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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 北野 宏明 (株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 取締役副所長)



1.プロジェクト全体の概要


 今回は、3件を、以下の公募要綱によって採択した。

 公募対象プロジェクト: 本公募では、その対象領域は設定せず、個別に判断したうえで、私が興味を持ちサポートでき、かつ大きなインパクトを与える可能性のある応募を採用する。便宜上、以下の三つのトラックを基本に公募を行うが、それ以外での応募も可能である。

 カテゴリーI:アントレプルナー
 このトラックは、本プログラムでの成果などをベースに起業することを目指す個人・グループを対象とする。対象範囲は、このプラグラムに関わると思われる範囲であれば限定しない。本カテゴリーでは、提案テーマの概要と共に、事業計画書の提出を求める。特定のビジネスパートナー・協力者が想定されている場合には、提案者本人との面接とともにビジネスパートナーとの面接を行う。

 カテゴリーII:オープン・イノベーション
 ひろくソフトウエアやインターネットなどを基盤として社会に大きなインパクトを与える技術の開発を目指す。オープンソースを念頭にしているが必須ではない。ネットワークを利用したコミュニティーでの質の高い知識集積やインターネットとそれ以外の社会システムとの融合などもテーマに含める。

 カテゴリーIII:アート&サイエンス
 上記以外のテーマで、アートやデザインに変革をもたらすもの、生命科学やロボティックスなどに関わるものなど。

 その結果、アート系2件、アントレプルナー系1件を採択した。
 個別の概要は、各採択者の報告書を参照されたい。3件のプロジェクトは別個のものであり、全体として評価するべきものではない。



2.プロジェクト採択時の評価(全体)


 各プロジェクトの採択時の評価は、以下のとおり。

 Phonethica (フォネティカ) - 異言語間の偶然的音声連鎖で世界を探索するシステム:
 極めて斬新な提案である。言葉の音韻情報をもとに、世界の言語的・音響的リンクをたどっていく新たな空間を構築しようとしている。デジタル・アートとしての新分野を築く可能性のある提案である。

 Monalisa-"音を見、画像を聞く"ソフトウェア:
 画像と音を相互変換するソフトウエアの開発である。現在の提案のままで、どれだけ一般的な普及になるかは不明であるが、その筋の人間にとっては、非常に面白いものになるであろう。今後の課題は、そのシステムが、どれだけ一般的ユーザやMIDIユーザなどの利用が可能な加工が可能になるかという点にある。この点は、PMとの議論で、十分修正可能であると考える。MIDIや音楽・音響分野での新たな方法論を開拓する可能性の大きい提案である。提案者もこの分野に知識・経験があり、その点での不安はない。

 コンテンツ検索エンジンZDEA(ゼディア)の開発:
 新たな画像を中心とした検索システムの提案であり、この技術を基盤に実用化・事業展開を提案している。特に、画像の検索など、文字情報以外の検索を目指しており、現在、テキスト入力が中心的な検索エンジンに対して、新たな方向性を示せる可能性がある。当然、画像の検索も多くの研究がなされているが、実用的かつ波及効果のある発想を有していると考えている。
 また、実用化、事業展開も、精力的に構築し、未熟な側面もあるが、投資家向けプレゼンテーションといえるものを用意するなど、非常に熱意が感じられると共に、この技術の実用化に正面から立ち向かっている。すでに、自己資金で、本事業のために有限会社を設立しており、その運営もコストを切りつめたものである。
 技術面と事業化の両面でバランスのとれた人材であり、トピックも将来性のあるテーマを選択しており、それを用意周到に進めている。これらの観点から、本提案が、トータルのパッケージとしては最も優れているとともに、技術と事業のバランスのとれた人材に成長する可能性があり、今回の提案を採択して、育成・支援を行うのが適切と判断した。



3.プロジェクト終了時の評価


 Phonethica (フォネティカ)プロジェクトの動機は、絶滅危惧言語の収集など文化的に深い洞察から始まり、それをメディア・アートの形態で再構成した非常にオリジナリティーの高いものである。いろいろな困難を伴った開発であるが、おおむね順調に推移し、今後の発展が期待できる段階に到達している。この意味で、今回のIPAでのプロジェクトは、成功裏に完了したと評価できる。 ただし、このプロジェクトは、今後も継続的な開発と支援が必要であり、それをどのようにアピールし確保するかが、重要な課題である。現段階では、広く一般にこのプロジェクトの面白さと重要性を認識させる段階の一歩手前の段階であり、次のステップを新たな切り口から構想し、大きなムーブメントへと展開する仕掛けが必要である。

Monalisaは音声と画像処理の融合に関するCreativeツールからのアプローチであり、非常に斬新な発想である。ターゲットが明確であり、おおむね順調に進展した。既に、このプロジェクトから生み出されたツールが評判となっているなど、実質的なインパクトも出ており、高く評価できる。 本プロジェクトは、IPAでのプロジェクトとしては一応の完結となるが、積み残しの開発項目などが完了すれば、これを基盤として新たな発想のプロジェクトも構想できるであろう。

ZDEA(ゼディア)プロジェクトの技術的な課題は、おおむね達成したが、事業としてのステップとなる、サイトへのアクセス数が期待を大幅に下回る結果となった。ただしこれは、IPAの期間内では開発に集中するという方針を立てたことの当然の帰結であり、これをもってして直ちにこのプロジェクトの商業的価値を問題とすることは適当でない。 ここで開発された技術をどのように展開するかが、今後の課題である。これに関し、最初のステップとしては、いくつかの明確な構想があるが、その次の展開への視点が明確になっていない面がある。自分の良く分かっている分野からのボトムアップな積み上げと同時に、俯瞰的な構想を構築することが必要となるであろう。


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