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提案の時点から自由ストロークによってつぎつぎに花びらや葉を描き出していく実演の様子を見せつけられては,プロジェクトに選定しないわけにはいかなかった。しかし,それらを具体的な
1 本の花をつけた草に組み合わせていくのにどうするかについては,まだまだ確定した案を持ち合わせてはいなかった。
キックオフの会合から中間発表会への間に,花式図・花序を使ってモデリングを進める方針が固まった。残る時間をかけて,
花式図エディタと花序エディタを用意し,自由ストロークに基づく“ジオメトリ”編集と連携したシステムに仕上げていった。この間に,“ジオメトリ”編集のインタフェースは,さらに改良されて,使い勝手のすぐれたものに進化している。
PM自身は,コンピュータの画面相手に絵を描く気にはなれない旧世代人間である。開発者の井尻敬さんが,タッチペンを片手にそれこそすいすいと絵を描いていく様を見るとうらやましくてしかたない。うらやましさ半分に,“数奇者”でなければああは描けるものではあるまい,との気持ちが抜けなかった。しかしながら,初心者に実験台になってもらって,花序だの花式図だのの説明をする分を含めて
30 分ほどでみごとな草花の絵が描けた(モデリングできた)と見せつけられると,若い世代の人なら誰でも使えるものに仕上がっているのだと認めざるを得ない。(旧世代にも使いこなせるかどうかについては,恐ろしくて自ら試してみることをしてはいない。)
惜しむらくは,この時点で仕上がっている花式図エディタと花序エディタは,まだまだそのインタフェースが練れていない。これらの洗練が行われれば,鬼に金棒で,広く使われるものになるに違いない。そこまで仕上げるに至らなかったのは残念であるが,未踏ユースとしての枠で考えると,スーパークリエーターと呼ぶにふさわしい。
今後の課題としては,まず何といっても,
花式図エディタと花序エディタのインタフェースの使い勝手を上げること。これをやらないことには,せっかくの仕組み全体が泣いてしまう。
このシステムは,開発者自身も課題として上げているように,いくつかの機能追加が望まれる。まず,
スケッチベースのシステムとしたことから,生成できる花弁が楕円状のものに限られてしまっている点の改善がある。対応できる形状(ハート型など)を増やすことや,一般的なモデリングソフトからのインポートをサポートすることなどを考えているという。
“トポロジー”については,現時点の花序エディタでは,利用できるのが 8 パターンに限られている。新たにパターンを加えることで,モデリングできる花の種類を増やしたいという。これらの改善を施して,より多くの人に愛用されるシステムとして世の中に広めていって欲しい。
開発者は,さらに,このシステムを基に,植物全体がモデリングできるシステムへと展開して行きたいという。活け花などの芸術が,
CG で表現できるようにしたい,という夢を近い将来に是非実現してほしいものである。そのときには,それこそ“本ちゃん”のスーパークリエーターとなる。

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