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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 




1.採択者氏名


代表者

丸山 泰史(東京大学大学院情報理工学系研究科)

共同開発者

なし



2.担当プロジェクト管理組織


 日本ユニシス・エクセリューションズ(株)



3.委託支払金額


 2,992,489円



4.テーマ名


 プレゼンテーション支援システム



.関連Webサイトへのリンク


 なし



6.テーマ概要


 現在,PowerPointなどのプレゼンテーションソフトが非常に普及しており,ビジネスにおけるプレゼンテーションにとどまらず,授業・学会発表・そのほか多くの場所でこれらのソフトが用いられている.しかし,これらのプレゼンテーション用に作成される資料は,作成時間の制限等のため,十分に構造化されていないことが多く,発表の内容の理解が容易でない場合が多々ある.また,構造的に作られたプレゼンテーション資料も,プレゼンテーションソフトの側に構造表現をサポートする機能が備わっていないため,発表の最中に構造を提示することが難しいのが現状である.

 上記の背景をふまえ,適切に構造化されたプレゼンテーションが聴衆の理解に役に立つということを前提に,時間・手間をかけずに容易に階層構造を持ったプレゼンテーションを作成することを支援し,さらに,発表中に階層構造をさりげなく表示する機能を持ったソフトウェアを提案する.

 本プロジェクトの目的は主に以下の3点である.

【構造化プレゼンテーションの作成を支援】

 構造化されたプレゼンテーションを容易に作成できるソフトウェアを目指す.具体的に数種類の構造作成方法を実装することを考えている.たとえば,スライド上の文字情報と同じようにタブによって階層構造を作成する方法,番号をスライドのタイトルに入力すると自動的に構造化される方法等,さまざまな方法を考案・比較し,最善の方法を実装したい.

【構造化プレゼンテーションの適切な表示】

 上記の作成支援ソフトウェアによって作成されたプレゼンテーション資料を,構造も含めて適切に表示するソフトウェアを目指す.さまざまな全体構造の提示方法を考案・比較し,発表自体の妨げにならないようなさりげない表示方法を実装することを目標とする.

【構造化プレゼンテーションの印刷】

 さらに,このプレゼンテーション資料を印刷するソフトウェアも作成したい.プレゼンテーション資料の持つ構造の情報を生かし,単にスライドを並べるだけでなく,構造を生かした印刷資料を作成することを目指す.



7.採択理由


 プレゼンテーションに対する考え方で評価が分かれる提案であるが,少なくともプレゼンテーション下手の人には役に立つものができるという印象をPMはもった.ただ,現在のMSパワーポイントの圧倒的なシェアを考えると,それとの付き合い方を真面目に考えておかないと出口のない開発になってしまう.提案時に示されたアイデアはどれもよく考えられていたが,プロジェクトを進めていく中でもっといいアイデアが出てくるような気がする.そのあたりを柔軟に構えてもらいたい.そのためにはプレゼンの「構造」ってなに?という根源的な問いかけも継続的にしていくべきだろう.


 

 
8.成果概要(中間報告時)
 

 
 手間をかけずに容易に階層構造を持ったプレゼンテーション・データを作成し,スライドショーによる発表において階層構造をさりげなく表示することを支援するソフトウェアを開発した.実装方法としては,現在,プレゼンテーション用ソフトの代名詞ともいえる,マイクロソフト社のPowerPointに対するアドイン機能として実現した.

 具体的には,PowerPoint本来の機能,操作性,効率に悪影響を及ぼさないような形で以下の2つの機能を実現した.

(1) スライド間の階層構造情報を入力・編集する機能

 丸山 図1の左囲みに示すような階層プレゼンテーション入力・編集ブラウザを実装した.これは図・丸山1の右囲みを押すことによって起動する.これを用いることにより,階層情報のほか,重要度情報,スライドの表示・非表示情報 (PowerPoint既存の情報) の属性を付加することができる.このブラウザは,PowerPointのアウトライン表示の機能をほぼ包含しているため,
 ・ 既存プレゼンテーションを開き,階層情報を付加する.
 ・ 新規プレゼンテーションを作成し,先に階層情報を作成し,後からスライドを肉付けする.

 ・ 上の2つを交互に行なう.
などといった柔軟な使い方が可能である.これにより,メリハリのあるプレゼンができるようになる.なお,入力と編集はWindowsの標準インタフェースで行なえるので,ユーザの習得も容易である.

 

システム起動時の外観図

 

丸山 図1 システム起動時の外観

 

(2) スライド間の階層構造情報をスライドショーにおいてさりげなく表示する機能

 丸山 図2は階層情報等を付加したプレゼンテーションの例である.スライドの上部には親スライドのタイトルが,そして左側には全体の構造がさりげなく表示されている.☆の縦方向位置がスライドの順番を示す.○の横方向位置が階層情報を示す.

 発表者,聴衆ともに,この情報により,プレゼンテーションの構成,スライドの現在位置,重要度等を取得することができる.なお,これらの表示法をユーザが調節できるのはもちろんである.ここでは詳細を省略するが,こちらの操作性も標準的でわかりやすいのでユーザはすぐに習得できるだろう.

 

階層情報等を付加したプレゼンテーション図

 

丸山 図2 階層情報等を付加したプレゼンテーション


 

 
9.PMコメント(中間報告時)
 

 
 10月から,わずか1ヵ月ほどで急激に完成度が高まったプロジェクトである.手前味噌になるが,10月下旬に丸山君と膝詰め談判で,デモを見ながら,あれこれ勝手なことを言ったのが,恐らくほとんどきちんと消化されている.紙面の限られたこの報告書だけでは,どれほどのものかはわかりにくいと思うが,これはPowerPointにアドインするソフトウェアとしてかなり価値の高いものになるはずである.

 そもそもプロジェクトのスタート時,丸山君はPowerPointを相手にどうしていいか戸惑っていた.PowerPointのインサイド情報をどうやって手に入れるかもわかっていなかった.PMもプロ管の日本ユニシスエエクセリューションズの前田さんもどうしていいかわからなかったので,PMがほとんど知合いのいないマイクロソフトの,大昔名刺をもらった人にお願いのメールを書いたものである (それを突破口にMSといろいろな付き合いが始まってしまったのも因縁だったが…).

 そのころから情報はいろいろなところにあることがわかったのであるが,思うにプロジェクトの提案時点でこのあたりの見切りをつけていなかったというのはすごい.しかし,結果オーライ.PMがまったく予想していなかった完成度のソフトウェアに仕上る予感がするところまで来てしまったのはもっとすごい.

 このような勝ちグセがついた以上,あとは一気呵成に最後までつっ走って欲しい.余力で,これを論文のタネにするような工夫もすれば万全だ.


10.成果概要(終了時)


 このシステムにはCoffeeMakerという名前がつけられた.

 前期に加えて,残っていた最後の印刷機能も含めて所期の計画はすべて完了した.また,入力・編集機能,階層構造表示機能も改善が進んだ.PowerPointをベースにしているが,PowerPoint本来の機能,操作性,効率に一切悪影響を及ぼさないアドイン実装ができたことは特筆に値する.実際,CoffeeMakerを用いて階層化されたPowerPointファイルを,CoffeeMakerがインストールされていないPowerPointでプレゼンしてもまったく影響が及ばない.

 細かい機能の説明は丸山君のWebページに任せるとして,ここではどんなインタフェースになって,どんなものができるのかをほとんど図だけで示す.中間報告の図と重複するものがあるが,説明的で,かつ改良の跡があるので再掲する.

(1) 階層構造情報の入力と編集

 PowerPointの中で,CoffeeMakerのアイコンをクリックすると最初に現れる画面は丸山 図3である.左側に階層入力のためのツリーが現れる.必要ならば丸山 図4のようなポップアップメニューを出すことができる.

 

システム起動時の外観画像

 

丸山 図3 システム起動時の外観

 

ポップアップメニュー画像

 

丸山 図4 ポップアップメニュー

 

(2) 階層構造情報の表示

 丸山 図5を見れば一目瞭然であろう.階層構造のみならず,重要度情報など,表示はこれでもかと思うほど広いバリエーションでカスタマイズ可能である.それを指定する設定ダイアログの一部を丸山 図6に示す.

 背景設定ダイアログで設定した内容は,画像ファイルも含めて自動でPPTファイルに保存されるようになっている.そのため,基本的に設定の保存や読み出しは必要なく,プレゼンテーションファイルの持ち運びも従来と全く同じ感覚でできる.加えて,別のプレゼンテーションに設定を移したい場合にそなえ,設定ファイルを単独でエクスポート・インポートできるようになっている.

(3) 階層構造情報の出力

 CoffeeMakerでは,階層エディタで入力した階層情報等をもとに,印刷資料を作成することができる.階層構造はスライド上部の見出しとスライドの背景色として反映される.丸山 図7はCoffeeMakerで出力した印刷資料の一例である.印刷資料の設定も設定ダイヤログで行なう.

 

 印刷資料上で,スライドはそれぞれ一枚の画像オブジェクトとして配置されており,PowerPointによる操作が可能である.そのため,スライド間の関連などをあとから上に描画することができる.丸山 図8はスライド間の関連情報を付加した例である.このような情報により,印刷資料の分かりやすさの向上が図れる.

 

階層情報等を付加したプレゼンテーション図

 

 

 

出力された印刷資料にスライド間の関連情報等を付加した例の図

 

丸山 図6 出力された印刷資料にスライド間の関連情報等を付加した例

 

    階層構造を反映した印刷資料の例図

丸山 図7 階層構造を反映した印刷資料の例

 

 

出力された印刷資料にスライド間の関連情報等を付加した例図

丸山 図8 出力された印刷資料にスライド間の関連情報等を付加した例




11.PM評価とコメント(終了時)


 ここまで完成度の高いソフトをつくった丸山君に拍手したい.まったくあれよあれよという間にオリジナリティに満ちたプレゼン (補助) ツールができてしまった.いまや世の中の標準であるPowerPointに,極めて正しい姿勢でアドインしたことにも感服した.このような徹底はどのソフトウェア開発者も肝に銘じるべきである.

 階層化に限らず,プレゼンをわかりやすくするいろいろなアイデアがこれでもかこれでもかと投入されている.それらの実装は決して容易ではないはずだが,PowerPointの上でうまく波乗りする要領でスイスイつくってしまったところも感心した.なにか,ツボを押えた瞬間にすべての疑問が氷解したような気持ちよさだ.

 報告書もすべてのプロジェクトの中で出色であった.プレゼンツールの報告書だから当然かもしれないが,上の図版を見てもわかるように,自己説明的になっているところが素晴らしい.賞讚ばかりだが,このセンスもグーだ.

 いずれせよ,このソフトの有用性は非常に高い.丸山君はなるべく早くWebで公開したいと考えているようだが,ここまで来たら,まずは内輪で使ってもらい,少し完成度を高めてから出したほうが長い目で見て得策だと思う.少々バグありのままで公開せずに,いきなり高い評判をとったほうがよい.

 CoffeeMakerについては,ぜひ多くの人に使ってほしいという以外に,PMのほうから付け加えることはなにもない.

★★ スーパークリエータ: PMが当初予想していたよりはるかに上質のソフトウェアを仕上げてくれた.発想が柔らかく,いろいろなものを素早く吸収して伸びた.表現力も優れている.




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