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開発者の
江端真行さんは,大学院修士課程の 1 年生。卒業論文の研究の中で開発した
「時系列視覚化による計算機監視システム」を,より便利な計算機システムの実時間表示を行う監視ツールとして仕上げたい,と未踏ユースに応募してきた。ヒアリングのときにデモで見せてもらったこのシステムは,蓄積された複数のログ情報をするすると閲覧できる,なかなか工夫されたものであった。これを実時間で表示する形に発展させるとともに,日周期,週周期での比較閲覧ができるようにするのだという。
江端さんは,計算機システムのセキュリティ対策を研究テーマとしている。とりわけ,外界からの侵入の検出・遮断・防止に焦点を置いていて,わざわざ外界からの侵入を受け入れてその侵入者の挙動を記録するためのおとりの計算機(これを蜂蜜の壺,
honey pot ,と呼ぶのだそうである)を設けてデータを収集してもいる。その蜂蜜の壺を監視したり,得られたデータを解析したりする道具として自ら便利に使いたい,というのをひそかな目的として,でき上がるシステム自身を,システム監視ツールとして広く使ってもらうことを開発目標としての応募であった。
開発のポイントは,実時間表示することと,日周期,週周期での現象が生じていれば一目でわかる形で長期間分のデータを表示することの
2 点にあった。実時間表示については,応募時から,データベースを利用してデータ蓄積を行いながら実時間で再表示を繰り返す,という方針がたっていた。あとは,ごく標準的な性能のPCでこの再表示が円滑に行えるようにシステムのチューンアップを重ねることでいけそうだという見通しであった。
長時間分のデータをどのように視覚化すればいいかについては,なかなかアイディアが浮かばなかったようである。中間発表の時点では,まだ方針が固まっていなかった。他の参加者との議論の中で,
“螺旋”というヒントを得て工夫を始め,最終的には前節の図に見る形の表示に落ち着いた。
螺旋というのは,いい着想である。しかし,なお工夫が必要である。螺旋のピッチと螺旋を眺める視点位置・視線方向の関係をどうとると最適であるか,各データを螺旋に載せて表示するのに短冊形よりも適したものがほかにないのか,などなど,何人かの人に使ってもらって(モルモットになってもらって)そのフィードバックをもらいながら工夫を重ねて洗練していってほしい。
目標の中にあった,“異常検知を支援する”ための適切な自動解析アルゴリズムの開発には手がまわらなかった。残念といえば残念であるが,それだけ可視化の工夫には手間ひまを掛けたということであり,可視化という多くの人に使ってもらうための一番の売りになる部分がそれなりのレベルに仕上がったことでよしとしたい。自動解析アルゴリズムは,今後,江端さん自身の研究の中で見いだしていって欲しいと思う。

当初の目標のうち,実時間での表示,長期分の日周期・週周期の振る舞いが一覧できる表示,という重要な部分はでき上がった。これを当初からの予定通りに多くの人に使ってもらえるようにするには,なお幾つかの工程が必要になる。それらを早めに仕上げて,広く使ってもらえるように公開にこぎ着けて欲しい。
公開して利用者ができれば,そこからのフィードバックで否が応でもさらに改良を重ねたくなるし,自動解析アルゴリズムを作り込みたくもなる。そうしていっそう磨きのかかったシステムに洗練していってくれることを期待する。
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