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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

   中島 秀之 (公立はこだて未来大学 学長)



2.採択者氏名


開発代表者

島 広樹 (大阪大学 フロンティア研究機構 特任助手)

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


  財団法人 統計研究会



4.委託金支払額


  19,536,875



5.テーマ名


  政策コミュニケーション・プラットフォーム(Ver.1.1)の構築と実装



6.関連Webサイト


  なし



7.テーマ概要


 
IT(情報技術)は従来ともすれば個人の利便性の向上にのみ集中して来たように思う。IT の社会応用は、その可能性に比べ、あまり試みられない分野であった。特に未踏のプロジェクトにその傾向が著しいように思う。


 政策コミュニケーション・プラットフォームはその意味で重要かつ画期的なテーマであると考えている。本ソフトウェアは、政策に関する多様なコミュニケーションを支援するIT を応用した包括的な社会基盤として構築された。本プラットフォーム上では、政策形成のために多くの人の知恵を引き出し、どのような政策を求めるかについて市民の一人ひとりが考えていくことを実現するための具体的なツールを提供している。


 政策論争にありがちな、複雑な議論構造の表示などが目玉である。



8.採択理由


 
政治家の政策論争をより透明かつ論理的にする仕組みの提案である.情報処理の社会応用という意味では大変有意義なプロジェクトだと考える.ソフトウェア開発よりも全体システムの開発とチューニングに比重があるため,ソフトウェアのプロジェクトという意味では若干中心からはずれるものであるが,全体プランの未踏性は十分以上にある.



9.開発目標


 政策議論に関する様々な要素を、システマティックに取り扱うことにより、政治システムや政策プロセスを再構築することである。本ソフトウェアが提供することのできる具体的な機能やサービスは多岐に渡る。例えば、市民に対しては、社会問題や政策について学びながら、自分が特に重視する問題を整理し、自分が支持する政策に基づいて、誰に投票することが合理的であるかを数値的に計算し、政治家選択の支援を受けるツールを提供する。このように、市民,政治家,専門家,NPO/NGO,企業等に対して、各アクターの役割,能力,インセンティブ等に適したツールを提供することにより、断片化された政策プロセスを統合し、包括的な政策コミュニケーションを可能とするプラットフォームを実現し、民主主義が健全に機能するしくみを創造する。
 また、開発された成果物を実際に運営することを通じて、社会に対し民主主義社会の新しいモデルやデザインを提示し、政治システムや政策プロセスにおけるイノベーションを世界中の国家,地域,コミュニティ等に普及させることを目指す。



10.進捗概要


 提案者は今回開発するシステムの前段階となる政策決定支援システムをすでに公開・試験運用している。プロジェクト開始直後に衆議院総選挙が行われ、それへの対応や、その成果を取り入れたプロジェクト内容の手直しなどからプロジェクトの進行が若干遅れた。


 なお、当初実装を予定していたサブシステムのうち、「政策関連情報のモジュール化システム:システム化されていない政策空間に電子的に存在する、様々な政策関連情報をモジュール化し、政策CP 上で取り扱うことを可能とするシステム」は実装されていない。開発費および工期の制約、並びに開発者と開発者の所属機関との間の契約に基づく制約上の問題により、実施計画が変更されたものである。



11.成果


 本ソフトウェアが目標とするのは、政策議論に関する様々な要素を、システマティックに取り扱うことにより、政治システムや政策プロセスを再構築することである。本ソフトウェアが提供することのできる具体的な機能やサービスは多岐に渡る。例えば、市民に対しては、社会問題や政策について学びながら、自分が特に重視する問題を整理し、自分が支持する政策に基づいて、誰に投票することが合理的であるかを数値的に計算し、政治家選択の支援を受けるツールを提供する。このように、市民,政治家,専門家,NPO/NGO,企業等に対して、各アクターの役割,能力,インセンティブ等に適したツールを提供することにより、断片化された政策プロセスを統合し、包括的な政策コミュニケーションを可能とするプラットフォームを実現し、民主主義が健全に機能するしくみを創造する。また、開発された成果物を実際に運営することを通じて、社会に対し民主主義社会の新しいモデルやデザインを提示し、政治システムや政策プロセスにおけるイノベーションを世界中の国家,地域,コミュニティ等に普及させることを目指す。


図1 政策コミュニケーション・プラットフォーム(Ver.1.1)の基礎モデルの概念図

 

 「政策コミュニケーション・プラットフォーム」は、政策プロセスに最新の情報技術を持ち込むことにより、これまで不可能だった高度な機能(政策的立場のポジショニング,政策マッチング,政策パッケージの構成等)を可能とする、包括的な政策コミュニケーションのための社会基盤である。本ソフトウェアは、政策CP(Ver.1.1)を実装したものであり、 <図1> に示すサブシステムと、図中に示されていない管理システムによって構成される。具体的には、以下に示す2つのサブシステムとして実装されている。


 A.政策CP 基本システム:


 政策議論終了後のプロセスを機能させるためのシステム構成要素で、以下の機能を提供する。


 ・モデル化された政策空間
  複雑に絡み合う多種多様な政策要素を整理し、検索,加工,マッチング等の処理を可能とするためのフレームワークと、それを適用したデータベース。


 ・政治家の政策ポジショニング・システム
  プラットフォーム上で議論された各政策議題に対して政治家が自らの政策的立場を明確にするためのシステム。

 

 ・政策マッチング・システム
  市民が求める政策と政治家が掲げる政策をマッチングして、市民がどの政治家や政党を支持するのが合理的であるかを計算することができるシステム。


 ・政策パッケージの構成システム
  断片化された現在の政策議論に総合的な視点を取り入れるために、市民,NPO/NGO,専門家が複数の政策要素を組み合わせて評価、検討するシステム。

 

 B.複数利用者によるコラボレーション・システム:


 政策議論進行中のプロセスを機能させるためのシステム構成要素であり、以下の機能を提供する.


 ・政策形成のためのネットワーク・システム
  社会問題への認識を共有し、利害を異にする人が意見を出し合い、基本政策の選択肢とそれに付随する利点、欠点を整理するためのシステム。


 ・市民の政策ポジショニング・システム
  市民が社会問題や政策について学び、自らの価値観や問題意識に基づいて、自分がどんな政策を支持するかについて考え、整理するシステム.




12.プロジェクト評価


 インターネットやその上での情報処理・提示技術が発達しているにもかかわらず政治システム、旧態依然としている。特に 鳩山由紀夫「日本のIT 事情:IT と選挙」情報処理学会誌 Vol.47 No.1(2006 年1 月)にあるように、選挙において候補者がインターネットを活用することは禁じられてさえいるのが現状である。その意味で本プロジェクトのインパクトは大きいと考えている。


 一方でこのような政治システムは運用や評価が困難である。今回採用したもう一方のプロジェクトのようなアニメーションツールはPMが実際に使いその感触を得ることができるが、こちらの政治討論システムについては残念ながら概念による判断の域を出ることができない。


 PMとしては第一にこのようなシステムが実装されたことを評価したいし、近いうちに実用に供されることにも疑いを抱いていない。実装された個々のモジュールは情報処理システムを知るものにとっては、容易に想定しうるレベルに留まっているが、実際の評価の対象とすべきはそれらの統合の仕方であろう。全体システムに関してはユーザビリティの評価実験が行われ、ユーザからは画面の移動が少ないなどの良いコメントはもらえているものの、肝心の政策評価という観点の評価は得られていない。

 これに関しては大規模な実証実験を待つしかなく、その意味で本システムの評価は今後の長い運用においてしか得られないのかもしれない。




13.今後の課題


 今回は、システムの稼動が完成期限間際までずれ込み、時間的制約から実証実験が行われていない。その意味でプロジェクトは未完成である。
 この点はここで改めて指摘するまでもなく、開発者たちはいずれにしても実用化を目指しているので、この評価が近いうちに行われることは間違いない。


 また、開発者たちは新たな研究領域として以下を提案している。


 政策コミュニケーションの確度を高め,比較,参加,評価などを容易にするためには、政策議論を要素分解し、論理的・システマティックに処理する手法のさらなる追求が求められる。政策プロセスに関する研究は古くから行われ、様々な貢献がなされてきたが、複雑多様な政策議論を整理するためのシステマティックな方法論はいまだ確立されていない。「政策工学(Policy Engineering)」というべき新たな研究領域において、政策プロセスをイノベートするための研究が推進されるべきと考えている。
 これには、情報技術や政策科学だけでなく、コミュニティ理論,政治制度,実際の政策論議なども視野に入れた、従来の枠にとらわれない新たなパラダイムが必要であると考えられる。開発者及び開発チームは、政策CP プロジェクトを通じて新しいモデルを提示することにより、政策コミュニケーションに関与する様々なシステムの構築に携わる人材を増やしていきたいと考えているようである。



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