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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース) 成果評価報告(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 竹内 郁雄



1.事業全体について

 

 PM は平成 12 13 年度の未踏ソフトウェア創造事業 ( 以下 , 随時「未踏本ちゃん」と愛称する ) のプロジェクトマネージャを努め , 力がありながら , きちんと評価されたり , 助成されてこなかったような方々の手助けをしてきた [ 参考文献 : 竹内郁雄 , 未踏ソフトウェア創造事業とは 組織力から個人の才能へ , 情報処理 , Vol.43, No.12, pp.1353-1361, 2002].

 

 平成 14 年度の報告書にも書いたように , 日本のソフトウェア産業の力あるいはソフトウェア創造力を根底から底上げしようとするならば , もっと若い , いまだに誰も知らなかったような人々を早い段階で発掘し , 彼らに自信をつけさせ , やる気を出してもらって , 次の日本のソフトウェア世代を背負ってもらうようにするべきである . ちょっと妙な喩えだが , 日本のサッカーが強くなったのは , サッカーの裾野を広げ , 高校生 , 中学生 , 小学生とどんどん子どものほうに , 指導と才能の発掘の努力を広げていったからである . それまでは , 子どものサッカー指導というのは技術を知らない指導者のスパルタ的訓練だけだった . これが , サッカーの面白さと奥深さを教える教育に変わったことが , ボディブローのように効いてきたのである .

 欧米に勝てないと勝手に決め込んでいるソフトウェアの分野も , 若いうちから , 才能のありそうな人にどんどん自信をつけてもらう , 包容力のある諸施策を実施すれば同じようなことになるに違いない . これは私の独りよがり的な考えであるが , まさに未踏ユースはこの考えにピタリと合致していた .

 未踏本ちゃんのサブの事業として始まった未踏ユースであるが , その性格をどうするかは , 結局やってみないとわからないようなところがあった . しかし , 平成 14 年度に得られたものは私にとって予想以上のものだった . 平成 14 年度の倍率は 42 件の応募中 23 件の採択だから 2 倍に満たないが , 採択した 23 件の中には本当に驚かされるレベルのものが多かった . 日本にも元気な若い連中がまだまだいるという思いを強くした .

 しかし , このような事業は 2 年目に真価を問われる . まさかとは思うが , 1 年目で未踏ユースで発掘すべき人材の大多数を発掘してしまったのではないかという不安もないではなかった . しかし , 未踏事業の認知度も上がっているはずであるし , 今年度は昨年度にも増して多数の応募がある . だから , もっと多くの人材が発掘できるであろうという期待のほうが大きかった .

 そのため , 平成 14 年度度に比べてむしろ「強気」に , 年齢上限を 2 歳引き下げて , 平成 15 4 1 日現在で 28 歳未満とした . 昨年度は 23 24 歳に非常にしっかりした人が多かったという経験もあった . また , 20 歳未満でも , というか 20 歳未満だからこそ , キラリと光る人がいた . なので , 年齢上限を下げても , 問題はないと判断した . このあたりの事情は平成 15 年度未踏ユースの公募につけた「 PM からのメッセージ」でも述べた .



2.応募状況と採択時の評価


  昨年度に比べて知名度が大幅に向上しているはずだから , もっと多数の応募があると思ったが昨年度とほとんど変わらない応募総数であった . 私にもその責任の一端はあるかもしれないが , もっと広報戦略を練る必要があった . もっとも , 最近になって少しずつ雑誌等での露出度は増えてきており , 今後に期待できるかもしれない .

 また , 今年度は未踏本ちゃんと ( 少し遅れていたが ) ほぼ同時期の公募であり , かつ重複申請が許されたので , 応募延べ総数に対する実質応募総数の計算が少々ややこしかった . 名目的な応募総数は 41 ( 事務局に届いた 44 件のうち , 3 件は未踏ユース内での同一人による重複申請なのでカウントしていない ) であり , 審査に入る前に 6 件は未踏本ちゃんのほうで採択が内定した . そのため , 実際に PM が書類審査をしたのは , 35 件である .

   昨年度同様 , 年齢に下限を設けなかったが , 中学生や高校生の応募はやはりゼロであった . また , 書類審査をした申請者の中で , IT 浪人あるいは IT フリーターは 1 , 大半が学生 , 院生であった . このほか個人事業 1 , 企業所属 3 件があった .

   今年度も未踏ユースの PM は私一人だったので , 応募テーマを絞らなかった . そのため , 応募は実に多様なテーマに分散していた . そのために私にとって門外漢的なものが多くなり , それなりに苦労することになったが , 逆に勉強させてもらったという余録もあった . この事情は昨年度と変わらない .

   さて , 書類審査対象とした 35 件の応募はレベルは昨年度とほぼ同程度であった . 強いて言えば , 平均的に見てちょっと小粒になったかなという印象もあったが , それはこちらが 2 年目で , 眼が慣れたというせいもあるかもしれない .

   事業としての目論見は 30 件程度の採択ということだったので , 実質 35 件の応募では明らかに倍率が低すぎる . しかし , 申請書のレベルが全体的にある程度高かったので , 見掛けほど倍率が低いわけではない . 20 25 件の採択が適切であろうと思われた .

ここでPM の審査基準を再度明らかにしておこう . 順不同で以下の項目を考慮した .

提案書・計画が明解だったか ( 主に日本語の文章力や , 見せる力 )

元気のいい , 確信をもった発表をしたか ―― 特に質疑応答が重要

自分でどこまで発想をしたか ( 指導教官等の受け売りではないかをチェック )

技術をもっているか ( プログラムを自分で書かないプロジェクトはあり得ない )

なんらかのインパクトがあるか

  このうちの最後の「インパクト」は , 人的側面でも , 内容面でもなにかインパクトがあることがやはり必要という判断である . 両方兼ね備わっていれば申し分ない .

  採択プロジェクト全体を見渡すと , 平均年齢は 23.2 ( 昨年度は 23.4 ). ちょうどいいところである . やはり , 院生・学生が大半である . 代表者で分類すると ( 採択時 )

   博士課程 3

  修士課程 8

  学士課程 8

  高専生     1

  企業所属者 3 ( うち 1 名は 10 月から大学院生 )

  個人事業者 1

  フリーター 0

 高専生は昨年度の 2 件から 1 , フリーターは昨年度の 1 件から 0 件に減った . なお , 企業所属者の中には比較的大手のソフトウェアハウスの人がいる . これは未踏ユースとしては画期的なことだった .

  プロジェクトのグループ形態は次の通り .

  1 人:15 件、 2 人:2 件、  3 人:5 件、  4 人:1 件、  7 人:1

  プロジェクト代表者に女性はいないが , グループ内にいる女性の総計は 4 名である . 開発者のグループ最若年は昨年同様 18 , 最高年齢は 27 歳であった .

  これも昨年同様 , ビジネス指向が明確だった人は極めて少数であった . ほかはすべて , オープンソースまたは Web 公開のフリーウェア指向だったことである . しかし , その後 , ビジネスが射程に入ってきた人が若干名いた .

 



3.プロジェクトの総括評価



 ○中間報告時の評価について
 
中間期なので,最終評価と同レベルの評価をすることはできない.しかし,一部のプロジェクトにはすでに最終評価でも高い評価が予測できるものがある.また,当初の計画に対していくつかの見切りをつけて,プロジェクトの目指すところをクリアにしてもらったものもある.また,中には,当初の計画から大幅に方針を転換してもらったものもある.そのほうが結果的にはよい成果になると開発者も PM も判断したからである.

  総じてプロジェクトの進行に遅れを訴えている開発者が多い.しかし,プロジェクトの内容にある程度の見切りをつければ, 12 月という形式的な空白期間の間にほとんどのものが遅れを取り戻せるはずである.また遅れるとしても,どこまでできれば,プロジェクトとして体をなせるかを留意してもらえば,最終的な着地は可能である.

 ○最終評価について
 平成14年度の報告書の最終評価の節でも書いたが,20〜25歳ぐらいの若い連中にはプログラム開発能力は驚くほど高い人がいる.特に若い人で,砂に水が染み込むがごとく,吸収力や成長力が高く,短期間に見事に育ったというか,一皮剥けた人が多かったのは平成14年度と同様である.これは未踏ユースならではの特徴である.

 1人のPMが24件のプロジェクトをくまなく詳細にわたるまで見ることは不可能である.だからプロ管が用意されているのだが,最終的に成果の評価に責任をもつのはPMである.だから,開発者たちから見ると的外れな評価をしていると思われることは多々承知の上で,PMとしての評価を下さないといけない.

 平成14年度の基本方針を踏襲し,未踏ユースでの評価は成果だけではなく,その人物の伸びを考えた.未踏ユースは若い人の将来の可能性に賭けることに本質がある.プロジェクトの短期的成果の評価だけで,伸びる芽を摘むことだけは避けたい.なので,以下の各論の中の「PM中間コメント」と「PM最終コメント」をお読みになると感じられるように,あまりうまくいかなかった人にも,その努力を評価し,将来を期待するメッセージを送っている.

 今年度は,目標から明確に後退したといえるプロジェクトは1〜2件である.もう少し時間をかければ完成というものを含めて,ほとんどは着地に成功したと評価できる.PMがアドバイスしたものを含めて,計画変更を行なったプロジェクトが何件かあるが,これらはむしろより良い成果を出すためのものであり,後退ではない.

 それにしても,今年度は途中でもうこりゃだめかと思わせるプロジェクトが多かった.それが最後になってきちんとした成果を出した.PMはハラハラし通しだったが,最後には若い人の爆発力というものを実感させられた.みんな小説になりそうだ.

 こういうわけで,評価の発想も未踏ユースの場合は基本的にプラス思考で行きたい.実際,開発者諸君はPMにプラス思考をするように仕向けてくれた.

 今回の最高評価は,未踏本ちゃんと同じ「スーパークリエータ」という称号とする.ただし,本ちゃんとは採択金額 (開発規模とおきかえてもよい),開発環境 (PMが一人であること,プロ管の役割が本ちゃんと違うことなど) とも違うので,本ちゃんの「スーパークリエータ」とまったく同じというわけにはいかない.正確には「ユース枠のスーパークリエータ」である.ただし,今年度は1名,そういう枠を完全にはみ出した「スーパークリエータ」がいた.こういう掟破り(?)は,大変喜ばしいことである.

「ユース枠のスーパークリエータ」の認定では,未踏ユースの趣旨に沿い,成果はもちろんだが,これからクリエータとして伸びていく素質も重視した.つまり「これからもっと伸びていくはずだ」というPMの期待を表明したことになる.だから,認定された諸君は,「ああ,いい成果が出ましたねぇ」と評価されたというより,むしろ「もっと頑張って!」というプレッシャをかけられたと思っていただいたほうがいいかもしれない.そのプレッシャに耐え得る才能と力は十分にあるとPMは信じている.

 とはいえ,今年度もユースの成果には,未踏本ちゃんレベルあるいはそれに肉薄しているものが多かった.それどころか,今年度は未踏本ちゃんレベルを超えたものが1件あった (登君のSoftEther).これは素晴らしいことである.若い人が未踏本ちゃんより気軽に応募できるこの事業は,若い人たちの才能を伸び伸びと発揮できる場を提供する事業として2年目にして確固たる地位を築いたと思う.成果のレベルを見ても「スーパークリエータ」という称号を本ちゃんから借りることに,なんの問題もない.

 成果がどれも素晴らしいといっても称号は称号なので乱発はできない.なので,「準スーパークリエータ」も用意した.どの称号にも簡単なコメントをつけた.なお,これらの称号はグループの場合は原則として個人にそれぞれ差し上げるが,今年度は代表者だけにした.

 判定基準は才能評価と (プロジェクト期間の) 成果評価を半々して合算して行なった.なので,才能評価が高くても,この期間に得られた成果がちょっと少ないな,と思われたりすると称号に達しない場合がある.また,才能評価は若い人のほうを優先した.

以下に称号付与の一覧をつける (年齢は申請時).コメント等は各論に載せた.*はグループ内の個人.グループ内の個人の場合は原則として代表者のみとした.この中で,登君は未踏ユース枠を越えたスーパークリエータと認定したい.
スーパークリエータ 5名 (50音順)

  赤塚 大典 27歳 * (個人事業)
  登 大遊 18歳 (筑波大学第三学群情報学類)
  増田 厚司 25歳 (東京農工大学工学部)
  丸山 泰史 22歳 (東京大学大学院情報理工学系研究科)
  山崎 公俊 23歳 * (筑波大学大学院機能工学系)

 

 

○個別プロジェクト評価について
テーマ概要はすでにIPAのWebページに公表されているものを, 報告書のために少し書き直したものである. 修正点は文体を揃える, 視点を本人ではなくPMにするなどの軽微なものである. 採択理由は公表のものをそのまま転載した.

  PMのコメントは, 個別プロジェクトの状況を見た上での, PMの感想文のようなものであるが, その中に評価に関わるような言辞を含んでいる.





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