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個人の凝りに適応可能な自律適応型マッサージチェア「ほぐし屋
筋さん」の開発を行った.このマッサージチェアは,プロのマッサージ手順に従ってマッサージする.ユーザが入力した凝り位置と凝り具合から,各部における揉み回数を決定する.マッサージ終了後にユーザの履歴を記録し,次回の揉み回数の学習に使用する.
「ほぐし屋
筋さん」はプロのマッサージ手順を持ち,これを基本手順として個人の凝りに合ったマッサージを行なう.プロのマッサージでは,揉み回数を変えることで個人に適応したマッサージを行なう.筋さんはこの方法を取り入れてマッサージを行なう.ユーザは凝り位置,凝り具合,快・不快の情報を入力する.入力を元に揉みルール作成器はユーザの凝りに応じた揉み回数を学習する.筋さんはプロのマッサージ手順に沿って,学習した揉み回数でマッサージする.マッサージ終了後にユーザの履歴を記録し,次回のマッサージチェア利用時にこの履歴とユーザが入力する凝り情報を用いて揉み回数の学習を行なう.
図
1 にシステム構成図を示す.

大矢 図
1 筋さんのシステム構成図
ユーザからの入力は,以下の
3 種類である.
マッサージ前
→ 凝り位置と凝り具合,肩位置
( 自動取得
)
マッサージ中
→ 快・不快
マッサージ後
→ 快・不快
これらの入力情報と基本手順を基にして,マッサージを行なう.
「ほぐし屋
筋さん」は,大きくソフトウェア部とハードウェア部に分けられる.ソフトウェア部は,揉み学習器,個人の履歴データベース,通信部から成る.揉み学習器は,ユーザに合った揉み回数を学習する.
学習にはオフライン学習とオンライン学習がある.オフライン学習には,マッサージ前の学習とマッサージ後の学習がある.マッサージ前は,ユーザが入力した凝り位置と凝り具合,個人履歴を用いて,ユーザの凝り具合に合った揉み回数を学習する.マッサージ後は,ユーザが入力する快・不快情報を用いて,揉み回数を再度学習する.それが終了した時点で,ユーザが入力した凝り位置・凝り具合と揉み回数を個人履歴に残す.オンライン学習では,マッサージ中にユーザが入力する快・不快情報を用いて,揉み回数を学習する.
快・不快を用いた学習では,ユーザが快であると入力すれば揉み回数を増やし,逆に不快であると入力すれば揉み回数を減らす.
ハードウェア部はソフトウェア部からの動作コマンドを受け取り,マッサージを実行する.マッサージ中は,マッサージチェアの情報を状態メッセージとしてソフトウェア部に送信する.今回は,リビングテクノロジー株式会社のマッサージチェア「ウォムザ」を改造して使用した.改造点は,肩位置検出機構,揉み玉牽引機構,横位置検出センサ,揉み玉の形状変更の
4 点である.
上記のようなシステムの開発のために行なった具体的な開発のうち特筆すべきものは以下の通り.
(1)
プロにならったマッサージ手順を作成するために,プロのマッサージ師のマッサージを撮影し,解析を行なった.この結果,
・
マッサージは一方向
( 遠心性のマッサージなので心臓から離れる方向
) にのみ行ない,同じ箇所を往復して揉むことはない.
・
軽擦
( 掌全体を使って背中を一方向にさする
) ,柔捏
( 揉みのこと
) ,叩き,軽擦の
4 段階に分かれている.
・
凝りを解すために使うのは柔捏だけで,柔捏は,肩,背中,腰の順に行なう.
・
プロのマッサージにおいて、背中を揉むときは、図2中心からの3本線が重要である。

大矢 図
2 プロのマッサージ手順
(2)
マッサージに関して,以下のような間違った情報が一般的に広まっていることが分かった.
間違った一般知識
正しいマッサージ知識
・
強く揉んだ方が凝りが取れる.
強く揉みすぎると揉み返しが来る.
・
弱く揉んだら凝りは取れない.
弱く揉んでも凝りは取れる.
・
指圧の強弱は押す力で加減する.
押す強さではなく,押す時間で調整する.
・
叩いたら凝りは取れる.
爽快感はあるが,叩いても凝りは取れない.
・
凝っている位置や凝り具合が違えば 凝り具合と凝り位置が違っても、マッサージ
マッサージの手順は変わってくる. の手順は変わらない。凝っている位置を揉む
回数を変えることで、凝りに合ったマッサー
ジをする。
(3)
以上の結果から,マッサージ手順作成のコンセプトを次のように決定した.
・
プロのマッサージ手順を元にして,揉み回数を増減する.
・
左右で凝り具合が違う場合には,左右非対称に揉む.
・
叩きは仕上げにのみ使用する.
(4)
プロのマッサージ師に,マッサージチェア「ウォムザ」の評価をお願いし,以下の改造を施した
・肩位置にあったマッサージをするための肩位置検出機構の追加
・一方向のみのマッサージを行なう機構の追加
・筋肉の際
( きわ
) を揉めるようにするための,横位置を指定する機構の追加
・筋肉の際に入るようにするための揉み玉の形状変更
( 図
3)
大矢 図
3 揉み玉の改良
--- 左がオリジナル
(5)
ハードウェアの限界を考慮し,プロのマッサージ手順を参考にした,マッサージチェア用マッサージ手順を作成した.詳細はここでは省略するが,図4に腰が凝っている場合の一例を示す.
これらの開発に関して特許を出願した
( 特願
2005 −
42719) .

大矢 図
4 腰の一部が凝っているときの手順例
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