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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 加藤 和彦 (筑波大学 電子・情報工学系 教授)



1.プロジェクト全体の概要


 当プロジェクトは,現在および今後の情報社会の基盤となるソフトウェア開発を対象として公募を行った.全47件の応募があり,上位数件に対してヒアリングを行い,最終的に5件を採択した.今年度で2回目の募集となるが,昨年度よりも全体的にレベルが高まったことを感じた.
 採択された5件はいずれも基盤ソフトウェアの開発としてサポートすべきであると当PMが確信するに至ったものばかりであり,当初から充実したプロジェクトなることが予感できた.
 2004年7月2〜3日に京都リサーチパークにて,伊知地PM、鵜飼PM、中島(達)PM、中島(秀)PMらと合同で公開キックオフミーティングを開催した.すべての発表を参加者全員が聞き,さまざまな分野の開発を聴けたことは,開発者にとっても,PMにとってもよい刺激となった.
 2004年11月22〜23日には,つくば国際会議場にて,当プロジェクトメンバーによる中間発表会(非公開)を行った.コメンテータとして,新城靖氏(筑波大学助教授),阿部洋丈氏(科学技術振興機構研究員)の出席を得た.また,招待講演として登大遊氏(筑波大学情報学類)にソフトイーサの次期バージョンの話をして頂いた.1人当たり40分の時間をとり,発表と質疑応答をじっくりと行い,専門的な突っ込んだ議論も数多く行った.
 2004年2月11〜12日には,東京国際フォーラムにて,キックオフミーティングと同じPMのメンバー達と,公開成果発表会を行った.いずれの開発者も,高い達成度を示していたことは喜ばしいことであった.
 基盤ソフトウェアは,派手さはあまりなく,地道な分野であり,また,日本が米国に対して遅れをとっているとも言われる分野である.今回採択した開発者は類い希な開発力を有している者が多く,今後の日本の基盤ソフトウェアの発展に明るい兆しを抱くことができた.



2.プロジェクト採択時の評価(全体)


 当PMは,募集時の説明において,基盤ソフトウェア開発を中心に募集することを明記した.これまでのソフトウェア開発の実績が十分にあり,限られた時間でのソフトウェア開発を達する見込みが十分にあることを重要な要件とした.新規性と有用性が共にあり,実用に供することができると思われるものを高く評価するようにした.書類審査の後,予想採択件数の2倍程度の候補についてヒヤリングを行い,計画のプレゼンテーションをやって頂き,疑問点について質問させていただいた.そのときに,今後の応募に役立つようなコメントがあれば伝えるようにした.
 住井氏の提案は,ソースコードを読まれること,教育を目的としてプログラミング言語処理系を開発するというもので,「未踏」の中では珍しい提案であろう.二千行程度のソースコードでありながら,ある程度複雑なプログラムを記述・処理でき,かつ,実用的な速度で実行できるコードを生成するというプランは,未踏の名にふさわしいチャレンジであると思われた.
 近藤氏は,既に「未踏」の経験者であるが,既に開発したブラウザLunascapeが既に数十万人のダウンロード数を有すること,そして実用性を狙ったLunascape2の開発を目指していることを勘案すると,「未踏」で継続してサポートすべき提案であると思われた.
 井上氏の提案は,P2Pソフトウェアとバージョン管理ソフトウェアsubversionを連携させるというもので,まさに「未踏」というべき,新しい領域のソフトウェア開発であると考えられた.自身も設立者の一人である現所属企業,および,前所属企業で,実用P2Pソフトウェアの開発に携わってきた実績を考えると,目標を達成できる可能性は十分にあるものと判断できた.
 奥村氏の開発は,OSレベルでネットワーク・トラフィックを制御するソフトウェアの開発であり,既にいくつもの国際会議,国際論文誌において論文発表を行い,FreeBSD上でのソフトウェアが既に稼働していることを考えると,疑念なく,当PMがサポートすべきプロジェクトであると評価できた.
 西澤氏は,今回の開発者の中で最も若い開発者である.豊富な開発経験を有するとは言えないが,これまでに開発したソフトウェアと国際会議論文の内容を拝見すると,実力は十分にあると考えられた.開発を目指すソフトウェアは,デバッグが難しい分散ソフトウェアのテスト環境に関するものであり,それをアスペクト指向という新しいソフトウェア技術を用いて構築しようとしており,「未踏」の名に値する開発であると判断した.



3.プロジェクト終了時の評価


 今年度は,重量級の開発が多かったというのが率直な印象である.彼らのような有能な開発者がいることを考えると,日本の基盤ソフトウェア分野の将来にも期待すべきものがあると感じられ,嬉しい限りである.
 住井氏は,開発時に公約した,実装の簡潔性,良質のコード生成,自明でないアプリケーションの記述,の三点を満たすことに成功した.また,ドキュメントも十分に用意した.ソフトウェアコミュニティの大きな財産となりうる開発ではないかと思う.
 井上氏は,P2P技術とバージョン管理ソフトウェアsubversionとを融合させるソフトウェア開発を行い,社内での利用に供するレベルのソフトウェア開発に成功した.グループによるソフトウェア開発を想定用途としている.現行のサーバ形式のバージョン管理とグループによるソフトウェア開発に比べてどれくらいのメリットを供せるのか,今後の行方に期待したい.
 奥村氏の開発では,「未踏」以前はFreeBSD4のみで稼働していたソフトウェアが,「未踏」での開発により,多くのプラットフォームで稼働し,マルチプラットフォームで動作する唯一の汎用トラフィック制御機構の立場を得ることに成功している.また,Apache等の対応モジュールの開発も行い,普及への道筋は確かに付けられたといえよう.Netniceの基本部分がOSカーネル内で動作するソフトウェアであること,開発期間はそう長くないことを考えると,驚嘆的といってよい.
 西澤氏は,分散ソフトウェアのテスト環境の開発を目指し,ある程度の開発を成し遂げた.少々のバグが残っているようであるが,ある程度の利用に供するレベルに達しているようである.学術研究でもあるため,言語処理系を作ることを含むような,難易度の高いソフトウェアとなっているが,今後,完成度を高め,実用化していくことを期待したい.


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