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2004年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 



1.担当PM


 筧 捷彦   (早稲田大学教授)



2.採択者氏名


 代表者

荒川 淳平  (電気通信大学 情報工学科 )

共同開発者

蛭田 雄一(同上)
宮川 聡  (同上大学 同上学部 情報通信工学科)
矢野 健二(東京工業高等専門学校 専攻科 機械情報システム工学専攻)
山下 晃弘(北海道大学 工学部 情報工学科)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社  創夢



4.委託支払金額


 3,000,000円



5.テーマ名


  携帯電話から遠隔地のコンピュータを操作するシステムの開発



6.関連Webサイト


  http://mutil.jp



7.プロジェクト概要

  携帯電話から遠隔地のコンピュータを操作するシステムを開発した。システムは,携帯電話上にコンピュータと同等の入出力を実現する端末エミュレータ,コンピュータとの通信を実現する通信トンネル,安全な遠隔操作を実現する SSH クライアント,補完で入力の効率を高める入力補助プログラム,そしてコンピュータと携帯間のファイル転送と端末内のファイル管理を実現する SFTP クライアントから成る.



8.採択理由

時代のニーズにマッチした提案であり、プレゼンテーションも素晴らしかった。
開発ターゲットや設計についてもしっかりしているプロジェクトである。




9.成果概要


 まずは,携帯電話とコンピュータ間の通信を実用的に実現できる方式を確立した。各携帯電話キャリアの技術資料を調査したところ,ほとんどの携帯電話で HTTP/HTTPS 通信しか行えないことが判明した.そこで, HTTP/HTTPS 通信の上で自由な TCP 通信を実現するトンネルプログラム mtunnel ( mobile tunnel ) を,実用に耐えるターンアラウンド時間で実現した。

 

 携帯端末から遠隔地コンピュータに対して安全に通信ができるよう, SSH を実装した。また,携帯端末の入力装置上でコンピュータを使いこなすに足りる操作ができるように,入力を補助することを目的とするプログラム minput ( mobile inputer ) をコンピュータ側に実装して入力能力の向上を図った。

 

 携帯電話とコンピュータ間でのファイルのやり取りを可能にする sftp や,携帯電話内で扱えると便利と思われるファイル操作も実現した。 sftp の実現にあたっては,必要となった ssh2 を追加実装した。


 



10. PM評価とコメント


   このプロジェクトは,応募に対するヒアリングの際に行われたプレゼンテーションの中で,もっとも明解なものの一つを行った。筧PM分として採択したものの中では,唯一グループによる開発を行う形をとっている。プレゼンテーションは,グループリーダの荒川淳平さんの個人技によるものが大きいように思える。

 

 携帯電話という道具は,すでに国民の多数が所有するものとなっている。しかも,それは通信機能を備えた立派なコンピュータでもある。それを活用しない手はない,というのがこのプロジェクトを提案するに至った出発点であるという。

 

 採択の時から,携帯電話という制限された入出力しかできない装置で遠隔コンピュータを自在にあやつれるだけの仕掛けをどう組み立てるか,がポイントであるのは明らかであるが,それらだけでは,「国民多数」の道具の延長として「国民多数」の支持は得られないから,何かキラーアプリケーションを考えるのがよい,という注文を両PMから付けてあった。

 

 基本的に携帯端末上のアプリケーションソフトウェアは, HTTP/HTTPS を介して,通信会社が認めたサーバにアクセスすることしか,通信手段をもたない。しかも,画面は 256 × 256 ドット程度の大きさしかないし,アプリケーション用に使える Java ヒープは数 MB しかない。もちろん,入力装置としては 20 個に満たない押しボタンと, 4 方向入力を許すリング様の仕掛けしか備えていない。

 

 その中で, ssh を介して,OSで実現されているすべてのコマンドが使えるようにし,さらに sftp までも実装した腕前は並のものではない。 sftp の実装では ssh2 までも組み込む必要があったが,それらをすべて組み込んで数百 KB のプログラムサイズに収めた技術は一級のものである。

 

 個人での開発であれば,まちがいなく“スーパークリエーター”の称号を与えたであろう。今回は 5 人の共同開発であり,報告された分担表をみても, 5 人のチームワークで仕上がっている。チームリーダの荒川さんのリーダとしての力量が大いに発揮されていると思われるが,それをもって個人に称号を与えていいものかどうか判断に迷う。あれこれ迷った揚げ句,荒川さんに“準スーパークリエーター”の称号を与えることにした。チームリーダとしての力量だけで計るのなら,別のグループを率いての実績も見てみなければならないだろう。個人としての開発力で計るにはグループ総体としての結果しか見えていないのでデータが不足する。苦肉の策である。


 開発されたシステムは,そのサービスサーバの提供という形で有料で世の中に出していく予定でいるという。現在用意できている機能だけでも, UNIX などを使いこなしている“プロ”なら喜んで使うにものになっている。 sftp によるセキュリティを確保したファイル転送ができるのは何よりの売りになる。しかし,それ以外に人に受け入れらるには,やはり,適切な「皮」をかぶせる必要があるだろう。せっかくここまで仕上げたのだから,せめて PC 上での sftp, ftp ソフトウェア程度のインタフェースをかぶせるだけでもいいから,“しろうと”にも使える気にさせるだけの,今一歩の仕上げを期待したい。



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