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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 長尾 確 (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)



2.採択者氏名


 代表者

中嶋 謙互(コミュニティエンジン株式会社 代表取締役)

共同開発者

寺岡 宏彰(株式会社ワイヤーアクション 取締役副社長)

小野 和俊(株式会社アプレッソ 代表取締役副社長)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社リオ



4.委託金支払額


 7,048,503円



5.テーマ名


 XM支援ツール Galapagos の開発



6.関連Webサイト


 http://www.extrememeeting.org/



7.テーマ概要


 XM (eXtreme Meeting)とは、効率のよい会議をするためのプラクティスを集めたものである。本プロジェクトでは、XM を実際のオフィスなどにおいて実践していくために役立つツールを「議事録ドリブンの会議」を中心コンセプトとして開発することが目標である。
 XM においてもっとも重要なプラクティスは、議事録をあるフォーマットにしたがって完成させることを会議の終了であると見なして会議を進行させる事である。
 このことによって、
 1) 議事録の質を維持できる
 2) 議事録のライフサイクルを管理できる
 3) 熟練した議長を必要としない
 4) 参加者がビジョンを共有しやすくなる
 といったような利点がある。
 本プロジェクトでは、XMを実際の企業における仕事現場で実践するためのツールとして Galapagos というソフトウェアを開発した。このソフトウェアは、会議中に議事録を共同作成するためのWindows用統合環境である「リッチクライアント」と、会議中に作成した議事録をDBに保管して会議していないときに操作できるようにするためのWeb上のグループウェアアプリケーションの二つの部分からなる。



8.採択理由


 会議というものは一般につまらないものである。提案されているXM(eXtreme Meeting)は会議のあり方に革命をもたらすことを予感させる。複数の人間が知恵を出し合って意思決定や計画立案を行うための支援ツールは今後も重要性を増していくだろう。申請者が日常的にXMを(簡易的なツールを利用して)実践している点や、プロジェクト実施期間以降にもさらなる展開が期待できる点も考慮して、採択とする。
 ただし、今回はより高度な機能を持ったツールの試作と実証実験に特化して、本格的なシステム開発は行わないものとする。



9.開発目標


 会議は組織における意思決定の基礎になる活動である。その活動を情報ツールによって強力にアシストすることで、組織をより進化的・分散的なものに変化させることが可能である。こうしてXMは最終的に組織の変革、変質を迫る。丁度 eXtreme Programming がそうであるように、Galapagos 開発プロジェクトの目標は、会議のプロセスを変革することを通して、組織そのもの、最終的には最大の組織である社会全体の変革を迫ることである。




10.進捗概要


 2005年2月26日の最終報告の時点では、リッチクライアントとサーバーのそれぞれのソフトウェアに最低限の機能を実装し、実際に本プロジェクトの進行管理に使ったほか、共同開発メンバーが所属している会社組織で実際にテスト使用するところまで実現されている。




11.成果


 本プロジェクトでは以下のものを開発した。
  1. 議事録ファイル形式 XMML (eXtremeMeeting Markup Language)
  2. 議事録編集用リッチクライアント
  3. 議事録管理用グループウェア
 以下では、それぞれについて、説明を加える。

 1.議事録ファイル形式 XMML
 XMMLは、eXtremeMeeting Markup Language の略である。このマークアップ言語は、XMの核となる議事録のデータ保存形式であり、以下に示す議事録の5つのライフサイクルと、すべての発言の意味づけ(トピック、ToDo、結論など)、参加者の情報、会議の諸情報(ゴール、タイトル、場所など)に対応したメタデータの保存形式である。

 Galapagosにおいて、議事録は、次に示す、5つのphaseのうちのどれかの状態になっている。
 1. generated (生成済み)
 自動あるいは手動で作られた直後の状態で、人間の手による情報追加がされていない状態。これに対して人間が情報を追加していく。この状態は、正式な議事録ではなく、準備段階である。
 2. initialized (初期化済み)
 議事録に人間がゴールや場所などの情報を追加し、いつでも会議ができるようになった状態。議事録がこの状態になると、会議の内容が決まったので、会議に来てくださいという意味の、お知らせのメールがサーバーから自動的に送られる。
 3. started (会議開始状態)
 会議中の状態。プロジェクタに投影して、リッチクライアントを使って編集しているときはこの状態になっている。
 4. ended (会議終了状態)
 会議が終了して、誤字脱字を修正している状態。
 5. frozen (凍結済み)
 議事録が完成し、内容が確定したという意味。議事録がこの状態になると、サーバーによって、自動的に、会議の結果のメールが送信される。と同時に、自動的に、次の会議の情報に基いて、次回用議事録がgenerateされる。(generated状態になる)。
 次に説明するリッチクライアントと議事録管理用グループウェアは、XMMLをベースに実装されている。開発中においては、XMMLの仕様は、RelaxNGのスキーマ定義ファイルを用いて定義された。XMLタグの種類はおよそ200種類である。

 2.議事録編集用リッチクライアント

 議事録編集用リッチクライアントは、会議中に、プロジェクタで投影しながら、会議の参加者の共同注視のもと使われることを前提としたWindows用ソフトウェアである。リッチクライアントプログラムは、さらに二つの部分に分けて開発された。テキストエディタおよびフレーム部分(IDE部分、後述するWebアプリとの通信部分)である。現時点での行数は、二つの部分の合計で約19000行のC#となっている。
 エディタの実装においては、会議中に使う部分なので、ストレスなく議事録を速記できるように、できるだけキーボード志向でストレスなく高速入力できること、動作が軽快であること、色の変化など直感的でイメージしやすいインタフェースであること、結論やToDoなどの検索が会議中にやりやすいこと、オフラインでも過不足なく使えることなどに力点が置かれている。
 このリッチクライアントプログラムが通常のエディタと大きく異なる点として、議事録のライフサイクルをサポートしている点と、会議のスタートウィザード、エンドウィザードを備えている点である。これはXMMLをベースとした議事録のライフサイクルを回していくための必須機能であり、本プログラムにまったく独自の機能となっている。
 図4.1にこのリッチクライアントの画面例を示す。

 

図4.1議事録編集用リッチクライアント

 

 3.議事録管理用グループウェア

 開発したソフトウェアのもうひとつの核となるのは、Webグループウェアアプリケーション部分である。Webアプリケーション部分も、操作インタフェース部分と、リッチクライアントとのXMLRPC通信部分の二つの部分に分けることができる。プロジェクトview/ユーザーviewの切りかえ、ToDoや結論の高速閲覧/操作/検索、軽快な動作、リッチクライアントとの自然な連携操作などに力点を置いて開発した。
 このWebアプリケーションが、通常のWebグループウェアと異なる点は、XMMLを作成するツールであるリッチクライアントからの情報入力によって、主に状態を変化させていく点である。もちろんWebから純粋に情報を入力できるが、最も重要な情報は、会議終了時などにリッチクライアントから送られてくる議事録に含まれるメタデータ付きのコンテンツである。この議事録に含まれるToDoや結論、トピックが、逐一データベースに蓄積されていくのがこのアプリケーションの特徴である。
 図4.2にこのWebグループウェアアプリケーションの画面例を示す。


図4.2議事録管理用グループウェア



12.プロジェクト評価


 まず、このプロジェクトの着想が非常によいと思われる。情報技術によって会議を効率化する試みはこれまでにも様々なものが行われてきたが、その技術を開発している人間に、理想的な会議に対する明確なポリシーが欠けていたため革新的な成果は得られていなかった。本プロジェクトの長所は開発者自身が(少なくともプロジェクト遂行のための意思決定における)理想的な会議のあり方を体得していることである。そのため、実現すべき機能や開発すべきシステムのイメージが極めて明確になっていたことがプロジェクトの成果を着実なものにしたといえるだろう。現時点ですべてのポリシーがサポートされているとは言い難いが、開発者のセンスのよさによってバランスよくまとめられていると思われる。



13.今後の課題


 報告書によると開発者は今回のプロジェクトでやりたいことの5%程度しか実現できていないと述べている。「プロジェクトのメンバーが、人間同士の直接の物理コミュニケーションに依存せず、議事録やデータベースに保存されているメタデータなどの、デジタル化された情報に基づいて行動しながらも効率よく成果を上げられるようにする」という大局的な目標のために今後も継続的に努力してくれることを期待する。



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