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開発者である赤川直人さんは,獣医にしてしまうのはもったいないほどの,ソフトウェア開発能力の持ち主である。世の中で,電子政府だ,
e-Japan だと騒がれている中で電子カルテの話も喧伝されているにも関わらず,実際に電子カルテを採用できるのは,大手の病院にかぎられているという。メーカーが受注して作る電子カルテシステムがあまりに高価だからである。それなら,医師の(卵の)身ながらも,実際に使えるものを作ってしまえ,というのが未踏ソフトに応募した理由であった。
正直なところ,赤川さんの腕前のほどがわからず,プロジェクトに採択する際には心配であった。キックオフの会合では,設計した画面を示しながらの説明があり,まずは一安心したものの,当初予定していた友人などによる作業協力が得られなくなったということで不安が募った。このプロジェクトを含めて身の振り方で悩んでいるという話を聞いて,赤川さんの開発作業の場所へ出向いて面談をした。
基本的には,獣医学科の最終学年(
6 年生)であり,納期のころに獣医師の国家試験がある。これを振ってでも,このプロジェクトで手がけた電子カルテシステムを育てて世の中に広めていきたい気がする一方で,獣医学科に入学した当初からの夢である獣医師として世の中で働くことも捨て難く,悩んでいるという。そういいながら,そこまでにでき上がったシステムを見せてもらった。PMとしての当初の心配は霧散してしまうものがすでにでき上がっていた。
さて,PMとしては,獣医師もプロジェクトも捨てないで欲しい。しかし,まずは獣医師の道を確保するのが何よりだといって激励して分かれた。
12 月の中間発表会, 1 月のプログラミングシンポジウムでの発表と,聞くたびにシステムは増強されていった。
そこから先は,国家試験対策,そしてその後の留学準備と,獣医師の道を進むためにすべての時間をつぎこまざるを得なくなって,プロジェクトの方の発展が止まってしまったのは残念である。この段階まで出来上がったシステムを,何らかの形で発展させ,世の中に広めていく工夫をしたいものである。

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