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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

   長尾 確 (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)



2.採択者氏名


開発代表者

伊藤 冬子  (同志社大学大学院 工学研究科 知識工学専攻 博士前期課程)

共同開発者

荒久田 博士 (同志社大学大学院 工学研究科 知識工学専攻 博士前期課程)



3.プロジェクト管理組織


  株式会社 リオ



4.委託金支払額


  6,863,964



5.テーマ名


  「主張」と「協調」により参加者の「波長」を合わせるビデオ会議システム



6.関連Webサイト


  なし



7.テーマ概要


 
コンピュータの普及とネットワークの高性能化といった背景から、遠隔地とのコミュニケーションを実現するシステムやアプリケーションが開発され、オンライン会議システムなどとして広く利用されている。それらの中には、音声を利用した音声会議システムや実映像を用いたビデオ会議システムなど、リアルタイムにコミュニケーションを実現するためのシステムが数多く存在する。これらは遠隔地とのリアルタイムコミュニケーションを可能にするという大きなメリットを有する一方、デメリットも持ち合わせている。
  例えばビデオ会議システムの場合、実際に相手の顔を見ながら会議を進行できるというメリットを有するが、実映像の質がネットワーク性能に依存して劣化してしまう場合がある。また、画面を介した間接的な顔合わせでは相手の表情から感情を正確に判断することができないというデメリットも併せ持つ。実映像の質を向上させるためには、特別なハードウェアが必要であったり、参加者同士が高速なネットワークで接続されている必要があるなど、様々な制約が生じる。また一般的に、会議室などで全員が顔を合わせて行うFace-to-Faceの会議では、参加者全員が同一空間に存在することで意識することなく会議の雰囲気を汲み取ることが可能である。しかし、画面を隔てたビデオ会議システムの場合、個々の画面上の各参加者の表情を統合して、会議全体の雰囲気を把握することは非常に困難である。これらは、会議の収束に要する時間に大きな影響を及ぼす。会議に要する時間の延長は、多くの参加者にとって回避したい事態の一つである。
 特別な場合を除けば、会議参加者は終始会議の場にいなければならないことが一般的である。しかし会議の場における議論内容が複数存在し、ある参加者はある議題にのみ関与しており、また別の参加者は異なる議題にのみ関与しているといった場合、参加者は会議の場に長時間束縛されるにも関わらず、自身が貢献できるのは会議の一部であるといったことが生じる。このような場合に参加者は終始会議に拘束されることへのストレスを感じる。コンピュータを介したオンライン会議の場合であれば、ブラウジングや資料の閲覧などを並行することができるため、その会議自体とは関係がない作業を行うことが可能である。しかしビデオ会議システムの場合、他の作業を行っているさいには視線はカメラに向けられず、会議への参加姿勢が低く見える場合がある。また作業に集中してしまうと、会議へのリアクションも少なくなる。一人の参加者の参加姿勢が消極的に見えると、会議全体へその影響が波紋のように伝搬していく場合がある。その結果として、前述したように会議時間の延長につながってしまう。つまり、会議とは関係のない作業を行うことで参加姿勢が低くみられてしまうという個人の問題だけでなく、会議参加者のモチベーション低下、またそれにより生じる会議時間延長という問題があるため、現実的には会議とは関係のない作業を行うことは困難である。会議への途中参加・途中退席の場合も、同様に発言者や会議全体のモチベーションに影響が与えられることが考えられる。
 これらオンライン会議の抱える問題は図1に示した概念図のように整理することができる。まず、前述したように複数人数の参加と了承によって合意形成を行うような会議における目的は、参加者の発言によっていくつかの意見を提示し、そこから1つの結論に意見を集約することにある。つまり対象としている会議では、常に参加者全員が個別に意見を持つ必要はなく、いくつかの結論の候補が提案されればよい、というスタンスになる。 そのためには、発言しやすい場の演出や、結論の候補から意見をまとめやすくするような仕組みが必要になる。一方、参加者は意見を提案することよりも、会議に参加し、最終的な結論に対して承認を与えることが必要とされるような会議による長時間の拘束を嫌う。また、実際のFace-to-Faceの会議よりもPCで行うオンライン会議では参加者自身の「会議に参加している」という認識が弱かったり、周囲の人の認識の低さから電話などの急な割り込みのタスクが発生する場合がある。このような形の途中退席や途中参加があるが、これらの行為は発言者への遠慮を伴うと共に、会議の進行状況の把握が遅れるという欠点を持つ。これは、他のタスクを会議と並行して行う場合も同様である。しかし、これらの参加者の要望を実現してしまうと、会議全体のモチベーション低下につながり、前述したような会議の目的を達成することができない。つまり、会議の目的と参加者の要望を同時に実現することができない。本プロジェクトでは、この両者をバランスよく実現することを目的とし、これまでになかったオンライン会議システムの構築を目的とする。

図1 オンライン会議システムの問題点



8.採択理由

  対面式の会議では会議中に他の会議に参加するのは困難であるが、オンライン会議の場合は、ソフトウェアエージェントの仕組みなどを用いて、複数会議に同時に参加することも不可能ではなくなると思われる。一つの会議に初めから終わりまで参加しなくても、要所要所で適切な発言なり質問なりができれば、その人は十分に会議に貢献したとみなされ、会議のパフォーマンスを落とさずに、各個人も適切な時間管理ができるだろう。そのようなシステムの実現を目指している本提案は、きわめて将来性が高いと思う。ただし、開発者の経験を考えると、期間内にプロトタイプの実装と小規模な実証実験を行うのが精一杯であると考えられる。開発者の成長も期待される。



9.開発目標


 本プロジェクトでは、会議の目的と参加者の要望を融合させることを目的とし、新しいタイプのオンライン会議システム構築を行うことを目指す。提案システムでは会議において「率直」になることで会議全体や参加者一人一人の雰囲気の把握を容易にし、会議のスムーズな進行を助けることで、時間を有効活用できるようなオンライン会議を実現する。そのためのツールとして「アバター」を利用する。参加者はシステム上ではアバターとして表示される。提案システムでは、参加者には自己の感情をアバターの表情や動作を操作することで率直に表すことを義務づける。カメラを通した実際の人間の表情よりも大袈裟なアバターの表情や動作によって、各参加者の雰囲気の把握が容易になる。また選択した表情や動作により、参加者の感情や状態を色で表現する。その情報を集計し、会議全体として全参加者に占める各種感情の色の割合をグラフで表現し、視覚的に全体の雰囲気を読み取ることを可能とする。更にアバターの位置は固定ではなく、ドラッグ&ドロップによって操作することを可能とする。アバターはステージ中央に近づくほど拡大表示され、遠ざかるほど縮小表示される。参加者はアバターの位置を自身の会議への積極性に応じてアバターの位置を適宜変えることで、自身の立場を明確に表現する。また議論が発生したさいには、意見を提案した参加者は意見をテキストで提案し、アバターと同様にステージ上に登場させる。参加者がステージ上の意見に対して支持をする場合は自身のアバターを近づける。近づけると、大きく表示され、まだどの意見も支持していない参加者のアバターは小さく表示される。これによってまだどの意見を支持するかを表明していない参加者が明確になり、その参加者自身にとっても早く意見を決めなくてはならないというプレッシャーにつながる。
 さらに同じ時間帯に行われている複数の会議に参加可能にすることで、仕事効率向上を図る。また、途中参加しても内容を把握できるよう、共有議事録を参加者全員で記録することが必要である。
  提案システムはWebブラウザとヘッドセットで簡単に利用できるオンライン会議システムとして構築する。そのため、Webブラウザでリッチメディアを容易に取り扱うことができるプラットフォームであるFlashでシステムを構築する。また、Flashにおいて音声の送受信などを行うために、Flash Communication Server MXを、音声に反応し動作するアバターのメカニズムとして、岡山県立大学で渡辺富夫教授が開発されたiRTのメカニズムを利用する。



10.進捗概要


 アバターによるオンライン会議システムの基礎機能、立場表明のためのアバターリサイズ機能、意見集約のためのステージ上に意見を登場させる機能を実装した。雰囲気把握のための全体の感情色グラフ機能は現在、実装中である。本プロジェクト終了後も開発を継続し、複数会議参加機能の実装、実用化を目指す。



11.成果


 提案システムは参加者をアバターで表示する機能や議長機能、議事録機能など基盤となる機能に加え、「アバターの操作による『主張』機能」「意見への同調による『協調』機能」「色による雰囲気表示による『波長』機能」の3つの特徴的な機能によって構成される。

 

 

図2 システム構成図

 

 ■基盤機能
 (a) アバター
 アバターとは、インターネット上のコミュニケーションツールやコミュニティにおいて、ユーザ個人を表現するキャラクターのことを指す。現在、Yahoo!Japan や Livedoor、Cafesta など様々なポータルサイトでアバターを利用したサービスが展開されており、アバターの存在は一般に知られるようになってきている。
 提案システムでは、参加者をアバターで表示することで、これまでのオンライン会議システムでは有していなかった機能を実現する。アバターは一般的な静的なものではなく、音声に反応して発話やうなずきなどの動作を行う。音声に反応するメカニズムとしては岡山県立大学の渡辺富夫教授により開発された身体コミュニケーション技術であるiRTを使用している。提案システムに必要となるアバターの要件を検討・設計し、インタロボット株式会社に実装を再委託した。アバターは、以下の要件を満たす仕様となっている。


 アバターの設計
 アバターのキャラクターを構成する要素をレイヤとして分離することで、本システムにおいて柔軟にアバターを利用することを可能としている。アバターは、以下に示すレイヤーから構成される。

  - オプションレイヤー
    キャラクターの過剰効果を表現するためのレイヤー
  - キャラクターレイヤー
   アバターのキャラクターを表示するためのレイヤー
  - 効果レイヤー
   ”閃き”や”驚き”、”関心”などのアクションを表現させるためのレイヤー
  - 背景レイヤー
   キャラクターの背景色を表現させるためのレイヤー

 上述した各レイヤーには、それぞれのレイヤーに応じたパーツが存在する。アバターのキャラクターは、パーツが配置された各レイヤーを図3のように組み合わせることで構成される。

 

図3 アバターの設計

 

 各レイヤーにはアバターのキャラクターを構成するためのパーツが存在する。パーツの一部にはパラメータを設定することが可能である。キャラクターを構成するパーツの分離とパラメータを設定することができなければ、アバターのアクションはパラパラマンガのようにキャラクターの画像を連続的に描画して表現しなければならない。つまり全てのアクションに応じた各キャラクター毎の画像ファイルを用意する必要がある。
 このようにキャラクター毎に全てのアクションを用意する場合、必要となる最低限のイメージ画像数は「(キャラクター数)×(アクション数)」となる。本システムでは、アバターによる多様なアクションを想定しており、それら全てを用意することは非常に困難であり、高いコストを伴う。そこで、本システムで利用するアバターのキャラクター設計において、各レイヤーの有するパーツにパラメータを設定することを考えた。パーツに対してパラメータを設定することを可能であれば、パラメータの変更によるアクションの実現が可能となる。
 これによりアバターのアクションは各レイヤーに配置されるパーツ毎のパラメータで表現が可能となる。またキャラクターを構成するパーツが分離されているため、パーツの共有・再利用が可能となる。そのため、 全てのアクションに応じた各キャラクター毎の画像ファイルを用意する必要がなくなる。これにより、アバターのキャラクターやアクションに要する開発コストや、システムのファイル容量が低減される。
 なお、キャラクターを構成するパーツやアクションに必要となる画像ファイルは、本システム開発者が作成したものを使用している。

 (b) 議長機能
 提案システムでは、対象とする全員の了承によって結論を導く合意形成型の会議において、議長がいる方が効率的に会議を進めることが可能であると考える。しかし、あまりに議長の義務が増えると、議長に負担が増えてしまうため、提案システムでは議長権限で行える操作を少なくしている。手順としては、ログイン時に議長であるかどうかを問い、議長であれば議長権限を与え、議長であるユーザに対して以下のような会議を円滑に進めるための操作を委任する。

  - テーマ(議題)提示
    会議進行中に新しいテーマで議論をした方がよいと判断される場合は、新しいテーマを全員に提示する。

    新しいテーマを提示すると、討議時間がカウントされはじめる。
  - 結論決定
    新しいテーマにうつる前に、現在のテーマで提案された意見の中から結論が出ている場合は、その意見を

    結論として設定し、議事録に反映させる。

 (c) 議事録機能
 提案システムは、議事録を共有できる機能を有している。これによって、途中から参加してきたユーザでも、会議の進行および話し合われた議題やそれに対して提案された意見などの情報を把握することが可能になり、会議の途中参加を支援できると考えられる。また、議事録の内容は次の2種類に限られる。

  - テーマ(議題)
    議長によって新しいテーマが設定されると、自動的に議事録に新しいテーマが記録される。
  - 意見
    その時点で提示されているテーマに対して議事録パネルの入力エリアから意見を入力する。

    入力された意見はテーマごとにIDと発言者の名前が付加される。

    また、現在のテーマに対する意見はステージ上に登場する。
  - 結論
    新しいテーマにうつるまえに、それまで提案された意見の中から、議長が選択し、議事録上に提示される。

    これによって、結論を再確認可能になる。

 (d) その他
 システム画面左側の操作パネルの中に、チャット操作パネルがある。これによって、チャットをすることが可能である。ただし、会議においてチャットをする場合、議論とは別にコミュニケーションを図ることになるため、あまり推奨はされない。そのため、チャットの総発言数と、それに対する自身のチャットにおける発言数を示し、自身のチャットでの発言頻度を自覚させることで、抑制を促す。また、チャットを併設することによって、ハンドセットを保持していない場合や音声の送受信が何らかの障害で不可能な場合、チャットによって通信を行うことが可能である。

 ■特徴的な機能
 (a) アバターの操作による「主張」機能
 前述したように、提案システムでは参加者をアバターとして表示する。このとき、参加者の表情や動作などはビデオ会議システムのように参加者が無意識では周知できない。そのため、提案システムにおいては、参加者は自ら自身の感情や動作を意識的にアバターに反映させなくてはならない。
 ユーザには用意されているアバターの表情・動作から、その時点での自身の状態を最もよく表すものを選択することを義務づける。 表情を選択するアバター操作パネルは図4に示すようなものである。このように、ゲーム感覚で表情や動作を表出させることで、カメラに向かう参加者自身の表情よりも、より率直になることが可能である。

 

図4 アバター操作パネル

 

 参加者の感情や動作を過不足なく表現するため、アバターの表情、動作は図5に示すように15種類となっている。これらの表情、動作はすべてswfファイルであり、アニメーションを含むものもある。各表情、動作はFace、 Body、 FrontLayer、BackLayerから成っている。ただし図5のうち音声に反応できるのは、Faceレイヤーがデフォルトになっているもののみである。なお、Tはその表情・動作を1度のみ再生することを、Fは繰り返し再生することを意味する。

 

 

図5 アバターの表情・動作一覧

 

 アバターが表示される手順としては、ユーザがシステムにログインした際に、ステージ上の出現位置に表示される。このとき、すでに入室している他のユーザのアバターも表示される。
 ユーザは表示されているアバターをドラッグ&ドロップで自由に移動させることが出来る。これは、自身のアバターに限られたことではなく、他ユーザのアバターも移動可能である。また、アバターはステージ上のその位置によって、大きさが変わる。ステージ中央に近づくと拡大し、遠ざかると縮小する。一般的に、Face-to-Faceの実際の会議においては、意見を述べたい参加者、積極的な参加者は前方の席へ、あまり興味がなかったり、別の仕事を並行したりしている参加者は後方の席へ着席する傾向が強い。このことから、提案システム上では、積極的な参加者ほどアバターを中央に近づけて発言することが期待され、主張したい、という気持ちを支援することができる。

 

図6 中央に近づくほど拡大する


 (b) 意見への同調による「協調」機能
 さらに、前述したように、提案システムではテーマおよび、議事録を共有できる。新しいテーマが提示され、議事録パネルで、意見を入力するとアバターと同様にステージ上に意見がふせんのように表示される。この意見もアバターと同様に中央に近づくほど拡大する。一方、意見がステージ上に表示されると、アバターの拡大縮小の基準点はステージ中央から意見にかわる。いくつか意見が表示されると、そのアバターにとって最も近い位置にある意見が基準点となる。つまり、意見との距離が短いほど、アバターは大きく表示される。また、離れていると極端に小さく表示される。

 

図7 意見に近づくほど拡大する

 

 最終的に会議では、1つの議題に対し、参加者に意見をいくつか提示させ、その中から最も全員が納得できる意見を結論とする。しかし、なかなか各参加者がどの意見を支持するかを表明しないために結論を導くのに時間がかかりがちである。提案システムでは、支持する意見に近づいてアバターが大きくなると、他ユーザに対してすでに意見支持をしていることを周知できる。逆に、まだ意見支持をしていないユーザは極端に小さく表示される。これによって、まだ意見支持をしていないユーザに対し、意見を支持することへのプレッシャーを与えることが可能である。

 (c) 色による雰囲気表示による「波長」機能
 会議において重要となる要素の一つとして”場の空気”があげられる。何らかの議題に基づき合意形成を目的とするような会議では特に、”場の空気”が重要となる。しかしシステムを利用した”仮想的な会議室”で行われる会議では、会議参加者が現実世界における同一空間に存在しない。仮想世界における同一空間に参加者は存在するため会議の現実味に欠け、全参加者で1つの”場の空気”を共有し知覚することが非常に困難である。そこで、色により会議の雰囲気を表現し、”場の空気”を会議参加者に提示することを考える。本会議システムではこれを「波長機能」と呼ぶ。
 波長機能により、会議参加者各々の状態から会議全体の雰囲気が色で提示される。これにより会議参加者は、会議全体の雰囲気を知覚することが可能となる。また、視覚的に会議全体の雰囲気を提示することで多数派と少数派が明確になる。なお、人間関係や上下関係にといったしがらみに参加者の状態が左右されないよう、誰がどのような状態であるかという情報は提示しない。今回は、実装途中にあり、今後、色と状態の対応の検討も含め、継続して開発を行う。



12.プロジェクト評価


 当初の計画内容をすべて達成したとは言えないが、基盤となる仕組みの開発は終了している。プロジェクトの遂行は試行錯誤の繰り返しではあったが、本質的な機能を見極めた上で、ビデオ映像配信・表示機能などの本プロジェクトにおいて重要度が低いと判断された部分を省略して開発を進めた点も評価できる。個々モジュールの機能も妥当なもので、広範囲の有用性のあるものと判断できる。また、開発代表者のプレゼンテーションスキルがプロジェクト開始時点に比べて格段に向上した点も大いに評価できる。



13.今後の課題


 (1)実証実験
 今回の開発期間においては、動作確認のための実験以外に、提案システムを用いて合意形成を行う実証実験を実施していない。開発期間終了後も継続して開発を続け、実証実験を行い、合意形成型の会議の支援システムとして有効であるかどうかを検証する必要がある。

 (2)アバターの表情・動作の検討・改良
 現在、アバターの表情・動作のパターン数はデフォルトのパターンを含めて15パターンであり、システムのアバター操作パネルにおいても、各表情や動作に対応したボタンが15個存在する。実際に会議を行っている際に、15種類の中から1つを選択し、ボタンを押すという作業はユーザにとって負担となる可能性が大いにある。ただし、あまりにもパターンが少ない場合でもユーザの率直な意見を反映することができない。よって、適切な表情・動作パターンの数を検討する必要があるといえる。また、インタフェースの面では、前述したように提案システムではアバターの表情・動作の操作をそれぞれ個々に対応しているボタンで行っている。そこで、よりユーザの負担を軽減できるような、表情・動作パターンの提示、操作のインタフェースを考案する必要がある。現在、1つのテーマに対して、テキストで意見を追加しているが、同様にテキストパターンでアバターの行動を操作できるようにすれば、アバター操作パネルおよび議事録パネル間の遷移を必要としなくなるため、ユーザビリティの向上につながると考えられる。

 (3)行動・感情と色の対応の検討
 今回開発したシステムでは、アバターの表情・動作の15種類それぞれに色を対応づけている。そのいずれかを選択すると、そのユーザの色を決定し、会議全体において、各色の占める割合をグラフとして表示する機能を実装中である。これによって、各個人の雰囲気を個々のアバターの表情だけでなく、グラフという会議全体で共有するものに反映し統合して可視化することで、全体の雰囲気の把握を容易にすることを目指している。ただし、色とアバターの表情・動作の対応は色相の範囲と表情・動作の大きな分類との対応で開発者が独断で決定したものであり、感情と色に関して調査を十分に行っていないため、今後は色と表情・動作を何らかの根拠に基づいて対応付ける必要がある。

 (4)スケーラビリティの調査
 今回の開発期間中は、複数クライアントでの動作確認は行ったが、多数のユーザが参加した場合のスケーラビリティに関しては調査していない。しかし、合意形成に利用するという目的からも、最低でも10人以上の規模で安定して動作するシステムが望ましい。よって、スケーラビリティの調査は必要と考えられる。

 (5)複数会議への同時参加
 今回開発したシステムでは、相手の発話する音声に反応するアバターを利用することで、リアクションの低減による発言へのモチベーションの低下を防ぐ効果を見込んでいる。これを利用し、オンラインならではの会議システムの機能として、複数会議への同時参加機能を実装する必要があるだろう。


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