

 

 

開発により、ともすればレガシーなツールと見られていたターミナルエミュレータを、プラグインアーキテクチャによって「シェル操作の自動化のプラットフォーム」に進化させることができた。これにより、ごく一部のユーザ(あるいはユーザ自身のみ)しか使わないような機能であっても、開発者や他のユーザに一切の負担をかけることなく搭載する道を開くことができた。オープンソースならではの利点が存分に発揮できる形となった。

 

またこれまでより柔軟な画面分割など、ターミナルエミュレータ単体としての機能にも改良を加え、さらにプラグイン開発者向けに詳細なドキュメントの整備も日本語版・英語版の両方についておこなった。

 


12.プロジェクト評価


プラグインアーキテクチャによって Poderosa CUI 環境の標準プラットフォームにするというアイデアは注目に値し、また完成した新版の Poderosa もそのような標準プラットフォームとなりうる可能性を秘めた完成度の高い、高品質なソフトウェアである。ドキュメントも整備されており、7 月の公開後、1 月ほどで早くも外部のユーザによって開発されたプラグインが公開されている。

 

また開発代表者は、Poderosa のプラグイン開発など有償サポートのための企業を設立し、Poderosa を核にしたビジネスをおこそうとしている。同時に Poderosa の(無償ユーザの)ユーザコミュニティの育成にも注力しており、Poderosa を中心としたエコシステムを作り出そうとしている。そのような開発代表者の姿勢は、優れた基盤ソフトウェアを開発し普及させるためには必須のものであり、高く評価できる。

 


13.今後の課題


Eclipse
のようなプラグインアーキテクチャを採用して拡張可能なソフトウェアを作るというアイデアは最近よく目にする。Poderosa で採用しているアーキテクチャも細部は Eclipse と異なるものの、さほど目新しいものではない。当初、プラグインのアーキテクチャについても新しいアイデアを加えることを期待したが、残念ながらその点については大きな成果はなかった。Eclipse のようなプラグインアーキテクチャは、プラグインの開発を可能にするだけであり、それを導入しても開発がとくに容易になるわけではない。今後はプラグイン開発を容易にする技術についても是非検討していってほしい。

 




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