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2004年度第1回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

  長尾 確 (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)



2.採択者氏名


 代表者

坂本 竜基(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 研究員)

共同開発者

伊藤 禎宣(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 メディア情報科学研究所 研究員)



3.プロジェクト管理組織


  株式会社 国際電気通信基礎技術研究所



4.委託金支払額


  6,197,715



5.テーマ名


  メタデータの豊饒化にむけた公共的アノテーションシステム



6.関連Webサイト


 http://www.annotation.jp/



7.テーマ概要


 
Web利用者の膨大なマンパワーを背景とする、人間が付与したアノテーションの流通促進によるメタデータの豊饒化を目標として掲げ、そのための基盤となる公共的アノテーションシステムとして、Web上のリソースに対するアノテーション付与インタフェースとアノテーションの再利用を目的とする管理サーバーを開発した。
 具体的には、以下の三点に力点を置いた実装を行った。
 1.アノテーションの入出力インタフェース機能
 2. アノテーション管理サーバー
 3. メタデータ連携の応用システム




8.採択理由

 

 コンテンツの意味的な拡張のためにアノテーション技術は不可欠である。 blog とアノテーション RDF(RSS の拡張 ) の組み合わせは新規のアイディアとは言い難いが、アノテーションを単なるコメントとして用いるのではなく、コンテンツの意味を考慮した加工に新しい可能性をもたらす(具体的には、文書の漫画要約など)点などを考慮して採択とする。ただし、今回は開発期間を考慮して、特定のプラットフォームに限定し、アノテーションの応用に重点を置いた研究開発に特化してもらう。



9.開発目標


 本プロジェクトは、Web利用者の膨大なマンパワーを背景としたアノテーション付きメタデータの流通を目標として掲げ、そのための基盤となる公共的アノテーションシステムの開発を目的とした。アノテータの視点から記されたメタデータは、既存メタデータだけでは叶えられない新しいサービスやコミュニケーション形態を生み出す可能性を秘めており、そのプラットフォームとなる本システムの社会的意義は大きい。この社会的意義を増大させるため、本プロジェクトは、膨大な量のアノテーションの流通、つまり相当数の利用者獲得を目指した設計・開発としている。具体的には、Web上で任意に更新されるHTMLコンテンツへのアノテーション機能、アノテーション履歴の管理機能、を実装した。これにより、コンテンツ作成者とアノテータ間で情報を相互参照が可能になり、 Web上で情報の豊饒化に繋げることができると考えられる。
 本プロジェクトの大局的目標は、機械的に作成されたメタデータに様々な人間の思考と視点を埋め込み、コミュニティメンバーのパースペクティブ性をもったメタデータとして再流通させることにある。この目標に向け、コンテンツ閲覧者の膨大なマンパワーを利用してアノテーション情報を大量に発生させる。また、大量に発生したアノテーション情報を流通・再活用させるプラットフォームを提供する。本目標達成の鍵は、継続的利用者の総数にあると考えられる。本プロジェクトでは、システム設置管理者、アノテーション入力者の両者に互恵的利益がある仕組みにすることで多くの利用者の獲得を目指す。



10.進捗概要


 本プロジェクトにおいて開発された公共的アノテーションシステムは「annpoly」と名づけられた。本システムは、Webサーバーに設置され、リソース原著者がHTMLに埋め込んだリンクから呼び出される。システムは、呼び出し元のHTMLリソースを読み込み、アノテーション入出力インタフェースを実現するJavaScriptを埋め込んで再発行する。JavaScriptはほとんどのWebブラウザが対応するため、ユーザは新たなソフトウェアのインストールといった手間を掛けずに利用できる。ユーザにより入力されたアノテーションは、アノテーション管理サーバーに同JavaScriptを介して送信、蓄積される。蓄積されたアノテーションは、入出力インタフェースによるアノテーション表示のほか、応用システムから参照され、要約表示などの用途に用いられる。



11.成果


 以下では、本プロジェクトの成果である、1.アノテーションの入出力インタフェース、2. アノテーション管理サーバー、3. メタデータ連携の応用システムについて順に説明する。

 1.アノテーションの入出力インタフェース

 本機能は、Web CMSを利用する原著者の意思にもとづき、アノテーションを付記したい、もしくは付記して貰いたいコンテンツのCMSに組み込む形で設置される。
 原著者は、CMSのテンプレートやWebリソースにアノテーション管理CGIを呼び出すタグを一行挿入するという簡単な作業だけでシステムの利用を開始することができる。図2.1にWeb CMSに挿入するタグと、その表示例を示す。

図2.1 ANNPOLYモードタグと表示例

 

 さらに、入出力の表現様式や意味定義をテンプレートで任意に設定する機能を実現した。これにより、原著者は、アノテーションの表現形式を、付箋形式や投票形式にするといった変更のほか、アノテーション入力時に、例えば「自分のためのメモ」「原著者へのメッセージ」といったアノテーションプロパティを設定可能にして、定式化されたアノテータ意図を入力可能とすることができる。図2.2にテンプレートによるアノテーション入力および表現の変更例を示す。図2.2Aはいわゆる付箋形式で通常のアノテーションを実現したものである。入力者は、自由なコメントの入力や、プロパティを設定したアノテーションの入力ができる。図2.2Bは投票形式による入力と表示を実現したものである。アイコンで示されたボタンを押すことで、リソースへの賛意を示す、といったより簡便な利用が可能である。このように、汎用的に利用可能な形式や、投票のような比較的特定の目的で効果を発揮する形式を、テンプレートの記述により実現できるのは本システムの大きな特徴の一つである。

 


図2.2 XHTMLテンプレートによる入出力インタフェースの設定例

 

 利用者は、専用ソフトやブラウザ用プラグインなどを要求されない。一般的なWebブラウザでCMSページにアクセスし、原著者により埋め込まれたタグ(例: )をクリックすることで、本システムを利用することができる。アノテーション利用モードでは、任意のテキスト領域を選択し、テンプレートによって用意された入力形式で容易にアノテーションを付与することができる。新規アノテーションの付与は、対象文字列の選択とアノテーション付与JavaScriptの実行によって行われる。図2.3にアノテーションを新規に貼り付ける時のイメージを示す。

 

図2.3 アノテーションの新規付与

 

 

 2.アノテーション管理サーバー

図2.4 システム構成図

 

 Annpolyのシステムアーキテクチャを図2.4に示す。アノテーション管理サーバー「annotation.php」はPHPで記述されたCGIプログラムである。原著者やサービス提供者は、自身が持つWebサーバーにこれを設置して運用することができる。このCGIは、原著者等によりリソースに埋め込まれたタグから呼び出され、アノテーション入出力インタフェースを実現するJavascriptとDOMをリソースに内包したページを出力する。入出力インタフェースの表現形式及び意味定義を、設置者によって準備されたテンプレートに沿って構築するため、本サーバーはテンプレートの解釈エンジンを持つ。アノテータによる各入力項目は、対象URI及び選択文字列に対するメタデータとして、入出力インタフェースのJavascriptを介して、管理サーバーに蓄積される。蓄積されたメタデータは、設置者によるテンプレートに従って、リソースに付加した表現形式で出力される。あるいは、メタデータ連携の応用システムから自由に呼び出して利用することができる。

 

 3.メタデータとの連携機能

 アノテーション管理サーバーのアノテーション群とアノテーション付与先の原著メタデータを利用して原著をトランスコーディングするためのAPI機能を実装した。また、トランスコーディングのサービスプログラムとして、以下の各機能を実装した。
  a. 文への民意的なDOI(Degree Of Interest)に基づく要約的表示機能
  b. 投票形式インタフェースを用いた、投票結果に応じた文の強調表示機能
  c. アノテーションプロパティを用いた記事のヒトコマ漫画的表現
  d. アノテーションの入力時系列に沿った段階的表示機能

 機能aの表示例を図2.5に示す。アノテーション行為を興味対象の表明と捉えて、その件数にもとづき、一文(。や.で区切る)を強調表示する。これにより、長文の中から興味が集中する箇所をとばし読みするといった要求に応えることができる。
 機能bの表示例は図2.2Bで示されている。
 機能cの表示例を図2.6に示す。リソースのメタデータや、アノテーションプロパティが選択可能なテンプレートによるアノテーション入力を用いて、リソースの評価や注目点をアイコニックに表現する。

 


図2.5 とばし読み用強調表示の例

 

 

図2.6 記事の漫画的表現の例

 

 尚、本システムはhttp://www.annotation.jp/で試験的に公開されている。



12.プロジェクト評価


 プロジェクトは着実に遂行され、短期的な目標はほぼ達成されたといえるだろう。実装されたシステムは、そのシンプルさゆえに多くの人に受け入れられるものとなる可能性がある。この短期間によくがんばったと思う。



13.今後の課題


 大量のアノテーション情報を流通・再活用させるプラットフォームを提供するという将来的な目標を達成するために、次にやるべきことは、開発したシステムの実運用によって、実際に多くのユーザを獲得していくことである。さらに、アノテーションをよる高度な目的(意味的な検索や要約)に応用するための手段も提供する必要がある。今後の継続的な努力に期待する。


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