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2004年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 



1.担当PM


 筧 捷彦   (早稲田大学教授)



2.採択者氏名


 代表者

島田 敬士  (九州大学大学院 システム情報科学府 )

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


  日本ユニシス・エクセリューションズ株式会社



4.委託支払金額


 2,987,497 円



5.テーマ名


  人間の第六感を模倣した夢見る計算機の開発



6.関連Webサイト


 なし



7.プロジェクト概要

 

 人間が夢を見る仕組みを工学的に再現することを目指した計算機システム「夢見の機」を開発した.「夢見の機」の主要機能は,つぎのものである。

(1)  入力された写真の色や形から画像を分割し特徴を抽出する

(2)  抽出された特徴を記憶の欠片として蓄積する

(3)  夢の引き金となる画像と関連づけられた記憶の欠片を順に連想表示させる

複数のデジタルカメラの写真を入力した後,夢を見るための引き金となる画像を指示することによって“夢”が鑑賞できるように作られている。





8.採択理由


  とにかく着想が面白い。
 夢見の機は,デジタルカメラ+自己組織化モデル,ということで考えている。
 夢を生成するのは,1枚の画像を示し,(フェードアウトするなりして)次の画像に移っていくというもの。
 どこまで,「夢」が描けるか,半年見守りたいプロジェクトです。





9.成果概要

 

 当初に予定していたそれぞれの要素を並べ,共通するユーザインタフェースから「夢見の機」の各機能を動作させるソフトウェアが仕上がった。そこに準備できたものは,そのメニューに並ぶアイコンを見るのが手っ取り早い。

•  1  デジタルカメラから映像を取り込む

•  2 特徴抽出を行う → 7 その時点までに抽出されている特徴を表示する

•  3 記憶形成を行う → 8 その時点までに形成されている記憶を表示する
•  4〜6 夢の再生:ラジカセでの再生と同様の指示方式をとる
•  9 色の記憶マップを表示する

•  10 形状の記憶マップを表示する

•  11 夢刺激用の映像入力を行う

 

島田図 

 

 

 ボタン1は,映像入力インタフェースに対応する。ボタン2・ボタン3は,入力された映像の解析と記憶の形成に対応する。映像の解析は,特徴的な色と形状を抽出し,“かけら”として記録する。どんな色や形状が抽出されたかは,ボタン7・ボタン8でながめることができる。それらを素データとして自己組織化マップの形成という形で記憶を形成する。マップのそれぞれの格子枠の中には, 0 個以上の“かけら”が収められる。これらのマップの状況は,ボタン9・ボタン10によって表示してながめることができる。

 

 夢自体は,ボタン4〜6のボタンで取り出して表示することができる。ボタン4を押すたびに夢が作られ表示される。その夢創出はランダムに行われる。ボタン 11 は,外部から刺激として別の映像を与えることで,その誘発に伴って異なった夢創出が行われるようにするためのものである。

 

 夢の創出は,記憶となっている自己組織化マップに形成されているものをランダムに取り出し, 2 次元映像を作り出すことで行っている。得られた 2 次元映像を載せた平面を 3 次元空間内で回転したり平行移動させたりして,その姿を画面上に投影する。

 

 記憶マップは,ボタン9・ボタン10でその内容を表示させておき,その画面の上で人手によって書き替える(格子枠を入れ替える,など)ことができるようになっている。利用者は,この機能と,外部から刺激を与える機能とをさまざまに適応してみることで,記憶内容と生成される夢とのつながり方を体感することができる。





 



10. PM評価とコメント


 

 開発者である島田敬士さんは,大学院博士課程に在学中で,ご自分の研究の関連で画像処理や人工知能について深く勉強しておられる。このプロジェクトそのものにも,それらの知識を活用しようというのである。

 

 提案書に書かれた人間の脳の中での記憶の形成や夢の形成プロセスも,いわば仮説にすぎず,学問的に究明されたものではない。島田さん自身,その仮説どおりに計算機でシミュレートしたらどんな“夢”が出てくるのか見てみたいと思ってこのプロジェクトを構想されたに違いない。PMも,その“夢”に期待をかけてプロジェクトを採択したのである。

 

 人間の脳の働きの解明,夢が脳で形成される仕組みの解明につながる,なにか興味ある現象が見られるかも知れない。あるいはまた,人間の脳の働きを表す新たなモデルの着想が得られるかも知れない。こうした期待も込めて,この 1 年で総てが仕上げるのを目的とせずに,今後発展させていく土俵ができることを期待したのである。その目論見のとおりのところまではでき上がったといっていいだろう。

 

 キックオフの会合以来,PMからの注文といえば,どんなものにしろ,早く“夢”を表示できるところまでもっていって欲しい,ということの繰り返しだった。島田さんが設計として描いている特徴抽出・記憶形成・夢創成の仕組みは,学問的に“保証のついた”ものでもなんでもない。やってみて,“夢”らしいものに近づけようとさまざまにいじり回してみないと,面白いものになるという保証すらない。ことはコンパイラを作る,というプロジェクトとはまったく違っている。

 

 この点では,島田さんの作業は,ソフトウェア工学に乗っ取ったともいえる進捗ぶりであった。成果発表会の段階では“夢”創成まで仕上がったものの,もっとこうできないか,面白い映像にならないのか,プロセスの途中のものに手を加えたらどうなるか,といった実験をする準備は整った。しかし,もうプロジェクトの中で実験を繰り返しつつ改善していく時間は残っていない。


 

 島田さんの夢を,このプロジェクトで作り出した実験装置としての「夢見の機」を使った実験を繰り返していって,実らせて欲しいと思う。報告書にもあるように,少なくとも“記憶生成後に「夢見の機」の記憶をファイルに保存する機能を加え,デジタルカメラで撮影してきた写真を「夢見の機」の記憶に基づいて分類することができるような GUI を追加する”ところまでは,頑張ってもらいたい。そうなってはじめて利用者がつく。利用者がつけば,否が応でも更に発展させて行きたくなる。その中から,次につながる何かのきっかけが生まれてくることを期待する。



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