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開発者である島田敬士さんは,大学院博士課程に在学中で,ご自分の研究の関連で画像処理や人工知能について深く勉強しておられる。このプロジェクトそのものにも,それらの知識を活用しようというのである。
提案書に書かれた人間の脳の中での記憶の形成や夢の形成プロセスも,いわば仮説にすぎず,学問的に究明されたものではない。島田さん自身,その仮説どおりに計算機でシミュレートしたらどんな“夢”が出てくるのか見てみたいと思ってこのプロジェクトを構想されたに違いない。PMも,その“夢”に期待をかけてプロジェクトを採択したのである。
人間の脳の働きの解明,夢が脳で形成される仕組みの解明につながる,なにか興味ある現象が見られるかも知れない。あるいはまた,人間の脳の働きを表す新たなモデルの着想が得られるかも知れない。こうした期待も込めて,この
1 年で総てが仕上げるのを目的とせずに,今後発展させていく土俵ができることを期待したのである。その目論見のとおりのところまではでき上がったといっていいだろう。
キックオフの会合以来,PMからの注文といえば,どんなものにしろ,早く“夢”を表示できるところまでもっていって欲しい,ということの繰り返しだった。島田さんが設計として描いている特徴抽出・記憶形成・夢創成の仕組みは,学問的に“保証のついた”ものでもなんでもない。やってみて,“夢”らしいものに近づけようとさまざまにいじり回してみないと,面白いものになるという保証すらない。ことはコンパイラを作る,というプロジェクトとはまったく違っている。
この点では,島田さんの作業は,ソフトウェア工学に乗っ取ったともいえる進捗ぶりであった。成果発表会の段階では“夢”創成まで仕上がったものの,もっとこうできないか,面白い映像にならないのか,プロセスの途中のものに手を加えたらどうなるか,といった実験をする準備は整った。しかし,もうプロジェクトの中で実験を繰り返しつつ改善していく時間は残っていない。
島田さんの夢を,このプロジェクトで作り出した実験装置としての「夢見の機」を使った実験を繰り返していって,実らせて欲しいと思う。報告書にもあるように,少なくとも“記憶生成後に「夢見の機」の記憶をファイルに保存する機能を加え,デジタルカメラで撮影してきた写真を「夢見の機」の記憶に基づいて分類することができるような
GUI を追加する”ところまでは,頑張ってもらいたい。そうなってはじめて利用者がつく。利用者がつけば,否が応でも更に発展させて行きたくなる。その中から,次につながる何かのきっかけが生まれてくることを期待する。
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