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ブレインストーミングを媒介とした一般ユーザの発想支援に特化したソフトウェア
BrainStormingEngine ( 以下,
BSE) の開発を行なった.
BSE
は既存ソフトウェアが成し得なかった発想支援を行ない,またブレインストーミングは複数人を必要とするという問題を解決した.これには現在の作業効率支援型ソフトウェアに対するアンチテーゼの意も込められている.最終目的は,世界中の人間が強力な発想力を手に入れることができる発想支援ツールの完成である.
BSE
はなるべく多くのユーザに使用できるように,開発言語にはマルチプラットフォームに対応している
Java1.4 を採用した.開発には,
Windows XP 上の
Eclipse を利用した.
ブレインストーミングを紙上から計算機上に移す基本機能をまず開発した.これによって紙面上で行うブレインストーミングと同等のことが,違和感なくできるようになった.操作性には特に注意し,発想を妨げるような操作をユーザに強いることのないようになっている.たとえば,オブジェクトを操作する際には,対象オブジェクトの周囲に操作ボタンを表示する
( 図
1) .こうすると,メニューバー等から操作を選ぶのに比べて,操作に伴うマウスカーソルの動きが少なくできる.すなわち,ソフトウェア化したために発想を中断させることがない.

鈴木 図
1 ユーザインタフェース例
BSE
は,複数の人形を GUI
上に表示し,それらにヒントを発言させることで,仮想的に複数人とブレインストーミングしているかのような場を作り出す.ヒントは日常生活でよく用いられている言葉,
Osborn が考案したチェックリスト法に基づいた言葉
( 図
2) ,ユーザが過去に行なったブレインストーミングの履歴をベースに作成され,積極的に発想を支援する.ヒントの元となる言葉や履歴を人形ごとに別々に持つことが可能である.

鈴木 図
2 チェックリスト法からのヒント発言例
人形はオブジェクトとオブジェクトのリンク上をランダムに移動し,いる場所に応じたヒントを発言する.ユーザは陽に人形をつまんで移動させることもできる.
ブレインストーミングによりユーザが連想を行なっていく過程で,各連想項目の生成順が重要になることがあると考えられる.たとえば,第三者が途中経過のブレインストーミングを見た際に,どのような思考の流れがあったかを類推する場合などである.
BSE では連想項目の生成順を可視化するために色相によって時系列を表した.古い物ほど青みが強く,新しくなればなるほど赤みを帯びる
( 図
3) .これを紙上のブレインストーミングで行なおうとする非常に面倒である.

鈴木 図
3 色相による時系列表現
また,連想を続けていく中で,重み分けをしたいことがあろう.連想された項目が膨大になればなるほど,各々が持つ意味が変遷するので,連想された項目間のリンクに太さを用いて,関連度の強さを表す.また,現段階で一番重要と考えられる項目には特別な表示を施す.これらは連想後,具体案をまとめる段階で必要最低限の項目だけ抽出するために用いる.具体案を求めるためには,膨大な項目や関連性を扱わずに,グラフ理論的な距離や関連性を用いて,抽出された項目だけを意識させるほうがユーザの負担を減らすことができるからである.
BSE では,たとえば,あるオブジェクトに注目し,そのオブジェクトからの距離が近いもののみを残す
( 図
4) ,リンクの太いものだけを残す,といった操作が可能である.このとき,関連性が低いと判断されたオブジェクトは削除するのではなく,網掛け表示とした.

鈴木 図
4 設定距離 3
以内による抽出例

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