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本プロジェクトは,
Color Qube および
Catcher in the Qube の二つのゲームソフトウェアを開発成果とする.これらのソフトウェアはユーザに
4 次元空間を想像し把握しうる力「
4 次元把握能力」を獲得させることを目的として,実際に歩き回ることの出来る,且つユーザに理解しやすい
4 次元空間をコンピュータ上に表現したものである.
現在
Web 上にある多数の
4 次元物体を
3 次元や
2 次元に投影した模型や図形を公開するサイト
(SKYCUBE ,東工大ロボット技術研究会等
) に対して,このプロジェクトでは
4 次元物体の
1 部分の断面を「見る」ことではなく「感じる」ことに重点をおいた.断片的な無数の立体を,感覚的に結び付ける能力を獲得させるわけである.このソフトウェアを通して,ユーザの頭の中に
4 次元の世界を描かせることを目的とした.またより多くの人が気軽に遊べ,難解な解説や専門的な知識を必要としない,そして何より楽しめるゲームを目指した.無意識のうちに
4 次元空間を感覚的に把握できるようにすることが最終目標である.
ただし,
4 次元そのものを扱うのではなく
4 次元立方体である正
8 胞体の展開図
( 図
1 と図
2) をモチーフにすることで,我々に馴染み深い立方体をゲームフィールドとして利用し,無駄な部分に理解を要しないようにした.
二つのゲームソフト,
Color Qube ,
Catcher in the Qube について以下で述べる.
(1)
Color Qube
Color
Qube はプレイヤが倉庫番のように各面に色の付いた立方体 Color
Qube を押し,各面とその面に接する部屋
( 立方体 )
の壁の色を合わせるゲームである.フィールドは正 8
胞体の表層上 8
マスであり,正 8
胞体表層内で正 8
胞体の特性を利用して Color
Qube を回転させずに押していくだけで色を合わせる.各面の色を合わせれば,ゲームクリア
( 図
3 を図
4 の形にすればクリア
) .

花村 図
3( 右
) ゲームの初期状態
― 壁と中の立方体の面の色が合わない
,
図
4( 左
) ゲームのクリア状態
図
5 は実際に
Color Qube をゲーム内で押している画面である.この画面からは紫と緑の面はきちんと合っているものの,まだ赤と青の面が合っていないのが分かる.
Color
Qube は Java3D
で開発し た .ゲーム画面はすべてポリゴンで描写されており,
3 次元に展開された正
8 胞体をそのまま表現している.視点は部屋の中にいながらにして上下左右の部屋を確認できるように焦点距離を短くとり,ライティングも奥行き感を出すため,プレイヤ視点からのみ照明を当てた.移動時は,部屋そのものが回転してついてくるように見せることで,正
8 胞体表層では
270 度で同じ部屋に戻ってこれること,そして部屋と部屋の繋がりの不思議さを表現した.

花村 図
5 ゲームの画面
(2)
Catcher in the Qube
Catcher
in the Qube はプレイヤが鬼になって,捕獲対象である「みどりちゃん」
( 図
6 の中央
) を追いかける鬼ごっこである.フィールドは正
8 胞体の表層の
8 部屋であり,プレイヤはその中を逃げ回るみどりちゃんを追いかける.捕まえたところでゲームはクリアとなる.
このゲームは,誰でもインターネット上からブラウザを開くだけで遊べるようにするため,
FLASH で構築した.しかし,
FLASH は
3D をサポートしていないため,あらかじめ正
8 胞体の展開図と,移動するごとに変わる部屋の様子は
1 コマ
1 コマ用意した.
しかしこれでは部屋と部屋の違いを認識できないため,図
7 のように部屋と部屋の繋がりをグラフ化した.その際,複数の正
8 胞体を組み合わせたより難しい
4 次元場で鬼ごっこをすることを想定したデータ構造を採用した.
当面,このソフトウェアの正
8 胞体表層で表現されている移動可能な所は
8 部屋だけあり,障害物がない.そのため,
A* アルゴリズムのような高度な経路探索は必要ない.しかし,鬼ごっこを表現するためには捕獲対象が「逃げている」挙動を持つことが必要である.そこでみどりちゃんに以下のような
3 つの行動規則を設けた.
・移動しようとする部屋にプレイヤがいた場合は,そこには進まないようにする.
・みどりちゃんとプレイヤの目が合った場合は,向きを変える動作と,部屋を移動する動作をまとめて取ることで,慌てて逃げる雰囲気が出るようにした
( 図
8) .
・プレイヤが後を迫ってきたときも,上と同様に,素直に逃げるのではなく,方向を変えて逃げる
( 二つの動作の複合 ) .これにより,鬼は
4 次元空間の特性を利用して「回り込む」動きをしなければみどりちゃんを捕まえることができない.鬼であるユーザはこうして
4 次元空間を「体感」することが可能になる.

花村 図
6 みどりちゃんを追え

花村 図
7 部屋のつながり

花村 図
8 意図的に逃げるみどりちゃん

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