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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

  原田 康徳 (NTT コミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)



2.採択者氏名


 代表者

安斎 利洋(フリー)

共同開発者

中村 理恵子(フリー)



3.プロジェクト管理組織


  NTT 出版株式会社



4.委託金支払額


  8,440,740



5.テーマ名


  遺伝的ペイントシステムの開発



6.関連Webサイト


  http://www.renga.com/



7.テーマ概要


 
遺伝的ペインティングは、ペイント過程の一部を固定的な状態ではなく、変更・交換可能な状態とする絵画の描き方で、作品はひとつでありながら、無数のバリエーションをパラレルに保持する新しい創作様式である。遺伝的ペイントシステムは、新しいアートテクニックとしての遺伝的ペインティングの考え方を提唱し、普及させるためのソフトウェアである。
 遺伝的ペイントシステムは、通常のペイントシステムと同じように筆などのツールで絵を描き進めます。描画の全過程はメモリー上に蓄積され、途中のどの部分も変更が可能である。ここで、加えた変更をパラレルに共存させることができます。並存し、重ねあわされた要素は、組み合わせによって無数のバリエーションを生み出す。いわば生物の遺伝子における個体差を定義しながら、種の遺伝子を作っていくのが遺伝的ペインティングである。
 遺伝的ペインティングは、自分の作品でありながら、自分の予想を超える結果を生み出すことができ、画家やグラフィックデザイナーの新しい表現領域を切り開く。また遺伝的ペイントシステムは、共通する型をもつ作品を交配することによって、コラボレーション・ツールになり、美術教育や総合学習の実践にも役立つだろう。多数のオリジナル作品を生成し、アートに新しい市場モデルを提示できる。



8.採択理由

 

 以前,提案者のペイントシステムを使わせてもらったことがあるが,それをより進化させるという提案.そのシステム自身も独特なアイデアのものであったが,これほど深い考えの上に作られたものであることを,申請書を読んで,はじめて知りました.

 申請書では,小学生が使えるくらいのレベルにすることを目標の一つにあげているが,これまでのペイントとは相当異なる概念をどれくらい直感的にもって行くか,課題は大きい.


9.開発目標


 まず,少ないメモリーのコンピュータ上で,非常に多くの画像を様々な解像度で表示できるようにするための基礎的なライブラリを整理する.その上に交配を可能とする絵を部品で表現するデータ構造を構築し,それをペイントシステムのUIによって操作する.




10.進捗概要


 基礎的なライブラリの構築に前半の時間がとられたため,その後のペイントシステムは駆け足で作らざるを得なかった.しかし,途中で多くのユーザに使ってもらう機会を得,改良を重ねることができた.



11.成果


 以下が作成されたペイントシステムのスクリーンショットである.

 

 

 ここで,普通のペイントシステムと大きく異なるのは,コンマとピリオドというボタンの導入である.文章を作るように,絵を描いてゆく.絵の部品はコンマとピリオドで文節化され,他の部品と交配してゆく.交配の過程は,力学シミュレーションによってアニメーション表示され,それを見ているだけで,次々と新しい絵の誕生を楽しむことができる.
 美術系の学生が30分程度の講習の後,オリジナルの作品集を作ることができた.この点からも,このシステムが特定の作家だけを支援するものではなく,作家に中立なシステムであることがうかがえる.



12.プロジェクト評価


 やはりプロジェクト全体を通して,時間配分はもう少しうまくやるべきであろう.これはPMの責任でもあるのだが,開発の期間は思ったよりも短いということを,これからの開発者は十分肝に銘じるべきであろう.特にユーザからのフィードバックを得て,それをソフトウェアに反映させるには,かなりの時間が必要であるから,実に早い時期にソフトウェアが出来ていないと間に合わない.
 それにしても開発者の安斎氏はさすがの瞬発力というか,命を削るようなプログラミングというか,後半の挽回は見事であった.形が見えてからのソフトウェアの更新もすさまじいものがあった.一つには前半でじっくりと作った基礎的なライブラリの効果がかなり効いていると思われる.



13.今後の課題


 まずシステムとして,絵を文章のように描くという行為をもっと分かりやすいインタフェースで提供できないかどうか,今後の改良が必要な部分であろう.
 このシステムをどのようにして世の中に伝えてゆくのか,非常に楽しみではある.


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