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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

   竹林 洋一 (静岡大学 情報学部 情報科学科 教授)



2.委託金支払額


開発代表者

西本 卓也 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 助手)

共同開発者

川崎 隆章 (株式会社NASA 第2放送制作部 部長)


3.プロジェクト管理組織


  有限会社日本ビジネスサポート協議会



4.採択金額


  6,580,309



5.テーマ名


  ソーシャル・ネットワーキング型ラジオ番組のシステム開発



6.関連Webサイト


  http://hil.t.u-tokyo.ac.jp/~nishi/index.php 、 http://www.ora-be.com/



7.テーマ概要


 取材または投稿音声を電話またはアップロード用のPC端末で電子化し、それをサーバで保持し、再生端末で編集・構成して送出する、という環境を実現するシステム“O’ra-be”を開発した(図1)。その環境を異なる場所の複数スタッフで共有し、ソーシャルネットワークシステム的手法で協同作業させ、アップロードの前段階で仮想ディレクターによるガイダンスを設けてコメント収録をスムーズにすることや、構成画面上に定番の番組構成をテンプレートとして用意し、素材を嵌め込むだけで一定以上の品質を持った番組が産まれるようサポートすること、自動的に検出可能な放送事故・放送不体裁要素を発見し、必要に応じて自動的に補修する機能などを用意する。

図1 O’ra-be システム概要



8.採択理由


 
本提案は、「双方向インターネットラジオ」という現場での経験を発展させたものである。
  音声は人間の根源的なコミュニケションメディアであり、演劇や落語、放送局やアナウンサーのノウハウを活用して、誰もが自分の考えを音声により「放送コンテンツ」として発信できるようなソフトウェアを開発し、地域や社会のコミュニティの活性化を狙うという試みは未踏性が高い。音声メディアの「通信」と「放送」の実践的な融合研究として採択した。



9.開発目標


 ラジオ番組の制作現場や放送の運行現場での取材をさらに細かく進め、その社会的構造を明らかにし、これを情報通信技術によって洗練化しようと考えた。また技術的には、そのネットワークを通じて音声素材と収録データをやりとりすることで、金銭的・時間的に大幅なコストダウンをはかり、ラジオ放送を「より開かれ」「より行動的に」「よりアトラクティブに」変革したいと考える事業者とスタッフを支援するものであるとともに、その普及と刺激によって、多くのラジオ局に自発的変革を促してゆくことが目標である。誰もが自分の考えを音声により「放送コンテンツ」として発信できるようなソフトウェアを開発し、地域や社会のコミュニティの活性化を狙っており、未踏性が高い課題である。



10.進捗概要


 2005年7月から11月にかけて、音声素材管理機能のテストおよび評価を行い、有効性の確認を行った。2005年11月よりFM Chappy(http://www.fmchappy.jp/)において、いくつかの番組の制作支援を行い、電話投稿受付機能、音声素材管理機能、素材送出機能のテストを行った。録音番組および生放送番組において1〜2本の素材を送出するような利用方法においては、本システムは十分な機能と性能を有することを確認した。
 2006年2月に4週間にわたってFM Chappyにおいて音声投稿を中心とした実験番組を制作し、電話投稿受付機能、音声素材管理機能、素材送出機能のテストを行い、ボイスレコーダで取材された4〜5本の高音質音声素材、電話によって投稿された10本前後の音声素材、あらかじめ用意されたステッカーや効果音などを組み合わせて、1時間の生放送番組での使用に耐える機能と性能を有するか確認した。放送前の準備および生放送中にディレクターに本システムを使用させ、不都合の報告や機能の要望などの意見を聞いた。
 しかしながら、検証した対象は比較的小規模な番組であり、番組の規模が大きくなり、投稿者数や使用する音声素材の種類などが増加した場合の適応可能性についての検証は十分ではない。試行実験で得られた知見をもとにシステムの改良を進めてきてはいるが、最終成果物としての完成には至っていない。




11.成果


 開発したO’ra-beシステムのシステム構成と特長を図2に示す。

 

図2 システム構成とO’ra-beシステムの特徴

 

 (1)電話投稿受付機能
 株式会社ボイスバンクが運用するVoiceXML処理系 Plum Voice Portalを使用し、PHP言語で実装したサーバサイドスクリプトで動的にVoiceXMLドキュメントを生成する。
 (2)音声素材管理機能(HoldStation)
 ユーザがウェブブラウザで投稿した音声素材の確認、メモ付与、分類、編集などができる環境を実現する。PHP言語で実装されたサーバサイドスクリプトが動的にHTMLドキュメントを生成する。
 (3)素材送出機能(CastStudio)
 ユーザはHoldStationのウェブ画面から、HoldStationで表示中の素材リストに対応した素材送出機能(CastStudio)を呼び出せる(図3)。CastStudioはJava 言語で開発されており、現時点では Windows XPに対応しているが、他のOS環境への対応も容易である。ウェブブラウザからのCastStudio起動にはJava Web Startの技術を用いたことにより、CastStudioのバージョンアップの際にも、自動的にアプリケーションの最新版をサーバからダウンロードして実行できる。
 CastStudioは起動時にHoldStationから素材ファイル一覧リストをRSS 2.0 (Really Simple Syndication) に準拠したXMLファイルとして受信し、素材ボックスをマウスでドラッグして配置し、キューシートなどの画面構成要素をクリックする、といった単純な操作のみで番組制作を実行できる。

 

図3 CastStudioの起動スクリーンショット



12.プロジェクト評価


 日本のラジオ放送が最も苦手とする「肉声による投稿参加型番組」が容易になり、ラジオを中心としたコミュニティの知財共有が大いにすすむことが見込まれ、大きな意義を持つ試みである。2段階の試験運用を経てシステムを構成する基本機能の評価を行って有効性を実証した点は、大いに評価できる。
 しかしながら、現在到達したモデルは、リスナー数の少ないコミュニティ局の番組規模での安全性は確認できたが、県域局や在京キー局、全国ネットワークのような莫大な数の投稿が一挙に投げかけられた場合の安全性は未確定であり、改良が必須である。規模の大きい番組における動作検証を始め、残された課題が少なくない。



13.今後の課題


 大規模番組における番組制作における安全性の確保や使い勝手の向上が今後の重要課題である。また、番組制作に要する作業コストを下げることだけでなく、番組自体の質の向上に関する検討も必須である。


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