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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)  採択案件評価書


 




1.採択者氏名


代表者

上原  康貴 (NECソフト沖縄株式会社)

共同開発者

なし



2.担当プロジェクト管理組織


 (株)オープンテクノロジーズ



3.委託支払金額


 2,358,550



4.テーマ名


 デジタルデータ放送コンテンツとWebコンテンツの融合



.関連Webサイトへのリンク


 なし



6.テーマ概要


 2000年12月よりBSデジタルの本放送が開始され,本年度からは,地上波においても一部地域においてデジタル化される.デジタル化に伴い,今までのアナログ放送にはない新たなサービスもいろいろ展開されており,その一つに,デジタルデータ放送がある.しかし,当初の予想より世間へデジタル化が浸透していないため,デジタルデータ放送コンテンツおよびその記述言語であるBML (Broadcast Markup Language) は,広く認知されているとは言い難い現状にある.そこで,コンテンツの流通を広める一手段として,コンテンツを一般のWebブラウザで表示することを試みる.Webブラウザで表示するために,BMLで記述されたコンテンツをHTMLに記述する必要がある.そこで,今回は,すでに作成されたデータ放送コンテンツをHTMLソースコードに半自動的に変換するツールを作成する.ここで,半自動的とは,自動的に変換することが難しい部分 (変換のパターンが複数考えられる) に対して,考えられる複数のパターンをウィンドウに出力し,ユーザに選択を促すようなインタフェースを想定している.

 また,新たに作成されるコンテンツに対しては,BMLとHTMLを統括したメタ言語を提案する.これは,当初からデータ放送とWebを意識したコンテンツ作りを行なう場合に利用する.定義したメタ言語で書かれたソースコードから,BMLとHTMLの両方のソースコードを出力するツールを作成する.



7.採択理由


 BMLとHTMLの間の垣根を低くするために両者を統括したメタ言語を考えるのは屋上屋の新しい言語をまた1個つくるだけだという批判もあろうが,技術としては正しいアプローチである.学生時代に行なった研究実績があるので,準備もよく整っている.今後,BMLやHTMLの使われ方がどうなっていくか予測はつきにくいが,現状から進み得る方向に一つの解を与えるプロジェクトだと思う.少なくとも,短期的にはある程度の意味がある.ユーザの開拓,売り込みには少々難関が控えているような気もするが….なお,このプロジェクトが企業の新人の自己研修の中でのものということであり,未踏ユースプロジェクトの一つの可能な形態として,PMは注目している.



 
8.成果概要(中間報告時)
 

 
 デジタルデータ放送は,現在多く普及しているアナログテレビでは視聴することができない.そのため,どのような番組を放送しているのかテレビを介して知ることができない.そこで,情報源としてテレビと二分する媒体であるWebに注目する.デジタルデータ放送で放送されている番組の一部分でもWebで紹介することができれば,認知度向上に少し貢献できると思われる.

 現状,放送局のホームページなどにおいて,番組を紹介するページは確かに存在する.しかし,それら紹介ページの多くは番組の一場面を静止画で記載し,その番組の内容をコメントとして記述しているといったものである.

 番組をより忠実に,かつWeb化することにあまり労力をかけないために,デジタルデータ放送コンテンツを自動的にHTMLに変換できれば理想的である.しかし,一部自動的に変換ができないところがあるため,なるべく自動変換するものの,自動判別できない部位については,その部位を明示するとともに,変換の候補をピックアップし,その中からユーザーが最適なものを選択することで変換が行なわれる半自動変換システムCBTH (Converting BML To HTML Ver.2) を構築した.コア部分は未踏ユース以前に開発したものを採用した.前期は半自動変換をサポートする部分と,テレビにおけるリモコンをブラウザの上のマウスに置き換えるためのGUIを作成した(上原 図1).出来上がったものは,プロトタイプという位置付けである.

 ただし,中間報告時(11月末時点)で入手できるBMLソースが少ないため,いろいろなBMLソースへの対応ができるとは言えない. しかし,手元にあるソースについてはほぼ100%対応可能になっている.なお,GUIには一部バグが残っているようである.

 2つ目の課題であるBMLとHTMLの統合メタ言語の開発は後期の課題とした.約1ヵ月ほど計画より遅れている.

 

BMLをHTMLに変換した例図

 

上原 図1 BMLをHTMLに変換した例


 

 
9.PMコメント中間報告時)
 

 
 PMの自宅にはBSデジタルの受信機はあるが,ほとんどBMLのお世話になっていないことにいまさらながら気がついた.PMがBMLのお世話になったのは先般の総選挙のときで,たしかにこれは便利だった.NHKが総力で対応しているから情報の更新が非常に速い.同時にちょっと見たインターネットの情報よりも速かった.

 BMLは鳴り物入りで登場したが,その後は広がるというよりもむしろ縮んでいっているのではないかと上原君は言う.だからこそ,このようなプロジェクトに意義があるということになるが,これを正のスパイラルにしていけるかどうかはなかなか微妙なところである.最大の問題は,変換システムをリファインするのに必要なBMLのソースがなかなか手に入らないことである.これは「業界」を相手にしている以上しょうがないことかもしれないが,PMとしては業界のスタンスが気になってしょうがない.

 もっとも最近ようやくBMLソースをつくっている会社を訪問することができ,開発動機を理解してもらえたという報告があった.彼の努力がようやく実を結んだというところである.まずはBML業界にこのプロジェクトの意義を知ってもらうことが大事だ.これをスタートに今後の開発を加速してほしい.

 上原君はNECソフトの沖縄の会社に所属している新人で,プロジェクトは会社の業務とまったく無関係である.これまでにも会社に所属している人はいたが,大きなソフト会社に所属している人は初めてである.そのため,上司に,未踏ソフトに期待すること,あるいは注文などを直接伺う機会をもった.非常に多忙な会社であるため,戦力をこのような形で少し削られることには多少の抵抗感もあったように見受けられたが,事業の趣旨をよく理解していただいて,これを外部機関による研修という扱いにされていた.とはいえ,企業人と,未踏ソフトの間のよい関係の確立には,まだまだ試行錯誤が必要であると思われる.上原君も本業が忙しくなると,残業が続き,未踏ユースの開発課題に割ける時間が少なくなってしまうようだ.

 後期が終わったところで,このあたり再度確認しておく必要があろう.



10.成果概要(終了時)


 前期の分も含めて少し詳細を述べる.

(1) 半自動化設計機能 CBTH2

 本機能は,BMLソースコードのスクリプト部分を自動変換するとき,複数の候補があって判断が困難な場合を想定したものである.変換元となるBMLソースコードの数が多くなるにつれて,自動で変換しかねる部位が多く発生する.そのような事態に対応するために,対象部位を判定不可対象部位リストに登録するという形で実現する.ユーザはGUIを通して変換指定を行なうことができる.

(2) データ放送と等価な操作性機能

 データ放送コンテンツはテレビでの運用を想定して記述されているため,入力デバイスとしてリモコンを使用する.一方,Webブラウザでは,主にマウスを使用してコンテンツを操作する.Webブラウザでは,リモコンと同じイベントを発生させるデバイスが用意されていないため,スタイルシートやスクリプト,ボディー部分の変換だけでは想定していた動作を行なえない場合がある.そこで,リモコン部分を別ウィンドで表示し,メインの画面と連動するようにした.

 実際には,リモコンにて発生するイベントを,リモコンウィンドに定義しそのウィンドのボタンアクションによって,擬似的にイベントを発生させ,メイン画面のスクリプトを呼び出すことで実現する.

(3) 新規作成される放送コンテンツのWeb化機能 (メタ言語の開発)

 CBTH2はBMLをHTMLに変換するツールであり,すでに作成された放送コンテンツをWebコンテンツとして流用する場合に有効である.一方,放送コンテンツを新規作成する場合,Webコンテンツとして併用することを意識して作成することで,作業効率の向上が見込める.そこで,BMLとHTMLを統括した自由度の高いメタ言語を定義し,そのメタ言語BHML (BML HTML Markup Language) の記述からBMLソースコードとHTMLソースコードを出力するツールCBAH (Creating BML AND HTML) を作成した.

 制限はあるもののHTMLの記述を許すことで,HTMLの記述がBMLではどのような記述となるか見比べることができる.それにより,BMLの学習の補助的ツールとしても役立つ.また,可能な限りHTML記述を許容することによって,Webコンテンツを放送コンテンツに変換することが容易になり,コンテンツの再利用を促進する.なお,今回はプロトタイプとしてある程度の制限を設けた仕様とした.

BHMLは,基本的にBMLの記述を包括した言語とした.それにHTML固有の記述をいくつか許すことによって,BMLとHTMLを統括する.各要素の属性に関して,BMLとHTMLの両言語の記述の併用を許している.

 BMLが絶対座標を指定するのに対して,HTMLでは絶対座標を指定しなくてもブラウザ毎に相対位置での表示を行なうことができる.今回は,放送コンテンツの新規作成がテーマとなるため,各要素は絶対座標を指定することを一つの制限事項とした.

 また,メタ言語は要素を定義したものであり,動的処理を行なうスクリプト部分とスタイルシートは対象外とした.

 BHMLで記述されたソースコードからBMLとHTMLの両ソースコードを出力するメタ言語変換ツールCBAH (Creating BML AND HTML) を開発した.これを利用することにより,放送コンテンツとWebコンテンツを新規作成する場合,BHMLで記述すれば同時に作成作業が可能となり,作業時間を軽減することができる.同じBHMLソースから,BMLに変換して表示した例を上原・図2に,HTMLに変換して表示した例を上原・図3に示す.なお,CBAHに関してはCBTH2と共通したい処理が多数ある.既存ソースコードを流用することで,実装時間の軽減を図った.

 

BML変換後BMLブラウザ表示例図

 

上原 図 2 BML変換後BMLブラウザ表示例

 

HTML変換後,HTMLブラウザで表示した図

 

上原 図3 HTML変換後,HTMLブラウザで表示



11.PM評価とコメント(終了時)


 案の定,上原君は会社の仕事が忙しくなり,プロジェクトに割ける時間をかなり食われてしまったようだが,当初計画していたメタ言語BHMLの設計と,それをBMLおよびHTMLに変化するツールCBAHまでプロトタイピングできた.なかなか頑張ってくれたと思う.

 BMLを取り巻く状況はいまだに変化していないようだ.つまり,一向にブレークしない.それはBMLが放送局という極めて限られた場所でしか使われないものだからということと,デジタルデータコンテンツにいまいち人々が飛びついていないことから来ている.実際,PCとテレビの境界が曖昧になりつつある現在,BMLやHTMLの絡みについてはちょっと先が読めない.しかし,曖昧になればなるほど,PCでテレビ放送のようなコンテンツを見る機会が増えるはずである.そのようなこと見越すと,メタ言語BHMLのようなものについてプロトタイプ的な設計や実証実験を行なっておくことは損ではない.

 実際,デジタルデータコンテンツを作成しているテレビ局に上原君が行って意見交換したところ,テレビ局のほうでもBHML/CBAHの方向性には大きな関心を示したとのことである.コスト面,運用面ともに利用価値があると思われたようだ.著作権の問題のクリアがその前に必要かもしれない.BHML/CBAHはいいが,上原君が主張している,テレビ局が既存のWebページを再利用してデジタル放送することは少々考えにくい.テレビ局としてのプライド(?)もあるだろうし,こちらもあちこちに著作権の問題が絡んできそうだ.

 なにはともあれ,ほかに誰もやっていそうにもないことを一人でコツコツやっていること自体,十分にユニークである.いつどこからお呼びがかかるかわからない.

 中間コメントでも言及したが,若い人は会社の通常業務のほかに未踏のような仕事に取り組むにはいろいろな障害がある.会社の理解は必須だが,それとて諸般の事情でいつどう変わるかわからない.未踏ユース事業を今後続けるなら,そのあたり,もうちょっと試行錯誤が必要であろう.あるいは,未踏ユースのブランド力を上げて,会社の理解をもっと得やすくする必要があるだろう.




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