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アイデアを練りつつ,手法を少し変化させ,以下のような開発と実験を行なった.
(1) 提案手法のプロトタイプ開発および評価
前期に加えて,空間位置と情報に緩い相関をもたせるために釣り場マップ (データ分布の曖昧な視覚化) という概念を導入した.
(2) 提案手法による情報検索システムの開発
提案手法を従来広く利用されているキーワードによるドキュメント検索に適用した.クエリは文字列,被検索データはWWW上のドキュメントとし,WWW‐システム間のインタフェースとしてGoogle
Web APIを用いた.
情報 (ドキュメント) の「好み」情報としてキーワードあるいはドキュメントを割り当てる.初期値は当該ドキュメントをWeb上から獲得した際に使用したクエリおよび同時にシステムへ追加されたドキュメント群である.すなわち,ユーザの投入したクエリに対してGoogle検索を行ない,上位にランクされたドキュメント群を提案システム内の被検索集合に追加し,それらに対する初期「好み」として投入クエリを割り当てる.また,付加的な「好み」として同時に追加されたドキュメント群同士が相互に設定される.提案手法では被検索単位毎に制御部を持たなければならないためWWWをそのままの形で利用することができないが,この方式によって複雑な処理を介することなく被検索集合を最新かつ最適に近い状態に保つことができる.なお,「好み」情報は動的に変化する.
ドキュメントの持つ「好み」情報は,定数長のベクトルで表現される.空間中に分布したドキュメント (魚) は,以下の4規則にしたがって運動する.これはProctorらの提唱する手法に基づいている.
・ 近傍の魚との衝突を避ける.
・ 近傍の魚と速度を合わせる.
・ 好みの餌または仲間に近寄る.
・ 苦手な餌または敵から離れる.
システム全体は,情報集合と入出力インタフェース部,WWWインタフェース部 (Google Search),総合制御部,およびユーザからなる
(小林 図3).ユーザは入出力インタフェース部を介してクエリを投入,結果を得る.総合制御部は情報集合とクエリを一元的に制御する.

小林 図3 システムの概観
小林 図4は作成したシステムの実行画面である.魚 (楕円体で表現されている)
の群れを「上から見下ろした」様子が出力されている.
小林 図4 システムの実行画面
(3) 面白く役立つ応用機能の開発
検索作業にゲーム性を加えて面白さを拡大し,またシステムの有用性を高めるため,いくつかの機能を組み込んだ.ここでは代表的なものだけを紹介する.
(3-1) 時間の経過に基づく被検索データの変化
個々の「魚」の持つ「好み」は (基本的な傾向として) 時間の経過とともに薄れていく.また,好みの「餌」を手にしない限り「魚」は次第に消耗していき,消耗の度合いが閾値を超えると一定の確率で死滅する.なお,消耗度は「魚の太り具合」によって可視化されている
(小林 図5).
小林 図5 太った魚(左)と痩せた魚(右)
(3-2) クエリ投入に基づく被検索データの変化
ユーザによるクエリの入力に対してGoogle検索を行なうのは前述のとおりであるが,それに加えて一定時間毎に関連ドキュメント検索やリンク検索を行ない,被検索情報集合を随時更新する.これにより検索結果に流動性が付加される.
(3-3) データ分布に基づく被検索データの変化
近傍に存在する「魚」同士は,ある確率で「ひとめぼれ」によって新たに「好み」を設定される.多くの場合これは当初「片思い」であるが,一方が他方を追跡し続ける
(近くに存在し続ける) 事によって「両思い」になり得る.また,未知の「餌」については任意で弱い「好み」を設定する事で「とりあえず様子を見てみる」という好奇心を表現している.
以上のほかに交差および突然変異の機能を追加した.これらの変化率を高めると,検索結果の曖昧性や確率性が高まる.逆に値を抑えれば,結果がやや固定的になる.目的によって適切な設定を選択する必要がある.また,網漁と魚篭,俯瞰モードと魚影といった便利さや面白さを増す機能も採り入れた.
本手法は「好み」を適切に定義することによって任意のデータを扱える.試作したアプリケーションはWWW検索であるが,個々の「魚」の動作には「好み」やURL,仮想物理距離といったメタデータ部分しか関与していないため,コンテンツが機械的に解析可能か否かにかかわらず本手法を適用することが可能である.
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