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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

   竹林 洋一 (静岡大学 情報学部 情報科学科 教授)



2.採択者氏名


開発代表者

水野 拓宏 (有限会社ユーアスク 取締役社長)

共同開発者

山田 暁通 (フリーランス)


3.プロジェクト管理組織


  有限会社日本ビジネスサポート協議会



4.委託金支払額


  8,880,300



5.テーマ名


  ネットワーク複製時代に適応した放送番組流通システム



6.関連Webサイト


  http://www.copyplease.com/



7.テーマ概要


 
従来型のコンテンツ流通では、製作者への利益還元として、コンテンツの直接の対価としての金銭しか想定されておらず、このままでは何時までたっても、自由なコンテンツ流通を阻害する方向にしか議論がすすまない。
  本プロジェクトは、近年問題になっているデジタルコンテンツの複製問題に対して、既存システムにあるような複製コントロール自体をドメインとするのではなく、現在及び未来のエンドユーザへのネットワークシステムの普及を踏まえて「利用者間の完全な複製を前提とした上で、コンテンツ提供者と利用者の双方にとってメリットを見出せるコンテンツ流通システム」の開発を行う。「コンテンツ流通によって製作者や利用者の得られる利益」とは何かを幅広く再考する事により、金銭やコンテンツそのものだけで無く、より幅広く多様な利益を得られる事が可能なシステムを開発した。
 なお本プロジェクトで開発したシステムは以下のURLでデモを行っており、引き続き意見を募集している。(http://www.copyplease.com/demo/



8.採択理由


 
ネット放送の課題である複製とビジネス開発に関する現実的で重要な提案であると評価した。
  番組提供者と視聴者中心のコピープリーズの概念は各種デジタルコンテンツに適応でき、新たなビジネスモデルは放送文化の発展につながる可能性がある。提案者のシステム開発能力と実用化への意気込みは優れているが、コンテンツ収集などの費用は過大であると考え開発費用の査定を厳しくした。 



9.開発目標


 番組流通の中で文化的洗練が行われるようにするには、複製権以外の権利によって、番組制作者の利益を確保する必要があり、番組の自由な流通が番組制作者への経済的誘因になり、また視聴者にとって不公平感が軽減されるような仕組みとして、図1に示す「コピープリーズ(Copy_Please)」という概念を提案し、番組の複製/流通を無制限にしておいた上で、より社会的影響度の大きい番組を提供した制作者により多くの経済的メリットを与えるという理念を実現する。既存のコンテンツ流通と、「コピープリーズ」によるコンテンツ流通の違いを図2に示す。既存のコンテンツ流通では、対価の対象がコンテンツそのものであったのに対し、「コピープリーズ」の世界では、コンテンツを中心とした経済活動が対価の対象となるため、コンテンツには完全に自由な2次流通が保障される。「コピープリーズ」の概念は、あらゆるデジタルコンテンツに適応できるものである。新たなビジネスモデルを創出し、放送文化全体の発展に大いに寄与する可能性を秘めている。

 

図1: Copy_pleaseの概念

 

 

 

図2: 既存のコンテンツ流通(上)と
Copy_pleaseを利用したコンテンツ流通(下)の違い



10.進捗概要


 「コピープリーズ」という斬新なコンテンツ流通モデルを提案し、番組の複製/流通を実現するためのコンテンツ登録・管理サーバソフトウェアを開発した。サービス利用ユーザ間でのコミュニティ形成のための、コンテンツ情報提供・コミュニティサーバソフトウェアを開発した。また、ユーザが利用する際に利用するコンテンツ情報検索クライアントとコンテンツ情報ページ取得クライアントソフトウェアをそれぞれ開発した。開発システムの完成度は極めて高く、早期の実運用が見込まれる。



11.成果


 現時点のコンテンツ流通において得られる対価とは、製作者にとっては金銭、利用者にとってはコンテンツそのものである。本プロジェクトではPCネットワークがもつ双方向性を考慮し、以下の新たな利益を双方が得る事ができるのではないかとの考えのもとに3つのソフトウェアモジュールを開発した。
  ・ コンテンツによって発生した経済活動に対する利益
  ・ コンテンツ間の関連性(縦の繋がり)による利益
  ・ コンテンツに対するレスポンスによる利益
  ・ コンテンツにより発生するコミュニティによる利益
  ・ コミュニティ間の相互参照による、横方向の繋がりによる利益
 図3に本プロジェクトで開発したCopy_pleaseを実現したシステム構成を示す。2点のサーバソフトウェアと1点のクライアントソフトウェアを開発した。

 

 

図3: Copy_pleaseの基本システム構成

 

 (1) コンテンツ登録・管理サーバソフトウェア
 コンテンツ提供者が使用し、配信するコンテンツの情報、実際に配信するファイルのキー情報、及びそれに対する関連アイテム(関連商品)情報の登録・管理を行うサーバソフトウェア。 コンテンツ提供者は、インターネットでのコンテンツ配信の前または後に、このソフトウェアを利用して、コンテンツ情報と、それに対する付加情報を登録や修正を行う。Web サーバ上のアプリケーションサーバとして実現し、図4に示すようにウェブブラウザを通して利用する。

 

図4: コンテンツ編集画面スクリーンショット

 

 (2) コンテンツ情報提供・コミュニティサーバソフトウェア
 主にコンテンツ利用者が使用し、知りたいコンテンツファイルに対しての登録情報検索を行うサーバソフトウェア。コンテンツそれぞれに対して、コミュニティ掲示板を用意し、情報の書き込みや、他人の書き込みの参照を行って、コンテンツに対する意見交換や知識の向上を行う事ができる。さらに、コンテンツに対して、利用者のblog からのトラックバックによる言及を受信する(トラックバックをする)事ができる。Web サーバ上のアプリケーションサーバとして実現した。

 (3) コンテンツ情報検索クライアントソフトウェア
 コンテンツ利用者が使用し、利用者のクライアントコンピュータ上において、情報を知りたいコンテンツファイルに対しての登録情報検索と、検索結果の保存を行うクライアントソフトウェア。検索結果はローカルファイルに保存されるので、気になるファイルは、改めて時間のある時にコンテンツ情報を閲覧する事を実現した。Windowsアプリケーションとして実現し、図5に示すようにウェブブラウザを通して利用する。



図5: コンテンツ閲覧画面スクリーンショット



12.プロジェクト評価


 コンテンツをあえて複製自由な形で流通させることと、コミュニティ形成を促進するシステムを並行して開発することによって複製権以外の権利によって番組制作者の利益を確保する枠組みを実現できたことの意義は極めて大きい。ネットワーク時代の新しいコンテンツ文化に寄与すると断言できる。
 番組制作者は多くの人に見てもらいつつ対価を得ることが可能となり、視聴者も他の視聴者とのやり取りを通して簡便な方法で自由にコンテンツを得ることが可能となるという両者にとってメリットのある放送の大きな枠組みを実現しており、今後の研究成果に大いに期待が持てる。



13.今後の課題


 本システムが実運用に入った場合に一番の問題となるのは、コンテンツそのものの収集であると考えている。せっかくのシステムも、その中心となるコンテンツ抜きでは意味が無い。コンテンツ制作を日常的に幅広く行っている機関などとの連携を視野に入れ、協力体制による公開テストなど、早期の実運用へ向けた具体的検討が期待される。


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