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図1.システム概要図
図1は、開発したシステムの概要図である。
システムはブログやWikiなどの既存Webアプリケーションのプラグインとして利用可能である。これによりユーザーは従来のアプリケーション上で社会ネットワークを利用した情報共有を行うことができる。
ユーザーは関係編集機能により、自身の社会ネットワークを入力、編集、管理を行う。また、Webやemailなどの外部ソースに情報がある場合(Web上に表れる氏名や、emailの送受信履歴など)は、社会ネットワーク抽出機能によりユーザーの社会ネットワークデータを自動的に抽出する。
ユーザーは情報発信時に、自身の社会ネットワークを用いて共有範囲をコンテンツに設定する。共有範囲は関係の種類、信用度、距離などを組み合わせたルールを用いて指定する。また、共有範囲を設定する際にユーザーはネットワークを可視化することで情報の流れに関して気づきを得ることができる。また、ネットワーク分析によりネットワーク構造的な自分と他者の状況を把握することも可能である。
アプリケーションは他のユーザーからその情報に対するアクセス要求を受け取るとあらかじめ設定されたアクセス権を元にアクセスを許可するかを決定する。アクセスが許可されていないコンテンツがある場合、ユーザーは発信者に共有の要求を出すことができる。
(1)社会的関係のモデル化、抽出、編集機能
社会的関係のモデル:社会的関係はFOAF(Fried of a Friend)を拡張したものにより表現を行う。そのために社会関係を整理して記述するための人間関係オントロジーの開発を行った。第1版システムでは、関係の属性について、例えば研究者のドメインならば所属組織、参加プロジェクト、研究分野などの属性をトップダウンに与えてユーザーはそれに対して、石塚研究室、未踏プロジェクトなどの具体的な関係を入力し人間関係オントロジーにもとづき整理するという形をとっていた。いくつかの実験結果を考慮して改良したシステムでは、特定の関係属性を規定せず、ユーザーは自由にさまざまな関係を入力していくというボトムアップなアプローチを採用した。
相手との関係の重みとして信用度を用いた。社会的関係の強さは感情、頻度、信頼や相補性など複合的で多岐に渡る。システムでこれらを扱う場合は、対象を限定し単純化することが必要である。例えば、ソーシャルネットワークサービスのOrkutでは友人との関係の強さを``haven't
met''か``best friend''までの5段階で表している。
我々は、「相手がどのように自分の情報を扱うか」に関するreliabilityを情報共有における信用度と定義し、ユーザーが入力した離散的な値を利用し2者間の間の最小値を2者の間の信用度とする最小流量モデルを用いている。また、信用度は情報共有の結果により変化する。例えば、2者の間で頻繁に共有が行われている場合は信用度が上昇する。
社会的関係の抽出:2者に何らか社会的関係があるとき、コミュニケーションが多く発生する。その形態は実際の会話であったり、オンライン上でコミュニケーションであったりする。これらのコミュニケーションから、空間的に近い位置に存在する、Web上に2者の名前が現れる、などのようにして観測可能な情報が生まれる。したがって、社会的関係の抽出は、こういった観測可能なものから社会的関係を推定することと等しい。社会的関係の抽出はWeb、email、スケジュールデータ、引用関係
やFOAF filesなどさまざまな情報源を対象に研究がなされている。我々は関係の自動抽出として主にWebおよびemailの情報を使用している。抽出の基本的なアイデアは、ある2者について多くのWebページに氏名があらわれている場合(emailならばやり取りの頻度)に、それらの間に関係があると推測するものである。関係の強度は氏名の共起に基づいている。自動抽出はWebやemailなどの外部情報源がある場合にユーザーの初期社会ネットワークを構築するのに利用可能である。
社会的関係の編集:入力もしくは抽出した社会的関係についてユーザーは編集をすることが可能である。その際にユーザー間で使用する語彙や粒度(例.
慶応義塾、慶大、慶応大学、慶応大学○X研)がなるべくそろうように、他の人が使用している関係や全体で使用されている頻度を参照できるようにしている。
(2) 社会ネットワークを利用した共有範囲設定機能
ユーザーは情報発信時に、自身の社会ネットワークを用いて共有範囲を情報に設定する。その際、共有範囲は関係の種類、信用度、距離などを組み合わせたルールを用いて指定する。関係の種類は、入力・編集された社会的関係を選択できる。信用度は最小流量モデルにより決定され、1から10の離散値をとる。距離はネットワーク上のホップ数である。いわゆる、知り合いの知り合いは距離2である。ルールは共有ルールと呼び、ルールを組み合わせて共有範囲の設定を行う。設定後は、コンテンツとあわせてアクセスポリシーとして保存され、後に同様の情報を共有しようとするときそのポリシーを再び適用可能である。また、ユーザーはあらかじめシステムが提供するデフォルトポリシーを適宜修正して利用することができる。ポリシーはXACML(Extensible
Access Control Markup Language)へも変換可能である。
共有範囲を設定する際にユーザーはネットワークを可視化することで情報の流れに関して気づきを得ることができる。また、ネットワーク分析によりネットワーク構造的な自分と他者の状況を把握することも可能である。
(3)社会ネットワークを利用した情報共有システム
開発のプロタイプシステムとして、図2に示すようなWebコミュニティサイトを開発した。
開発・実行環境は以下の通りである。
開発環境:PHP4、JavaScript、 Java 1.5.x
実行環境:Apache、 PHP4、 MySQL 4.x、 JavaScript
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関係の入力・編集
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共有設定選択
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共有範囲設定されたコンテンツ
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図2 情報共有サイト(第1版)
Webサイトは、異なる組織、プロジェクトに属する研究者間の情報共有を目的としたものであり、ブログ、Wiki、スケジュールなどのツールを使用して研究データやアイデア、論文、報告書、スケジュールなど多様な情報に対して社会ネットワークを利用して共有範囲を設定することが可能である。
(3) 社会ネットワークを利用した情報共有システム(改良版)
いくつかの被験者実験の結果を受けて、図3に示すような情報共有システムの改良版の開発を行った。
第1版に比べ、ほとんどがhtmlベースによる操作が可能となり軽量化された。また、関係の入力・編集に関してはユーザーが自由に入力可能でありボトムアップ的な関係の構築がおこなえる。さらに、共有範囲設定後の新たな共有の要求やそれを受けての関係の更新、さらなる共有といったサイクルが特徴である。
図3.情報共有サイト(改良版)
関係の入力・編集:
社会的関係の入力や編集を行う。自分のまわりの知り合いや関係のブラウジングや検索を行うことができる。また、関係を社会ネットワークとして可視化することにより関係の視覚的な確認やネットワーク分析が可能。
コンテンツの作成:
ブログやWikiなどのツールを使ってコンテンツの作成が可能。詳細な共有範囲の設定を行う必要がない場合は非公開か公開かまたは任意の関係を選択することで設定可能。Secret
tagを使用することにより共有範囲はコンテンツ全体だけでなくコンテンツの一部に対しても設定可能。
共有範囲の設定:
作成したコンテンツに対して共有範囲を設定。コンテンツが提供するアクセスの各タイプに対して社会的関係、信用度、距離などに基づき共有する相手を決定。社会ネットワークを表示することで視覚的に共有範囲を確認しながら設定可能。
コンテンツにアクセス:
共有されたコンテンツにアクセス。作成者に対してメッセージを送ることが可能。また、アクセスできないコンテンツがあれば[見せて]ボタンを押すことで共有の要求を送ることも可能。共有が許可されれば新たにアクセスが可能。
共有範囲・状況の確認:
共有したコンテンツに誰がアクセスできるのかという共有範囲の確認や誰がアクセスしたか、いままで誰とどのようなコンテンツを共有したのかといった共有状況の確認が可能。コンテンツに対して共有の要求があれば適宜、共有範囲を更新。
また、共有の結果として新たな関係の入力や更新を行う。
図4.ROLIGANの情報共有サイクル
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