CPU性能の大幅な向上や大容量メモリの低廉化及び集積化など,ハードウェア技術の進展の恩恵を受け,組込みシステムであっても汎用的なOSやソフトウェアプラットフォームを備えアプリケーション開発を効率良く行うことができるようになってきた。しかしながら,組込みシステム向けのプラットフォームでは,リアルタイム性能の追求,ハードウェアコスト低減化のためのメモリ容量制限、ROMの使用やバイナリ実行時のメモリ初期化に関する制限、まちまちなアーキテクチャなどが原因となり,異なるプラットフォーム間で完全な移植性を持たせるためのアプリケーションソフトウェア開発には相当の努力が必要とされていた。
このような背景の下,2001年には携帯電話に搭載することを前提としたBREW (Binary Runtime Environment
for Wireless) が,2002年には次世代リアルタイムシステムを構成するT-Engineがそれぞれ発表され,組込み分野におけるプラットフォームの標準化への貢献やより一層の普及が見込まれている。
本プロジェクトはこのような状況の下で,これらの異なるプラットフォームを有効に利用できるアプリケーションソフトウェアを構築するためのグラフィカルユーザインタフェースを備えたフレームワーク
(以下,「本フレームワーク」という) を開発することを目的とする。本フレームワークは画面のpush/popを基本とした軽量なフレームワークであり,本フレームワーク上で開発されたアプリケーションプログラムは,ソースコードを修正することなく再コンパイルするだけで動作させることを目標とする。また,そのフレームワークの利用例として,GPSから取得した現在時刻や位置から,駅のホームに備え付けてある列車発車案内LED表示とほぼ同じ情報を提供する,列車案内システムを開発する。
組み込みシステムは,サーバシステムやパーソナルコンピュータシステムに比べ,計算機資源の量やCPU性能において劣るものである。また,省電力の観点やコストの観点から,できるだけ実行負荷や利用資源が小さいことが強く要求されている。一方で開発期間の制限から,既存の開発資産を共有することもまた要求されている。軽量なグラフィカルユーザインタフェースのフレームワークが組み込みシステム環境下で提供されることは,組み込みシステム開発におけるニーズと一致するものである。従って,このプロジェクトで狙っているシステムへの要望は高いといえる。
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