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このプロジェクトは,応募に対するヒアリングの際に行われたプレゼンテーションの中で,もっとも明解なものの一つを行った。筧PM分として採択したものの中では,唯一グループによる開発を行う形をとっている。プレゼンテーションは,グループリーダの荒川淳平さんの個人技によるものが大きいように思える。
携帯電話という道具は,すでに国民の多数が所有するものとなっている。しかも,それは通信機能を備えた立派なコンピュータでもある。それを活用しない手はない,というのがこのプロジェクトを提案するに至った出発点であるという。
採択の時から,携帯電話という制限された入出力しかできない装置で遠隔コンピュータを自在にあやつれるだけの仕掛けをどう組み立てるか,がポイントであるのは明らかであるが,それらだけでは,「国民多数」の道具の延長として「国民多数」の支持は得られないから,何かキラーアプリケーションを考えるのがよい,という注文を両PMから付けてあった。
基本的に携帯端末上のアプリケーションソフトウェアは,
HTTP/HTTPS を介して,通信会社が認めたサーバにアクセスすることしか,通信手段をもたない。しかも,画面は 256 × 256
ドット程度の大きさしかないし,アプリケーション用に使える Java ヒープは数 MB しかない。もちろん,入力装置としては 20
個に満たない押しボタンと, 4 方向入力を許すリング様の仕掛けしか備えていない。
その中で,
ssh を介して,OSで実現されているすべてのコマンドが使えるようにし,さらに sftp までも実装した腕前は並のものではない。
sftp の実装では ssh2 までも組み込む必要があったが,それらをすべて組み込んで数百 KB のプログラムサイズに収めた技術は一級のものである。
個人での開発であれば,まちがいなく“スーパークリエーター”の称号を与えたであろう。今回は
5 人の共同開発であり,報告された分担表をみても, 5 人のチームワークで仕上がっている。チームリーダの荒川さんのリーダとしての力量が大いに発揮されていると思われるが,それをもって個人に称号を与えていいものかどうか判断に迷う。あれこれ迷った揚げ句,荒川さんに“準スーパークリエーター”の称号を与えることにした。チームリーダとしての力量だけで計るのなら,別のグループを率いての実績も見てみなければならないだろう。個人としての開発力で計るにはグループ総体としての結果しか見えていないのでデータが不足する。苦肉の策である。
開発されたシステムは,そのサービスサーバの提供という形で有料で世の中に出していく予定でいるという。現在用意できている機能だけでも,
UNIX などを使いこなしている“プロ”なら喜んで使うにものになっている。 sftp によるセキュリティを確保したファイル転送ができるのは何よりの売りになる。しかし,それ以外に人に受け入れらるには,やはり,適切な「皮」をかぶせる必要があるだろう。せっかくここまで仕上げたのだから,せめて
PC 上での sftp, ftp ソフトウェア程度のインタフェースをかぶせるだけでもいいから,“しろうと”にも使える気にさせるだけの,今一歩の仕上げを期待したい。

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