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2005年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

   並木 美太郎 (東京農工大学 大学院共生科学技術研究部 助教授)



2.採択者氏名


開発代表者

松原 豊 (名古屋大学大学院 情報科学研究科 情報システム学専攻 博士前期課程)

共同開発者

なし


3.プロジェクト管理組織


  NPO法人 TOPPERSプロジェクト



4.委託金支払額


  6,200,000



5.テーマ名


  時間保護機能をもつ組込みシステム向けRTOSの開発



6.関連Webサイト


  http://www.ertl.jp/~yutaka/tp-rtos/



7.テーマ概要


 本プロジェクトでは、ハードリアルタイム性が要求される組込みシステム向けアプリケーションを対象に、プロセッサ時間の保護機能を実現するリアルタイムOS(以下RTOS)を開発した。具体的には、応用プログラムとタスクのそれぞれに対して資源割当てを行う階層型のスケジューラを用い、時間保護を実現するアルゴリズムをTOPPERS/JSPカーネルとTOPPERS/OSEKカーネルに実装し、デッドラインの保障、カーネルの性能評価などを行い、その有効性を確認した。仕様については、自動車業界からの要求事項などを考慮し、実用を念頭に置いた基盤的RTOSを開発した。



8.採択理由


 
組込みシステム向けのRTOSでハードリアルタイムAPの時間保障を行うアルゴリズムを具体的には、TOPPERS/JSPカーネルのタスクスケジューラとして実装し、企業と連携して自動車制御で実証する内容である。申請の内容は妥当と判断した。組込み分野では、ハードリアルタイム制御の要求はより増大しているが、2層スケジューラを時間保護へ適用する着想に対して未踏性を認めることができ、自動車制御への適用は実用的であると判断した。



9.開発目標


 本プロジェクトでは、ハードリアルタイム性が要求される組込みシステムの応用を対象とし、複数の応用プログラムを単一のCPUで動作させるための時間保護機能を考案することを目標としており、アルゴリズムの開発とアルゴリズムを既存のRTOSに実装する。
 具体的には、次の内容をプロジェクトで実施する。
 (1) 時間保護機能の仕様検討
 時間保護機能を実現するためのスケジューリングアルゴリズムを考案する。特に、CPU資源を適切に応用プログラムに配分し、時間保護機能を実現するために、タスクをスケジューリングするためのタスクスケジューラとアプリケーションをスケジューリングするためのアプリケーションスケジューラにわけ、階層的なスケジューラ構成とする。また、このスケジューラを既存の組込みOSに実装するための標準的なAPIを定める。
 (2) 時間保護機能を持つμITRON4.0仕様準拠のリアルタイムOS の開発
 TOPPERSプロジェクトから公開されているμITRON4.0仕様準拠のリアルタイムOSであるTOPPERS/JSP Release 1.4に、(1)で定めた仕様に基づいたスケジューラを実装する。
 (3) 時間保護機能を持つOSEK/VDX仕様準拠のリアルタイムOSの開発
 TOPPERSプロジェクトから公開されているOSEK/VDX仕様準拠のリアルタイムOSであるTOPPERS/OSEK Release1.0に、(1)で定めた仕様に基づいたスケジューラを実装する。
 (4) 機能検証及び評価
 開発したTOPPERS/JSPベースのRTOSとTOPPERS/OSEKベースのRTOSのカーネルについて、動作機能の検証と性能評価を行う。



10.進捗概要


 スケジューリングアルゴリズムの検討とTOPPERS/μITRONへの実装は比較的早い時期に行われ、2005年11月にはパシフィコ横浜で開催された組込み技術展ET2005にM32R版の展示が行われた。9月には共同研究先の自動車業界から設計内容について検討を行った。また、各種学会発表も行っており、モデル化、実装、評価を順調に行ってきた。



11.成果


 本プロジェクトでは、次の成果が得られた。
 (1) 時間保護、すなわちデッドラインを守りながらの応用プログラム実行に対して、上流工程での仕様を明確化しつつ、下流工程での実装を容易にするアルゴリズムを提案した。
 (2) 本アルゴリズムのプログラミング仕様を明らかにし、μITRON仕様準拠のTOPPERS/JSPカーネルとOSEK/VDX仕様準拠のTOPPERS/OSEKカーネルに実装し、開発および実行基盤を提供することができた。
 これらの成果により、組込みシステム開発に対して、理論的枠組みおよび実用上有用な開発・実行環境を提供することができる。特に、OSEK/VDK仕様により自動車業界を中心とする基盤ソフトウェアを提案した。産業界だけでなく、学会発表により学術的な内容についても成果公表を行っている。



12.プロジェクト評価


 デッドラインの保障は、組込みソフトウェア開発では必要不可欠であるが、経験的・職人芸的な実装方法から脱却し、体系的な設計および実装が望まれてきた。 本提案では、時間保護機能というコンセプトを打ち出し、応用プログラムとタスクに対する資源割当てを行う階層型スケジューラとそのアルゴリズムを提案し、TOPPERS/JSPとTOPPERS/OSEKカーネルに実装し性能を検証した点を評価する。アルゴリズムによる抽象化とカーネルへの実装能力の両方の能力を兼ね備えている。展示会への出展、学会発表などを積極的に行ってきた点も開発成果の公表という観点からも評価する。
 ただ、提案アルゴリズムがタスクの待ち状態に対処しておらず割込みや通信などに対応できないこと、実証実験が若干不足している点は否めない。これらの点を何らかの形で解決することで理論的にも、また、実用的にもさらに素晴らしい開発になると今後も期待できる。



13.今後の課題


 (1) アルゴリズムの改良
 現在のアルゴリズムは待ち状態を考慮しておらず、割込みや通信などに対応できない。実用上は必要不可欠である。
 (2) 実行する応用プログラムの設定情報の簡易化
 現在、言語Cの設定ファイルにより応用ソフトウェアの情報を与えているが、より簡便な方法が望まれる。
 (3) 実用規模での実証実験
 現在は、小規模なプログラムでの評価にとどまっている。本方式の有用性を確認するためには、主張している自動車業界でのソフトウェアによる実証実験が不可欠である。


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