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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM


 伊知地 宏  (ラムダ数学教育研究所 代表)



2.採択者氏名


 代表者

坂本 大介(公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学専攻 博士課程 前期 1年)

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


 株式会社エスイーシー



4.委託金支払額


 9,982,471円



5.テーマ名


 共感する部屋



6.関連Webサイト


 なし



7.プロジェクト概要


 本プロジェクトは,部屋の中にいる人の声,動き,部屋の明るさ,温度,音などを感知して,それらの情報を自動的に分析・解釈し,まるで部屋が部屋の中にいる人や状況を把握し共感しているかのように感じるよう,部屋にある写真立てや額縁のよう形状のディスプレイにグラフィカルに表現することを目標としている.



8.採択理由


未踏ユースで開発した「心ののぞき窓プロジェクト」をさらに発展させ、部屋の状況をセンサーで読み取り、部屋の中の雰囲気を察して壁が色や模様を変えるという、未知の領域へ挑戦する非常に面白い開発です。インタラクティブアートへの活用も考えられます。どのような結果が出るか未知数的なところも多いのですが、開発者は非常に若く才能もあり、今後さらに大化けする可能性が高いと感じます。PMが予想する以上の成果を出す可能性が十分にありえます。今からどんなものが出来るかわくわくするプロジェクトです。ハードウェア開発費が不足すると思われるので、申請予算より増やしての採択とします。




9.開発目標


 人および部屋の雰囲気に共感する部屋を実現するために,以下の機能・装置が開発される.
  (1) 部屋の状況を監視するプログラム:共感エンジン
  (2) 部屋の状況を得るためのセンシングデバイスとセンシングプログラム
  (3) 部屋の状況を映し出す表示器:共感ユニット(プラグイン)
  (4) 表示装置(インテリア・ディスプレイ)
 人や部屋の状況に応じて部屋が共感していると感じるように,インテリア・ディスプレイにグラフィカルな模様が表示されることを最終目標としている.




10.進捗概要


 概ね予定通りに開発が行われた.

 (1) 部屋の状況を監視するプログラム:共感エンジン
 主要な機能であるセンシングデバイスとの通信や,センシングデバイスから得られたデータを分析・解釈するための正規化の機能について,ほぼ実装が完了した.正規化されたデータを共感ユニットに渡す機能に関しても実装が完了した.

 (2) 部屋の状況を得るためのセンシングデバイスとセンシングプログラム
 温度,光量,人の動き (モーション),音のセンシングを行うデバイスの実装は完了した.また,センシングデバイスをPC側から扱うためのプログラムの作成も完了して,問題なく動作している.

 (3) 部屋の状況を映し出す表示器:共感ユニット(プラグイン)
 共感エンジンから得た情報を表示するソフトウェアは12月以後に開発が行われ,表示方法の方向性でかなり混迷状況に陥ったが,PMやいろいろな方々のアドバイスの結果,ほぼ目標としているレベルの物が出来上がった.しかし,細かいところでは積み残した課題が山積している.

 (4) 表示装置(インテリア・ディスプレイ)
 表示装置の仕様設計を行い,製作を外注して完成させた.




11.成果


 温度,光量,人の動き (モーション),音に関するセンシングデバイスで部屋の状況を獲得することができた.獲得したデータを処理して正規化するソフトウェアも完成し,これにより部屋の状況を監視し数値化して分析する部分については問題なく動作している.
 本プロジェクトのキーとなる部分である表示系ソフトウェアについても,何とかプロジェクトの目標としているレベルに近いものが出来た.

 

部屋が静かで適温を表すイメージ図 部屋が少しざわついていて温度も高いイメージ図

 

 上の左側の表示は部屋が静かで適温を表すイメージである.それに対して右側の表示は部屋が少しざわついていて温度も高いときを表している.実際には,センシングデバイスで得た状況に応じて,個々の図形が移動,消滅,発生を繰り返し,ちらちらちらちらした感じになっている.配色は(株)日本カラーイメージ研究所のカラーイメージスケール (色とファッション関係の言葉を関連付けたデータベース) に基づいている.

 

状況を現す線と色イメージ図1 状況を表す線と色イメージ図2

 

 上の表示では線と色で状況を表していて,左図が定常状態であり,人が移動したりすると右図のように線の間隔が乱れ,赤系の色も入ってくる.

 

生命体イメージ図1 生命体イメージ図2

 

上の表示では生命体をイメージしていて,部屋に人がいないときには左図のように生命体が活発に動き,人がいると右図のようにまとまって静かにしているというものである.
 別のイメージも用意されていて,部屋の状況に応じて表示形態が変わるアルゴリズムになっている.
 数字や文字の情報でなく,感性に訴えかける視覚的な2次元グラフィックスによる表示方法で,部屋がどんな状況になっているのかを何となく人に伝えるものである.自分のいない別の部屋をプライバシーの侵害をせずに状況 (雰囲気) を知るような使われ方が作成者の所属先で行われている.




12.プロジェクト評価


 卒業論文の準備・作成などの関係で,本プロジェクトは9月から開発が開始されたが,前半3ヶ月間で部屋の状況を得るための基盤部分は全て開発が終了し,今年度特例の契約期間外である12月と後期の合計2ヶ月半程で表示系ソフトウェアの開発が行われた.
 センシングデバイスの開発とセンサーから得たデータを扱うソフトウェアの開発はきわめて順調に進み,人の移動など微妙な動きに対してもかなり正確にデータを取ることができた.しかし,表示系に関しては決定打となるアイデアがなかなか出ず,悪戦苦闘の連続となり,なんとか期間内にある程度のレベルのものが開発されたという状況である.
 本プロジェクト「共感する部屋」においては,表示系のところが開発で最も重要であり肝となる部分でもあるので,評価はこの点を中心に行うことになる.感性的な問題に着陸点を求める本プロジェクトでは,明らかに着陸失敗という状態に陥ることはない.説明を受けてからこのシステムの表示イメージを見せられると,何となくそんな感じかなと見えてくるから不思議であるが,初めてこのシステムを見た人が説明もなしに,このシステムに「共感」するかどうかはわからない.表現イメージには疑問を感じるものもいくつかあり,「共感する部屋」ではなく「共感させられる部屋」なのかもしれないと感じる.

・未踏性: A
 感性に踏み込むあまり類のない怪しげなソフトウェアであることを評価する.
・先進性: B
 現状では技術的な先進性はあまり感じられない.
・実用性: B
 病室とかお年寄りの一人住まい,あるいはこの部屋のドアを開けてよいものかというときに使えそうな感じがする.インタラクティブアートへの応用があるのではないかとも感じている.
・社会への影響: A-
 怪しげなシステムとして,癒しロボットのような影響があるかもしれない.実際,のんびりと眺めていると感性を刺激し面白い.
(A: 高い,B: 並,C: 低い)




13.今後の課題


 部屋の状況を表示するソフトウェアの革新的なアイデアが求められる.現状では表示される画像が単純で,何を表現しようとしているのかわからないことも多い.絵は場合によっては文字よりも情報量がはるかに多いので,本当にそうだなあと思わせる表現形式を開発することが,このシステムの成否を決めるであろう.常識に縛られず,常識をどんどん破っていく考え方を持って,果敢に挑戦していくことが必要であり,それが今後の課題である.

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