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2004年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 



1.担当PM


 筧 捷彦   (早稲田大学教授)



2.採択者氏名


 代表者

井尻 敬  (東京大学大学院情報理工学系研究科 )

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


  日本ユニシス・エクセリューションズ株式会社



4.委託支払金額


 2,994,222 円



5.テーマ名


  スケッチベースの草花のモデリングシステムの開発



6.関連Webサイト


  なし



7.プロジェクト概要


  手描きスケッチによる草花のモデリング技術と,生物学における花式図と花序の構造理論を組み合わせることにより,きわめてリアリティの高い3次元草花画像のモデリングシステムを開発した。また,スケッチ操作および花式図・花序構造定義操作のいずれにおいても,使用しやすく,かつ汎用性の高いユーザインタフェース利用により,初心者であっても複雑な草花形状や構造パターンをきわめて短時間にモデリングすることが可能であり,既存の類似システムを凌駕する画期的なシステムとなった。





8.採択理由


  面白い。本人が嬉々として使っているところがなによりいい。
 でも,究極は生け花のモデリングがやりたい,というところまでにはまだギャップがありそう。それでも,現M1で M2までに生け花までいきたい,という目標がはっきりしているのはなにより。
 生け花に向かわなくても,使い道はいろいろありそうだし,もう少し調べ物もするといっそう発展できるだけのものを秘めている。







9.成果概要

   提案のヒアリングの時点で, 茎のモデリング,葉のモデリング,花びらのモデリング部分についての,自由ストロークを元にしたインタフェースのプロトタイプを実演していた。なにより,植物,とりわけ草花について,提案者自身が自在にモデリングしたい,という気持ちにあふれていた。そして,計算機を使って生け花をしたいのだと夢を語った。

 

つまり,提案の時点ですでに“ジオメトリ”についての大枠はでき上がっていた。すなわち, ジオメトリのモデリングはすべてスケッチインタフェースにより,複雑なコマンド操作や,制御点操作なしで使えるものにする基本ができていたのである。

 

一方,“ トポロジー ”のモデリングをどうするかが,このプロジェクトでの中心課題であった。結果として, 花式図エディタと花序エディタを用いるものに落ち着いた。花式図・花序は,生物学で花の構造を記述するために実際に利用されている枠組みあり,植物の三次元的な構造を二次元の絵で単純化した表現であり,ひと目で構造が理解できるものになっている。この視覚的に解りやすい枠組みをベースにして,花式図・花序エディタを用意することで,複雑な分岐構造をシンプルな操作で扱うことを可能にしたのである。

 

仕上がったシステムを利用して実際にモデルを初心者に作成してもらっている(下図 参照)が,これらが 30 分から 40 分程度で生成できたという。既存システムと比較してユーザの手間を大幅に削減することに成功したといっていいであろう。この結果は,コンピュータグラフィックスの代表的国際会議である SIGGRAPH に論文にして投稿中であるという。採択され世界中の専門家の耳目を集めるに至ることを期待している。


井尻図


 



10. PM評価とコメント


   提案の時点から自由ストロークによってつぎつぎに花びらや葉を描き出していく実演の様子を見せつけられては,プロジェクトに選定しないわけにはいかなかった。しかし,それらを具体的な 1 本の花をつけた草に組み合わせていくのにどうするかについては,まだまだ確定した案を持ち合わせてはいなかった。

 

 キックオフの会合から中間発表会への間に,花式図・花序を使ってモデリングを進める方針が固まった。残る時間をかけて, 花式図エディタと花序エディタを用意し,自由ストロークに基づく“ジオメトリ”編集と連携したシステムに仕上げていった。この間に,“ジオメトリ”編集のインタフェースは,さらに改良されて,使い勝手のすぐれたものに進化している。

 

 PM自身は,コンピュータの画面相手に絵を描く気にはなれない旧世代人間である。開発者の井尻敬さんが,タッチペンを片手にそれこそすいすいと絵を描いていく様を見るとうらやましくてしかたない。うらやましさ半分に,“数奇者”でなければああは描けるものではあるまい,との気持ちが抜けなかった。しかしながら,初心者に実験台になってもらって,花序だの花式図だのの説明をする分を含めて 30 分ほどでみごとな草花の絵が描けた(モデリングできた)と見せつけられると,若い世代の人なら誰でも使えるものに仕上がっているのだと認めざるを得ない。(旧世代にも使いこなせるかどうかについては,恐ろしくて自ら試してみることをしてはいない。)

 

 惜しむらくは,この時点で仕上がっている花式図エディタと花序エディタは,まだまだそのインタフェースが練れていない。これらの洗練が行われれば,鬼に金棒で,広く使われるものになるに違いない。そこまで仕上げるに至らなかったのは残念であるが,未踏ユースとしての枠で考えると,スーパークリエーターと呼ぶにふさわしい。

 今後の課題としては,まず何といっても, 花式図エディタと花序エディタのインタフェースの使い勝手を上げること。これをやらないことには,せっかくの仕組み全体が泣いてしまう。

 

 このシステムは,開発者自身も課題として上げているように,いくつかの機能追加が望まれる。まず, スケッチベースのシステムとしたことから,生成できる花弁が楕円状のものに限られてしまっている点の改善がある。対応できる形状(ハート型など)を増やすことや,一般的なモデリングソフトからのインポートをサポートすることなどを考えているという。 “トポロジー”については,現時点の花序エディタでは,利用できるのが 8 パターンに限られている。新たにパターンを加えることで,モデリングできる花の種類を増やしたいという。これらの改善を施して,より多くの人に愛用されるシステムとして世の中に広めていって欲しい。

 

 開発者は,さらに,このシステムを基に,植物全体がモデリングできるシステムへと展開して行きたいという。活け花などの芸術が, CG で表現できるようにしたい,という夢を近い将来に是非実現してほしいものである。そのときには,それこそ“本ちゃん”のスーパークリエーターとなる。




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