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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 中島 秀之 (公立はこだて未来大学 学長)



2.採択者氏名


 代表者

光藤 雄一(電気通信大学 大学院情報システム学研究科)

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


 株式会社創夢



4.委託金支払額


 5,882,000円



5.テーマ名


 Real Eye Communicator システムの開発



6.関連Webサイト


 http://realeyecom.web.infoseek.co.jp/



7.テーマ概要


 ユビキタスコンピューティング環境および、実世界環境の操作環境を向上させることを目標とする。実世界に多数の計算機が存在する環境では、現在のGUIシステムでは有効なインタラクションが行えない可能性がある。そこで開発者らは現行のGUIシステムを拡張し、ユーザの視野そのものに情報を重畳させる仕組みを提案した。


 コンピュータシステムと実世界との自然なインタフェースの一つとして、従来視線検出などに用いられていたアイカメラを、視線そのものではなく視野内にある光点の検出に用いるシステムを構築する。視野内の対象物(光点)を指差すことによって隠す行為を、そのまま物体の指示としてシステムに伝達する仕組みは斬新であり、また人間にとっても自然なものである。


 アイカメラを装着しなければならないという不便さは相変わらず残るものの、視線検出に比べればキャリブレーションなどの手間もなく、装着位置についての自由度も高い。



8.採択理由


 環境内の対象物に設置した光源に情報を載せ,それを視線検出用のアイカメラで取得するという提案である.類似の提案もあった中で本件を採用したのは,アイカメラの利用の仕方がユニークで良いと思うからである.また実際に使いたいといっているユーザが想定されている点も評価している.是非実用になるシステムを構築してほしい.



9.開発目標


 従来システムではたとえばCCDの画像を利用して実世界認識を行っており、何らかのオブジェクトを識別するためには、実世界の認識技術ならびにそれとネットワーク上の情報との対応をとるという二つの仕組みが必要であった。これらは、大量の計算機資源を必要とするため、携帯型の計算機には大きな負担となっており、ID タグや2次元バーコードの使用によりこれらを簡便化する仕組みがいくつか提案されている。

 

 本プロジェクトではユーザの眼球を介して光通信を行うことで、実世界認識技術やネットワークアドレスの解決などを行うことなく、対象物と直接情報交換を可能にする仕組みを構築する。光通信そのものはハードウェア的に行えばよいため、特に計算機資源が必要にはならない。

 

 具体的には,現実環境にLED などの光点を用意し、各光点からは独自のデータ(対象のID のみならず,様々なデータやプログラムを送信することが可能)を発信する。ユーザはこの光点を気にする必要はなく、単に実世界の対象物として眺めていればよい。システムはユーザの眼球表面で反射するデータをアイカメラで受信する。位置情報は不要である。ユーザの視野にある複数のデータが同時に受信されることになる。もし、ユーザが実世界の対象を指で指し示し、隠す(自分に見えないようにする)動作をすると、そのデータだけが受信されなくなることにより、何を指示したかをシステムに伝えることができる。




10.進捗概要


 実際にプロジェクトを進行させてゆくにつれて、全く新規のコンセプトを持つ光通信システムの開発が必要であることが判明した。例えば、眼球からの光信号の反射の受光を考えても、それが可能な計測器が市販されておらず、自作の必要性が発生した。計測器を設計する際にも、どの程度の光量を計測すればよいのか見当がつかないし、通信に利用される光の変調周波数が高速であるため、さらに条件は厳しくなる。単に眼球の反射による減衰に負けないだけの増幅率を備えた光受信機を作成するだけではシステムの大型化などを招いてしまうため、眼球近辺の光学的状況を計測し、それに対応する受光システムを作成する必要性も認識された。

 

 以上のような理由により、プロジェクトの大部分はハードウェアの設計と実装に費やされることとなり、初期目標であったReal Eye Communicator を利用した実世界インタラクションシステムの実装と実証には至らなかった。

 

 しかしながら、安易な目標達成に走らず、必要技術を掘り下げたことにより将来の飛躍の基盤となる様々な知見が得られた。




11.成果


 プロジェクトで構築されたシステムの特徴は以下の3点であり、これらを実現できたことが最大の成果である。

 

 1) ユーザの現実視野そのものにコンピュータが理解可能な形でのデータを添付可能にしたこと

 

 2) 光通信機の高速通信性と、CCDカメラの空間分解能の利点を同時に備えるシステムを開発したこと

 

 3) 構造が簡潔であること

 

 光通信に関しては、光電流の増幅機能の付加によって受光距離が飛躍的に伸び、実用上十分と考えられる10mが実現されている。開発前は近距離でシステムの動作を観察しなければならなかったが、実用上充分な距離でこれらを観察することが可能となったため、従来仮説として提唱していた現象に信頼性を付与するデータが得られるなど、大きな貢献をした。このデータについては、興味深い振る舞いが観察されているおり、特許の取得に結びつくものである。




12.プロジェクト評価


 ハードウェア製作に時間を取られ、デモシステムが完成しなかったのは残念である。

 しかしながら、逆にデモシステムに囚われることなく、基本的な事項まで掘り下げて研究・開発を行った姿勢は評価できる。必ず将来につながるものであると確信している。

 全体的には未踏プロジェクトとして十分な成果を挙げているし、特許につながる成果も得られている。

 なお、本プロジェクトの一部は2004 年11 月10 日の情報処理学会UBI 第6 回研究発表会にて「Real Eye Communicator: ユーザの角膜を利用した光通信システム」という題で発表され、優秀論文(学生の部)を獲得したことを追記しておく。




13.今後の課題


 是非総合的なシステムとしてのプロトタイプを構築して欲しい。


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