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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 




1.採択者氏名


代表者

森口 宏一(大阪大学)

共同開発者

なし



2.担当プロジェクト管理組織


 三菱マテリアル(株)



3.委託支払金額


 3,000,000円



4.テーマ名


 Web及びローカルリソースを基盤とする新プラットフォームの開発



.関連Webサイトへのリンク

 なし



6.テーマ概要


 Web上のリソース,PCローカルリソースをシームレスに扱うことのできるクライアントブラウザを作成し,更にそれらの情報を扱うクライアントを動作させることができるプラットフォームDeieeを構築する.

 現時点において,コンピュータ (PC) を使って得られる情報のうち,Webからの情報が占める割合は非常に大きい.また一方,ユーザーのクライアントコンピュータに蓄積された情報は,Web上の情報に比較すると量的には少ないものの,私的なメールデータなど,ユーザーにとって重要度の高いものであることが多い.

 システムDeiee/Deiee Platformは,Web,そしてローカルデータに分散している情報を統一的に扱うためのフレームワークと,その上で動作するデフォルトのアプリケーションを提供するものである.これはさまざまな静的・動的なリソースを相互に連携・活用するための基盤となるプラットフォームである.

 また,高度なWebサービスを構築する場合,一般的なWebブラウザでは操作性や機能面で劣ることから,専用のクライアントアプリケーションが必要となる.この際,Deiee Platformを活用し,クライアントモジュールをプラグインとして提供することで,当該Webサービスの開発が容易になると考える.これはWebサービスの普及を促進することにも繋がる.

 システム自身のプラットフォームにJavaとRubyを用い,これらオープン性の高いプラットフォームの普及も同時に狙っている.導入を容易にするため,プラットフォームを含めたインストーラも作成する予定である.



7.採択理由


 Webリソースとメールや自分のファイルなどのローカルリソースとをシームレスに扱い,それらの連携によって高度な情報活用を可能にするという提案である.PM個人としてはそのあたりで悩んだというか困ったことはなかったので,身近な問題として直観的な判断がすぐにはできなかったが,このような枠組が技術課題として真っ当であり,それが有用になる場面は必ずやあることは理解できた.ただし,提案段階では,このプラットフォームがユーザにとって結局どのような使い勝手になるのか,具体的イメージがわかりにくかった.プロジェクトの中で,それクリアにし,世の中に強くアピールできるものにしていってほしい.ユーザにとっては内部構造はどうでもよくて,画面を通しての使い勝手だけが問題になるからである.

 

 
8.成果概要(中間報告時)
 

 
 Deiee Platformは主にJavaとRubyを用いて開発している.また,プラグイン開発言語としてはJavaを採用することでオープン性を高めるが,必要に応じてgcc,Visual C++,Delphi,.NET Framework SDK等も利用可能とする.

 まずWindows版Deiee Platformを開発するとともに,その活用例として代表的なプラグインを整備・提供するように開発を行なった.その後,マルチプラットフォームでの動作を目標とし,Linux版Deiee Platformについて開発を行なう予定である.

 中間報告時(11月末時点),Windows版Deiee Platformの開発を進めているが,GUI部分に手間取り,本体側の作業が遅れ気味である.早急にプラグインインタフェースの仕様を確定し,実装を進めることとする.開発は具体的には以下のように進めた.

(1) Deiee Platform並びにプラグインの設計

 キャッシュのファイルフォーマットは,Maildir形式及びそのディレクトリ構成を拡張した形式,mbox形式とその拡張形式の2種類とした.Maildir形式のディレクトリをさらにディレクトリで分割する.また,インデックスファイルによって高速化する.

 mbox形式とその拡張形式については,Windows上での主要なメールソフトがこれらに近い形式であるため,データハンドリングが容易になると考えて採用したが,細かい違いがあると,実際のところルーチンの共通化は難しそうである.

(2) Windows版Deiee Platformの開発

 SWTでのGUI部分を作成中であるが,SWTの習熟に苦戦している.

(3) プラグインの開発

 Eclipse等のIDEとの連携機能を作成し,プラグインの開発環境を整える予定であるが,中間報告時(11月末時点),Eclipseプラグインの開発は未着手である.(1)で抽出・設計したプラグインについては,順次開発中である.

 インターネット上の掲示板2種に対してデータ取得プラグインを開発し,取得データをMaildir形式でディレクトリに保存している.

 Teacup http://6005.teacup.com/kitobbs/bbs
 YTPBBS http://www.vc-net.ne.jp/~ytp/bbs/java/

 なお,開発の初期に,Windowsの実行ファイル (exe) からJavaアプリケーションを実行する補助ツールを作成した (Delphi製,Windowsネイティブアプリ).これは,その環境にJREが存在すればJREを起動,なければ内蔵WebブラウザでSunのGetJavaのページを表示し,JREのインストールを促すというもので,Javaアプリケーションの配付・実行を容易にすることができる.Deiee本体とは別に,先にフリーソフトとして公開する予定.

 

 
9.PMコメント(中間報告時)
 

 
 森口君とはブースト会議以降,ゆっくりと話し合う時間が取れていない上に,メール等での連絡もほとんどないので最小限の資料からプロジェクトの進行を判断をしないといけない.しかし,ブースト会議で指摘されたように,このプロジェクトはユーザインタフェースがよくてナンボのものである.いまでもユーザはいろいろな情報源を適当に使い分けているのだから,それをはっきり上回る形のものが出てこないとシステムとしてはちょっと辛い.

 GUIで苦労しているようだが,とりあえず派手なGUIは不要だろう.ユーザインタフェースとしてのGUIは最低限のものでも,ともかく多様な情報源を統一的に扱えるプラットフォームができれば,みんなからいろいろな評価をしてもらえる段階に進める.

 当初想定していた以上にプラグイン一つ一つの規模が大きくなりそうだとか.Webリソースの形式が多様であることが悩みのタネだというメッセージが届いている.たしかに困った問題だが,重要度の高いものから順次片付けていくよりほかはないだろう.

 


10.成果概要(終了時)


 提案でも述べたようにDeiee Platformは,Web上のデータ並びにPC 上のローカルデータをシームレスに扱い,相互の連携を可能とするフレームワークである.ユーザは,Deiee Platformにより,データリソースを意識することなく必要な情報にアクセスすることができる.Webリソースに対して,Deieeはデータフォーマットの変換・中継を行うミドルウェアとして機能する (森口 図1および森口 図2).

 

Webリソースに対するDeieeの働きの図

 

森口 図1 Webリソースに対するDeieeの働き

 

 

様々なサイトからの情報(掲示板等)をDeieeで統合した図

森口 図2 様々なサイトからの情報(掲示板等)をDeieeで統合

 

 また,従来,Web コンテンツは,製作者が用意したものをそのままブラウザで閲覧・利用するのみであったが,Deieeではプラグインを介して,ユーザの意図した形に変換できるため,場合によってはより効果的な利用も可能となる.

 森口 図3のようなWindows版Deiee Platformを開発した.SWTでのGUI作成にかなりてこずってしまい,全体の作業が滞る結果となってしまったが,当初イメージしていたものと同等のものを実現した.Deiee Platformは主にJavaとRubyを用いて開発した.また,プラグイン開発言語としてはJavaを採用することでオープン性を高めた.

整備したDeiee Platform図

森口 図3 整備したDeiee Platform

 

 Windows版Deiee Platformを開発した後,特定のWebサイト向けに特化したプラグインを数パターン作成した.Deieeはデータ変換プラグインの集合体 (森口 図4) と捉えることができる.現在,以下の5種のコンテンツに対応済みであるが,引き続き,プラグインの整備を進めている.

 teacup BBS http://6005.teacup.com/kitobbs/bbs
 Java 普及委員会掲示板 (YTP Library) http://www.vc-net.ne.jp/~ytp/bbs/java/
 Open Source Software Engineering http://www.tigris.org
 Yahoo!掲示板 http://messages.yahoo.co.jp/index.html
 wforum http://www.wforum.com/

 キャッシュの当面のファイルフォーマットは,Webリソースの掲示板コンテンツ並びにローカルリソースのメールデータとの親和性が高いRFC822メッセージ形式にした.

 

Deieeはデータ変換プラグインの集合体であるという説明の図

森口 図4 Deieeはデータ変換プラグインの集合体

 

 終了時(3月時点)では,当該プラグインは,リアルタイム処理に対応できておらず,Webコンテンツをダウンロード後,対応するプラグインにてフォーマット変換し,変換後のデータをDeiee Platformで利用する手続きを踏む必要がある.使い勝手を考えると,リアルタイム処理への対応が必須である.

 マルチプラットフォームでの動作を目標とし,Linux版Deiee Platformの開発にも着手したが,プラグインの充実をより優先すべきと考え,現在開発を休止している.プラグインの充実が重要なので,第三者がプラグインを作成して提供できるように,仕様の公開を急ぎたい.



11.PM評価とコメント(終了時)


 恥ずかしい話だが,正直なところ,森口君の提案はPMの土地勘の働かない場所に関するものだったので,いまいち直観的な理解ができていなかったのだが,1月になって面談して詳しい話を聞いてやっと開発しているものの本質(?)が理解できた.提案そのものはやはり概念的にすぎたと思われる.つくろうとしているものと,それの実際の使われ方を示してもらった瞬間に,「概念的な」理解から飛び出すことができた.

 もっともこれは森口君にも責任があったようで,多くの人から「要するになにをやりたいの?」と聞かれたようだ.それを白状した上で,広島で行なわれた最終報告会では,DeieeとDeiee Platformが要するに何者であるかを非常にわかりやすくプレゼンしてくれた.おかげで,ようやくPMの頭の中のモヤモヤは霧散した.理解もしないでよく採択したな,と言われそうだが,採択理由にその気分はしっかり記述されているのでご勘弁願いたい.未踏ユースで,PMが隅から隅まで理解していないと採択できないというのでは門戸が狭くなりすぎる.

 Deiee (ディーと読む) とは,「要するに」世の中のたくさんの掲示板,メール,システム化されたWebサイト等の多様なデータフォーマットを (なるべく) 統一的なデータフォーマットに変換するミドルウェアである.これがあると,ユーザは統一されたインタフェース (ビュー) で多種類のソースにアクセスできる.提唱されているDeiee Platformの見掛けは最近流行りつつあるRSS (RDF Site Summary) リーダーに似ている.ここで合点できる.

 blog等ではRSSによってデータが配信されることが増えてきたということなので,似たような変換後ビユーを提供しようとしているDeiee Platformはそもそも不要になるかもしれないという不安もあるが,森口君の言うように,すべてのサイトがRSSデータになることはあり得ないだろう.だから,Deiee/Daiee Platformにも生きる道があるはず.

 しかし,Deieeの変換能力 (データフォーマット対応のプラグインの数) はまだ不十分だし,ユーザ側からシステム化されたWebサイトへのリアルタイムアクセス能力の付与も今後の課題になっている.インターネットの世界では,勝手に多様なシステムが雨後の筍のように生えてきて,どこかでその反省が起こって,なんらかの統一規格へという運動が起こる.RSSもその一つだろうが,Deieeのように多様性を認めて共存を図ろうという考え方もある.なにが生き残るかは結局ちゃんとしたものができて世の中の人がそれを使うかどうかというごく当り前の社会現象に依存している.Deieeが生き残るためには,技術から社会現象まで歩を進めるもう一踏ん張りが必要と見た.




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