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2004年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 



1.担当PM


 竹内 郁雄   (電気通信大学教授)



2.採択者氏名


 代表者

関 愛  ( フリーSE )

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


  リトルスタジオインク株式会社


4. 委託支払金額


 2,999,466円



5.テーマ名


  メールによる懸賞応募システムの開発



6.関連Webサイト


 www.genux.jp, www.hapimel.com



7.プロジェクト概要

  現在の懸賞システムは,特に携帯ユーザからの応募数という点でどうしても,限界があるように感じられる.携帯ユーザの応募数を減少させてしまいかねない要因として下記のようなものがある.

 

(1) 携帯ユーザは URL を入力して,インターネットにアクセスすることにあまり慣れていない.

(2) 指定された URL にアクセスしても,すぐに応募画面にたどり着けない場合がある.

(3) メールアドレス・名前・住所など,大量の文字情報を入力するのが大変である ( 面倒くさい )

(4) 個人情報を入力して送るのは不安である.

(5) 携帯でインターネットにアクセスすると,お金がかかってしまうイメージがある.

 

 しかし,だからといって応募方法を簡素化しすぎると,顧客の情報を取得することができない.つまり,従来の懸賞システムでは,応募数と顧客情報の取得のうちどちらかを優先すると,必ずどちらかが犠牲になってしまう.

 この問題を解決するために考えたのが,メールによる懸賞応募システムである.メールによる応募には以下のようなメリットが考えられます.

 

(1) ユーザが意識的にインターネットにアクセスし,応募画面を探す必要がない.

(2) いつも使い慣れているので,誰でも手軽に応募することができる.

(3) ユーザが何も入力しなくても,メールアドレスという顧客情報を自動的に取得できる.

(4) 件名や本文にシリアルナンバーやクイズ・アンケートの答えなどを入力して応募が可能である.

(5) メールは安い ( お金がかからない ) というイメージがある.

(6) 携帯ユーザとパソコンユーザを区別して画面処理などを切り替える必要がない.

 

 提案は,メールによる応募システムをメールアプリケーションサーバ James によって開発することである.

 開発予定のシステムは,大きく分けると応募受付と管理画面の 2 つの処理に分かれている.応募受付では,ユーザからの応募メールを受信し,宛先からどのキャンペーンに対する応募かを判断し,キャンペーンごとに設定されている処理 ( 抽選や顧客情報の登録など ) を実行する.管理画面では,キャンペーンの登録や詳細設定,抽選の実行,当選者の管理,メールの自動配信などを行うことができる.

 メールによる応募システムは,入力用の専用インターフェースを必要としないために,汎用性が非常に高い.汎用性が高いためにさまざまなタイプの応募で利用でき,ユーザのメーラという入力用インターフェースさえあれば,キャンペーンタイプや企業の違いに関わりなく,それだけですべての応募が出来てしまう.すなわち,コストの削減にもつながる.





8.採択理由

  率直に言って提案内容に「未踏」の先進性の印象はないのだが,提案者の若さと,ひょっとして提案のシステムが ( 多少の改良が必要かもしれないが ) 広く使われるのではないかという点で採択を決めた.関君は若いわりにはしっかりした考え方をしているし,段取りにも抜かりがなさそうだ.こういう比較的小さな,しかし日常的な不便さからふと思い付いたアイデアで勝負することも重要だ ( 大昔の日清の即席チキンラーメンの発明を思い出す ) .メールを利用するという基本アイデアにある種の発展性もある.



9.成果概要

  メールによる懸賞応募を実現するために,キャンペーンを実施する企業側と,キャンペーンに応募するユーザ側の双方を対象にしたシステム,「ハピメル (hapimel) 」の開発を行なった.企業側には,懸賞キャンペーン実施に必要な情報を設定する管理画面を開発し,応募するユーザ側には,携帯から送信された応募メールを受信し,応募受付処理を自動的に実行するメールアプリケーションの開発を行なった.

 

 本プロジェクトでは大きく分けて以下の 3 つの機能を開発した.これらの開発のためにさまざまな懸賞サイトや懸賞雑誌を調べ,どのようなパターンのキャンペーンがあるのかについて徹底的に調査した.それらの中から,メールによる応募でも適用できるものに関してはそのほとんどを取り入れているため,利用者の多様なニーズに対応できるようになっている.

 

(1) 懸賞キャンペーン管理機能

 

 一般的な懸賞キャンペーンを実施する際に必要な各種設定を行なう機能である.応募受付時にはここで設定されたキャンペーン情報に基づいて,応募受付処理や抽選処理などを実行する.本プロジェクトでは一般的な Web システムとして Java Struts による開発を行ない,さまざまな設定を Web ブラウザから容易に行なうことが出来るようにした.

 図 1 にハピメル懸賞キャンペーンの基本設定画面を示す.ここで,「クローズド懸賞」は懸賞に応募するために商品を買ったことの証明 ( 購買証明 ) が要求されるものであり,「オープン懸賞」とはそれが不要なものである.

 応募タイプもさまざまなものを用意した.現段階では画面の中に書かれたもののうち 4 種類に対応している.

 ・ノーマルタイプ : 応募者にデータの入力を何も求めない.

 ・クイズタイプ : あらかじめ出題しておいたクイズに対する解答の入力を求める.

 ・トーナメントタイプ : 応募者にジャンケンの手を入力するように求める.他の応募者とリアルタイムに試合を行なうトーナメント戦を実施することができる.

 ・ナンバータイプ : 応募者に任意の数字を入力するように求める.あらかじめ設定したターゲットナンバーに的中した応募者が当選者となる ( 2)

 当選者の抽選タイミングには,「即時抽選 ( インスタントウィン ) 」と「事後抽選 ( ジャストエントリー ) 」の 2 種類が存在するが,ハピメルは両者に対応している.

 本プロジェクトでは,ポイント設定画面で 5 段階のポイントを設定することができ,それぞれにポイント数や,出現確率を設定することが出来る.キャンペーンでポイント機能を利用する場合,ユーザが応募するたびに,設定された出現確率に基づいてポイントが与えられ,蓄積される.

 全ての応募者に対して,登録されているファイルを返信メールに添付することができる.登録できるファイルの数は無制限で,ファイルごとに出現確率を設定可能である. 応募者は基本的に携帯ユーザなので,オリジナルの待ち受け画像や着信メロディーをプレゼントしたり,特定ファイルの出現確率を低くすることによってレアアイテムを作り出したり,割引率の違うクーポンを発行したりすることができる.

コース設定では賞品の分類とも言えるコースを登録・設定することが出来る.この設定は,応募者が希望のコースを指定する場合に利用される.賞品設定では,賞品が属するコースや当選人数などを設定できる.

 

 

関図1

関 図 1 ハピメル懸賞キャンペーンの基本設定画面

 

関図2

 

関 図 2 ナンバータイプを指定した場合の設定画面

 

 

(2) メールによる応募受付機能

 

 応募者が送信したメールの宛先からどのキャンペーンに対する応募かを判別し,キャンペーンごとの設定に基づいた応募受付処理を実行する機能である.前述のキャンペーン管理機能における設定をロードし,ロードした設定を基に処理を実行し,その結果から次の処理を行なうかどうかを判断するといった流れを繰り返す.

 ここでは詳細を省略するが,返信文の生成には独自の工夫をした.すなわち,応募者への返信メールには,全応募者に共通の返信文ではなく,各処理の結果を埋め込んだ動的な返信文を利用することが出来るようになっている.実際には,「応募タイプ」「即時抽選」「ポイントコレクト」「ランダムプレゼント」といった処理単位で,処理の結果別に「返信コンテンツ」と呼ぶ文章を用意し,最終的にそれを 1 つにまとめたものを返信文とすることにより実現している.また各返信コンテンツは,規定の変数を記述することによってキャンペーンの基本情報や,処理の結果といった動的な値を取得することも可能となっている.図 3 PC で返信メールを受信した例である.

 

(3) 会員データ管理機能

 

 メールによる応募受付の処理の流れに入る前に,会員データ管理が行なわれる.ハピメルシステムでは,応募を行なえるのは会員登録済みのユーザに限定されているため,応募受付処理に入る前に必ず会員チェックを行なう ( 4)

 

・応募メール受信時に,応募者のメールアドレスでハピメル会員 DB を検索し,会員登録がされているかどうかをチェックする.まだ会員登録がなされていない場合は,会員登録用 URL を記載したメールを応募者に対して送信し,会員登録画面から会員情報を登録してもらう.

 

・契約アカウント別 DB の顧客マスタに応募者の情報が登録されているかどうかをチェックし,必要ならハピメル会員マスタの情報を登録する.アカウント別顧客マスタの情報が,ハピメル会員マスタの情報より古いものであれば,最新の情報に更新する.

 

・上記の処理を経て,ハピメル会員マスタとアカウント別顧客マスタの両方に,応募者情報が登録された状態になった後, (2) の応募受付処理を実行する.

 

関図3 

関 図 3 PC で返信メールを受信した例

 

 

関図4

 

関 図 4 応募受付の流れ




 



10. PM評価とコメント

  こう言っては失礼だが,北海道の田舎で,フリーランスというか個人経営のソフトウェアハウスで生活していくのは大変だと思う.しかもまだ 19 歳である.しかし,当の本人はいたって鷹揚で,このプロジェクトで提案したメール型懸賞システムでビジネス展開をする予定である.未踏ユースでは,直接自分のビジネスにつながるソフトをそのつもりで開発した人は多くない.私は,関君の開発したシステムに光明が見えるような気がするのだが,実際にビジネスシーンで動いている人達にはどう見えるのだろうか? ネガティブな見方をする人もいるかもしれないが, 19 歳の若さであればなにも恐くないので,ぜひチャレンジしてほしい.ただし,システムのブラッシュアップはもう少しやらないといけない.ほかの未踏ユースの開発もそうだが,わずか 10 ヵ月足らずで 1 2 人で最終的完成品ができるわけがない.

 ただ本気でビジネス化を考えたときに,このまま個人で突っ走るかどうかは大きな分かれ道だと思う.もっとも,関君は個人で走りそうな様子なので,その場合のうまい small start 戦略をよく練る必要があるだろう. ASP としてスタートするとのことだが,タイミング,対象企業,マージン率その他,バッチリ決めてほしい. PM が聞いているところでは,中小企業を対象にした薄利多売の戦略らしい.これが良い small start 戦略になっていることを祈る.

 採択理由でも述べたが,このプロジェクトに技術的に特段の高い先進性はない.しかし,独創性は高い.ともかく着眼点が優れている.懸賞応募という日常行為に,これまたユビキタスに日常行為化した携帯メールを結びつけた着眼点がいい. Web を使った応募にくらべてずっと少ない手間で懸賞に応募でき,かつ発信者のメールアドレスが自動的に届く.後者は懸賞キャンペーンを行なっている企業にとっては便利この上ない.もっとも,これは応募者にとっては応募しただけでメールアドレスが知られてしまうので好ましいことではないかもしれない.そこで,多数の企業の懸賞キャンペーンを共通に請け負うという新しいビジネスモデル「ハピメル」が生まれたわけである.

 ハピメルでは,応募者情報が共通利用されるので,応募者は自分のメールアドレス等を応募先によらずに 1 回だけ登録すればよい.これも懸賞応募へのバリアを低くする効果がある.また,企業には応募者 ( 顧客 ) 情報をハピメル側で制御して渡すことができる.これにより,応募者と企業双方がうまい折合いで満足できるビジネスに発展する可能性がある.

 関君は若いが,システムの設計のしかたを見ると,かなり緻密である.上に示した最終報告はかなりの圧縮版だが,その一端が窺えると思う.それにしても,彼の実験に付き合ったりして知ったのだが,携帯キャリアとか機器で結構コード体系などが違い,いろいろ苦労するらしい.また,現状では RFC に反したドットアドレスを使用しているユーザからは応募が出来ないため,ドットアドレスに対応する必要があるのだそうな.

 なにはともあれ,普段はカスタマの言いなりで,納期に追われる仕事の合間に,じっくり考えることのできたソフトウェア開発だったので,大いに勉強になったらしい.いい話だ.実際,ソフトのいろいろなコンポーネント化や動的返信テキストの合成など,ソフトの造りもなかなか良い.

 

 このようなソフトの開発はビジネス化の成果を見てから判断したほうがいいのだろうが,若い関君への景気づけのために,ビジネス化を前提に未踏ユースのスーパークリエータの称号を与えたい.こういうのも, IPA の公式記録員泣かせかな?




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