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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 




1.採択者氏名


代表者

増田 厚司(東京農工大学工学部)

共同開発者

なし



2.担当プロジェクト管理組織


 (株)創夢



3.委託支払金額


 3,000,000円



4.テーマ名


 電子ホワイトボードを活用する実用的教育用アプリケーションの開発



.関連Webサイトへのリンク


 http://www.scribal.co.jp/



6.テーマ概要


 ここで目指すのは,電子ホワイトボードを,従来から先生や児童・生徒が慣れ親しんでいる「黒板」を利用した授業に導入し,「黒板」とコンピュータによる情報化の利点を融合するため,電子ホワイトボードの一斉授業への導入と活用を目標においた実用的な教育用アプリケーションを作成することである.これは,電子ホワイトボードの利点を生かし,「黒板」にマルチメディア教材を表示したり,インタラクティブに操作したりすることを可能にし,かつ,慣れ親しんだ「黒板」の利点を決して損なうことなく,一斉授業に導入可能なアプリケーションである.

  具体的には,今まで,1つの黒板とその周辺にあっても,別々のメディアとして扱われていた,OHP,書画カメラ,ビデオカメラやコンピュータ上のデータ (画像・Webページなど) と,黒板を同一アプリケーション上で扱って授業を行なうことができ,かつ,利用者にかかる操作の負担を最小限としたアプリケーションを目指す.

  また,従来の黒板にない機能を備えることを目標とするが,黒板のような誰にでも使える簡便さを失わないことを目的して,ユーザビリティの評価を行いながら開発を進め,誰にでも使いやすいシステムを目指す.



7.採択理由


 電子ホワイトボードを教育や娯楽に使うことを目指した研究開発は,増田君のいる (居候している?) 東京農工大工学部中川研究室でこれまで数年にわたって精力的に行なわれてきている.しかし,その一方でこれを低コストで現場に導入できるようにするためには「大学の研究」とは違うスタンスが必要になる.増田君の提案は,ここに着眼している.ともかく教育現場が使う気になってくれることを最重点にした開発を行なうという提案だ.たしかに,いつまで黒板なのか,という彼の主張は首肯ける.

  未踏性は薄く,プレゼンを聞くかぎり,具体的になにをやるのか,プロジェクトの成果の展開の見通しは大丈夫なのかなぁという印象もあったが,情熱・熱意は強く感じられた.キャラクタは明るく,独特の雰囲気があり,これもPMが買ったところ.

 

 
8.成果概要(中間報告時)
 

 
 実現しようとしているシステムの基本構成イメージは増田 図1である.

 

電子ホワイトボードシステム基本構成図

 

増田 図1 電子ホワイトボードシステム基本構成図

 

(1) 電子ホワイトボードへの板書機能の開発

 電子ホワイトボード上への板書情報の記録機能の実装および,筆記された情報を再生する機能の実装を行なった.また,電子ホワイトボード上に,画像メディアを表示し,その上に重ねて板書する機能,画像を移動しても元の位置の通りに表示される機能を実現した.

 なお,チョーク感の表現とストロークの平滑化などが必要か検討してみたが,書き味(レスポンス) の低下や,処理にかかるオーバーヘッドがユーザビリティに影響しそうなので,とりあえず,アルゴリズムの開発のみで実装は見送ることとした.

(2) 板書コンテンツ管理機能の開発

 電子ホワイトボード上に筆記された板書情報を蓄積する機能を実現するために,記録するデータ構造の開発と記録フォーマットの策定を行なった.また,記録フォーマットに基づいたデータ再生,データ記録を行なえるアプリケーションを開発した.

(3) カメラ等との連係機能の開発

 PCカメラ,デジタルカメラで撮影中の画像を取り込んで,画像コンテンツ化する機能について必要な情報の収集と,情報に基づいた機能の選定等を行なった.

(4) ユーザビリティの評価・検討

 上記(1),(2)に示した開発によって作成されたプログラムが実装した機能を操作するにあたって必要となるユーザインタフェースを考察した.また,それに基づいたユーザインタフェースを実装した.さらに,複数名の操作者に操作してもらい,操作感について感想を得た.

 なお,システム自体が実用新案となる可能性もあるかもしれないため,調査中である.

 

 
9.PMコメント(中間報告時)
 

 
 体調を崩したり,機器の整備が遅延したり,なかなか思うようにいかなかった前期だったらしいが,ともかく板書機能や板書コンテンツ管理機能が順調に仕上ってきているようで安心している.

 上記の成果の(1)の後半や(4)にもあるように,操作感に対する拘りをもって進めているのはよい.このようなシステムで実際に世の中に打って出るためには,まずコストの問題をクリアすること,次に教育に役立つことを主張するための理論武装,そして操作感を上げることが重要だと思う.大きな画面の電子ホワイトボードが安価に得にくいことが問題になりそうだが,逆にこのような高機能な「電子黒板」ができると,大きな画面は要らないというカルチャができるかもしれない.そのような攻め方もあり得る.

 でも,教育の現場担当者を納得させる理論武装とそれを裏付ける技術開発が,増田君のようにビジネスを狙っている人にはもっと重要だろう (この意味で記録機能にはあまり重きを置かないほうが得策かもしれない ― 教育に役立つ気があまりしないので).

 操作感については現場で差し上げたコメントも参考にしていろいろチャレンジしてほしい.ブースト会議でPMが言った,白板の上に実際にマーカーで書き込むのも含めてしまう,しかもコストも低そうなハイブリッド型には面白いアイデアがあると思う.


10.成果概要(終了時)

 

 前期との差分を以下に記す.

(1) 電子ホワイトボードへの板書機能の開発

 電子ホワイトボードの上の板書を保存,再生可能な形式で記録する機能を実装した.また,表示面をスクロールさせることで,表示されているホワイトボード面よりも,より広い面積に板書することを可能にした.模擬授業の1シーンを増田 図2に示す.画面の下にサムネイルが見える.

模擬授業写真1

増田 図2 模擬授業

(2) 板書コンテンツ管理機能の開発

 授業で行った板書や,あらかじめ準備しておくコンテンツや,それに付随して用いられる様々なメディアに対して,準備等を行える管理機能を実装した.過去の授業や,予定される授業のそれぞれを「授業」を一単位として記録しておき,読み込むことで再現可能にするようにした.

(3) カメラ等との連係機能の開発

 前期の調査に基づき,PCと接続可能な機器と,(1)に示した機能とを連携させるための機能を開発した.具体的には,スキャナ・デジタルカメラなどから画像を入力し,取り込めることを目標として開発した.また,取り込みは,板書中にも可能となっている.増田 図3は,その場で撮った写真をホワイトボードに取り込んでいるところ.

模擬授業写真2

増田 図3

(4) ユーザビリティの評価・検討

 前期から継続的に,より実用的なアプリケーションを目指すため,個々の機能ごとに,可能な限り多くのユーザに対してユーザビリティの評価を依頼し,その都度,聞き取り調査を行って考察し,改良を行うことで,ユーザビリティの向上を図った.

 



11.PM評価とコメント(終了時)


 会社も起こしてビジネス化を目指しているだけあって,システムをつくり上げるという意気込みが非常に強く感じられる.電子ホワイトボードはいまのところまだ高いが,教育現場,ゼミ現場のどこかでこれがドンピシャのところがあるはずで,まずはそこから展開していくことになると思う.

 前期と比べて,表面上は特段の差はなさそうだが,実際に触ってみると,いろいろなところで細かい改良が積み上げられていることに気づく.それを支えている原則が「モードレス」の概念である.ありとあらゆるところでモードをなくすことが設計・改良の動機となっていて,その徹底度が潔い.機能を減らしても「モードレス」を選んでいる.これは現場の教師の要望を汲み上げた結果だという.

 しかし,「モードレス」とはいえ,必要な機能はもっと増やせるのではないかと,成果報告会で触ってみて思った.モードには,人間の記憶を要求するものと,(たとえば,背景の色がグレーになるなど) 見てすぐわかるものがある.後者はモードでありながら,「モードレス」で排除すべきモードでもないようだ.また,サムネイルから引っ張ってきた画像の大きさが一定というのももどかしと感じることがある.これなども,たとえば,サムネイルを2回叩いてからドラッグすると,少し大きくなるというのは,モードを使わずに画像を拡大する手段になる.こういったアイデアはまだまだありそうだ.

 システムはすでに高い完成度になっているのだが,実際に触ってみると,まだまだ気になるところがある.もうそろそろもっと多くの人に触ってもらって意見を反映する段階に来ていると思う.その前に押えておかないといけない知的財産はなるべ早く押えてほしい.

 それにしても,中間コメントで「板書保存機能」がなんの役に立つのかという疑問を呈したが,復習のときにさっと見せるという用途を紹介してくれた.なるほど,それならわかる.

 後期に追加された,実時間でデジカメの画像を取り込む機能は理科の学習などでかなり役立ちそうだ.

 当初計画にあった動画や音声の取り込みは開発期間中には間に合わなかったが,これはノープロブレムである.いずれにせよ,未踏ユースでは最初からビジネス展開を狙っている人が少ないので,未踏プロジェクトとしては増田君にはエールを送りたい.

★★ スーパークリエータ: 予想外の発想の柔らかさがある.それでいてデザイン哲学がしっかりしている.ビジネス化に向けての真剣勝負段階なので,エールを送る意味もあってスーパークリエータ.成功を祈る.

 




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