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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 鵜飼 文敏 (日本ヒューレット・パッカード株式会社 ヒューレットパッカード研究所 主幹研究員)



1.プロジェクト全体の概要

 近年、GNU/Linuxシステムの普及とともにオープンソースソフトウェアに注目があつまっているが、デスクトップ環境のように、ソフトウェアに詳しくない人が手軽に使うためにはまだまだ克服すべきところが残っているというのが現状である。セキュリティへの関心も高まってきているが、ウィルスなどによる広域的な被害をふせぐといった意味からも単一のシステムではなく多様なシステムを使うことも求められている。しかしながら、現状ではオープンソースソフトウェアからなるシステムをプロプライエタリなソフトウェアの代替としても利用できる水準にはまだ達しているとはいいがたい分野もまだ多い。

 本プロジェクトでは、このような状況を改善していくために、デスクトップ環境もしくはそれを支えるシステム・環境等を改善・改革していくオープンソースソフトウェア、Free Softwareの開発することを目的とした。日本語を扱うデスクトップ環境の発展に寄与できるよう、本プロジェクトの直接の成果物が普及し広く使われるようになるだけにとどまらず、本プロジェクトの開発に影響され、これらを利用したり、これらを越えるようなオープンソースプロジェクトがうまれるなどして、日本におけるオープンソース開発が本プロジェクトをきっかけに活発になっていくことを期待している。

 本事業において開発されたソフトウェアは、オープンソースソフトウェアとしてはまだまだ第一歩を踏みだした程度である。ソフトウェアを公開しそれを多くのユーザに使ってもらい、そのフィードバックをうけ改良していくというプロセスをうまくまわしていくことがオープンソースソフトウェアで成功をおさめるための重要なポイントである。本事業期間内では、ソースコードを公開して開発者コミュニティを形成するには至らなかったが、この事業で開発された成果が今後のオープンソースコミュニティで有効に利用されていくことを期待したい。



2.プロジェクト採択時の評価(全体)


 現在、英語を扱う場合に比べて、オープンソースソフトウェアで日本語を扱おうとすると見劣りする場合が多く、それを改善していこうという努力もまだまだ不足しているように思える。

 今回はそのような状況を改善していくために、日本語を扱うデスクトップ環境もしくはそれを支えるシステム・環境等を改善・改革していくオープンソースソフトウェア、Free Softwareの開発を公募した。アプリケーションに限らずライブラリなどの開発でもよいものとした。このような公募に対し全部で6件の応募があった。審査の対象として多くはなかったので基本的にプロジェクトマネージャ一人で、応募書類や面接等で採否を判断した。

 本事業では実質的には半年ほどの開発期間しかないので、この期間にユーザが動かせるまでのシステムを開発し、これを元にこの後オープンソースソフトウェアとして発展していってもらうことを望んだ。直接的な開発成果だけでなく、その一部となる他にも利用可能なライブラリの開発や、開発にあたって副産物となる他のソフトウェアへの改善などができそうかどうかという観点も加味した。昨年度と同じ開発者の募集もあったが、今回の応募者が少なかったこともあり、また昨年度の開発実績を考慮して、採択したプロジェクトもあった。

 今回の公募では、デスクトップ環境のためのオープンソースソフトウェアの開発を募集したが、応募は6件と少なかった。欧米では、GNU/Linuxのデスクトップ環境はかなり整備されてきているが、日本語を扱うにあたってはまだまだ問題が多いが、それを改善していこうという人があまりでてこなかったのが残念である。日本では、オープンソースソフトウェアを使っている人でもデスクトップ環境としてはWindowsやMac OS/Xなどのproprietary OSで満足してしまっている人が多いためだろうか。

 結果として採択したのは以下の4件のプロジェクトである。
 ・ 3D-tcpdump: 3次元ネットワークブラウザ
 ・ どこからともなくブートするOS
 ・ マルチメディアアプリケーション用高品位組版ライブラリ
 ・ S式表現を利用したプレゼンテーションツールの作成




3.プロジェクト終了時の評価


 具体的な設計方針などや開発方向を決めるまでに時間がかかったために、プロジェクトの開発期間内の早いうちに公開することができたものがなかった。そのために実際の利用者からの貢献・フィードバックをもとにソフトウェアを改善していくというプロセスをはじめることができなかった。
 3D-tcpdumpは、目的通りネットワークに詳しくない人にもトラフィックの状況が理解できるようなソフトウェアを開発できた。目標通りの成果物を開発することはできたと言えるだろう。カンファレンスなどで発表するなどして積極的に情報発信しているが、肝心のソフトウェア自体を期間中に公開するには至らなかった。
 どこからともなくブートするOSは、当初の予定であったP2Pを使いネットワーク上にちらばっているOSをブートするということを実現することはできなかったが、Internetからネットワークブートするために必要とするための条件をクリアするために、さまざまな計測をおこない、どの手法を使えばどれくらい実用的かということを示すことができた。
 マルチメディアアプリケーション用高品位組版ライブラリに関しては、SDL_Pangoおよびフォントサブセット化ツールの公開はできたが、Pangoの日本語拡張など独自拡張にとどまり、目標すべての実装に至らずまたPangoにとりこまれるまでになっていない。
 S式表現を利用したプレゼンテーションツールの作成に関しては、最新のベクターグラフィックスライブラリCairoを利用して、新しいプレゼンテーションツールを作成しようという意欲はあったが、それ以外の点で革新的なアイディアを提供したわけでも、本期間内に非常に実用的で多くのユーザを獲得できたソフトウェアが開発できたわけでもなかったと言える。

 未踏事業の期間は実質半年という短い期間であるため、この期間はある程度集中的に開発に力を注ぎ、重要な機能を実現していくことが期待されているが、今回採択したプロジェクトではこの期間内にどれくらいゴールにむけて進むことができたのだろうか。いずれのプロジェクトも未踏期間だけで終わらず、これからも開発継続していき、今回開発したソフトウェアをより発展していってもらいたい。


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