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(1) 分子表示機能の改善
Winmostarの標準の分子表示は,2D表示を基本にした疑似3Dの立体棒球表示である.陰面消去はZソート法を用い,球では3階調,棒では2階調で立体感を表わしている.棒が球の手前で接する輪郭は半楕円であるべきところを,半円で代用してプログラムの簡易化と表示の高速化を図っている(図1).

図1 擬似3Dの棒球表示(2.5倍表示)
以上の基本表示機能に加えて,以下の機能も実装された.
(a) 遠近法表示,(b) 原子色の変更,(c) 輪郭の明瞭化,(d) ダブルバッファリング.
(2) 簡易分子力場法を用いたクリーン (構造緩和) 機能
分子軌道計算の初期構造として,簡易的な分子力場法を用いて構造の歪みを最小化しておくことで,構造最適化の安定化と高速化が図れる.既に開発済の分子力場プログラムの修正と,原子種毎の結合距離,結合角,二面角のパラメータの追加・調整を行った.
(3) VRML出力機能
2D表示で困難なところはVRMLで出力し,VRMLビューワを利用するようにした.分子構造と分子軌道,電子密度,静電ポテンシャル等のVRML出力に対応し,透明表示を可能にした.さらに,等値面でのMOや静電ポテンシャルのマッピング表示を実装した
(図2).

図2 ジベンゾチオフェンの電子密度等値面にHOMOマッピング (VRML)
(4)
CIF形式データ対応
X線結晶構造データで用いられるCIF形式データに対応することで,X線結晶構造データを分子軌道法の初期構造データとして利用可能にした.分子内対照性を用いたデータ形式には,Cambridge
Crystallographic Data Centre (CCDC) のMercuryにデータを渡して起動するようにした.
(5) Z-Matrixの原子指定順序の最適化
Z-Matrixでの最適化では,原子指定順序が適切でないと構造最適化に時間がかかったり,発散したりすることがある.図3aのような座標順序の場合は1番原子から遠く離れた原子の位置が大きく動くので構造最適化が不安定になるが,新規に開発した方法で図3bのような順序にすることで,構造最適化を安定化させることが出来た.

図3a 最適化前の順序

図3b 最適化後の順序
(6)
10万原子に対応
2000原子の制限を10万原子まで拡張し,合成高分子の分子動力学シミュレーションの表示や生体高分子の表示も可能にした.分子座標の配列に動的配列を用い,読込む分子の大きさによって自動的に配列を拡張するようにした.
(7) Gaussian03のインターフェイス改善
Gaussian03 (世界で最も広く利用されている非経験的分子軌道法ソルバー) のデータ作成,計算結果表示機能を改善した.VRML機能を利用して,等電子密度面に静電ポテンシャルや分子軌道のマッピングを可能にした.図2は、Gaussian03の計算結果である.
(8) GAMESSとのインターフェイス改善
Gaussian並みの機能を有するフリーソフトであるが,利用ノウハウやツールが不足しているために普及していないGAMESSのGUIを改良した.最新版のPC-GAMESSとWinGAMESSの起動が出来るようにし,分子軌道表示にも対応した.VRML機能を用いて表示したスチレンのHOMO軌道を図4に示す。GaussianとMOPAC
(世界で最も広く利用されている半経験的分子軌道法ソルバー) についても、同様な表示が可能である.また,構造最適化の構造変化をアニメーション表示することも出来る.これは、表示機能の改善
(ダブルバッファリング) によって可能になった.

図4 スチレンのHOMO軌道(VRML)
(9) 水素付加機能
当初の予定には入っていなかったが,水素のデータが不足しているPDB形式データに水素を自動付加する機能を実装した.結合長等の構造情報を用いて,適切な付加水素の数と位置を推定している.この機能は、生体分子の分子軌道法計算に広く応用できる.
(10) 紫外・可視吸収スペクトル計算
これも当初の予定には入ってなかったが,日本コンピュータ化学会に登録されているプログラムP083(CNDO/S法:Fortran)を改良してコンパイルした.バイナリをExecCmdで起動し,計算結果のスペクトル表示機能も実装した.

図5 メロシアニン色素の紫外・可視吸収スペクトル
(11)
優秀な国産ソルバーとのインターフェイスを作成
ソルバーとしては優れているが,GUIが充分な機能を持たないために普及が遅れている国産ソルバーのGUIに対応した.分子軌道法ABINIT-MP
(平成13年度未踏ソフトウェア創造事業「フラグメント分割法に基づいた並列分子計算プログラムの開発」) と,分子動力学法のGUI機能に対応した.ABINIT-MP対応は,水素自動付加を利用し,PDB形式出力機能で入力データ作成に利用できる。
(12) Linux対応
WindowsのGUIからLinux計算サーバーの分子計算プログラムを起動するリモートジョブ制御方式を実装した.rsh,ftpをベースに実装し,計算プログラムとしてGaussian98/03に対応した.ジョブ管理ツー
(LSF) にも対応し,計算サーバーの負荷状況の確認,ジョブの投入,実行状況の確認,ジョブのキャンセル等が,図6の画面で制御できる.

図6 リモートジョブ制御画面
(13)
他GUIソフトとの親和性向上
他の国産フリーソフトとの親和性を高めるように,座標形式の追加とWinmostarの起動オプションを追加した.FacioのGAMESS、Gaussian出力の拡張子に合わせることでFacio特有の処理に移し易くした.MolWorksの座標形式出力をサポートし,MolWorksで物性推算機能を利用できるようにした.Moldaの座標形式出力をサポートし,Moldaの生化学機能を利用し易くした.
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