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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM


 石田 亨  (京都大学大学院 情報学研究科 教授)



2.採択者氏名


 代表者

須之内 元洋(東京大学大学院 修士課程学生)

共同開発者

松原 慈(interdisciplinary design practice | *assistant)
山田 智之(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 博士1年)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社ジェイテックプレーヤーズ



4.委託金支払額


 7,990,827円



5.テーマ名


 位置情報を用いた都市型空間情報ハイパーリンクシステム



6.関連Webサイト


 http://www.creative-box.org/

 http://www.media.k.u-tokyo.ac.jp/~sunouchi/master_thesis_sunouchi_abst.pdf

 http://www.media.k.u-tokyo.ac.jp/~sunouchi/master_thesis_sunouchi.pdf



7.プロジェクト概要


通信手段としての携帯電話の発達はピークを超え, 気軽に写真を撮れたり, 高精度で位置情報を確認する機能が付加されはじめている. しかし, 現段階のモバイル環境では, 閲覧する情報はビジネスとして供給されるものであり, 個人の情報発信はメール程度に制限されている. こうした現状を踏まえ, 本プロジェクトでは, 都市記憶のアーカイブとその自在な活用を目指している. 各個人は, 携帯電話を利用して, 都市での体験を自由に記録することができる. 記録されたデータは, 個人に日々の記録として還元されるだけでなく, 誰もが共有できる形で可視化され, 相互に閲覧可能なものとして提供される. このような一連の流れは, 携帯電話と位置情報を活用して, 都市という場を共有する人々を積極的に結びつけるインフラとなる.

具体的には, 位置情報取得機能とカメラを備えた携帯電話端末, デジタルカメラによって収集した都市情報を, 保存・整理して, 時間, 位置情報等のメタ情報を用いて活用するソフトウェアの開発を行う. これは, 個人やグループが位置情報とコンテンツを自分の為に取得し位置ベースで共有する試みである. 共有されるデータはボトムアップ的に多くのユーザから集められたものである. 記事の生成には情報収集・整理過程で得られたメタデータが活用できる. これにより, 既存のWeblogにはない, コンテンツ作成の前段階を支援することが可能となり, 再利用可能なメタデータを含んだ形式のコンテンツをWebで公開することができる.




8.採択理由


本提案は、都市記憶のアーカイブとその自在な活用を目指しています。 街を歩く個人からのボトムアップなコンテンツ形成を、特に携帯と写真を用いて実現しようとしています。 携帯電話のカメラは完全に市民権を得た感があります。 多くの写真から、街の空気が伝わってくるようなシステムの構築を期待したいと思います。 建築科出身の申請者がコンピュータ技術者との接点で生まれるシステムが楽しみです。



9.開発目標


本プロジェクトでは, 下記の2つの枠組みの開発を進める.

 ・位置情報取得機能とカメラを備えた携帯電話端末, デジタルカメラによって収集した都市情報を, 保存・整理し, 時間, 位置情報等のメタ情報を付加して活用するための「クリエイティブボックス」.
 ・データ定義, 入力フォーマット, 出力フォーマットを含む共有データベース定義を用い,ユーザの協働によるコンテンツ制作を促すとともに, 公開されたコンテンツのメタデータを活用するための「共有パブリッシングシステム」.

前期においては, 「クリエイティブボックス」を中心に開発と評価テストを行う. 最終的には, 「共有パブリッシングシステム」の仕組みを, 「クリエイティブボックス」のコンテンツ公開機能として取り込み, 一般に利用できるパッケージとして公開. 「共有パブリッシングシステム」は, 「クリエイティブボックス」の Weblog パブリッシュ機能として基本テンプレートとともに実装する.




10.進捗概要


以下のとおり開発が行われた.

 ・ クリエイティブボックス サーバーサイド CGI・モジュール群
Flashクライアントとの通信を行うインタフェースの開発を進めた. 位置ベース表示の各種データをクライアントへ送信する機能, 記事と写真をXML-RPCプロトコルによってWeblogへパブリッシュする機能の実装を完了し, 既存部分とあわせてテストとデバッグを繰り返した. さらに, ユーザログイン, POP3経由での写真画像ファイルの取り込み, アップロードした写真画像ファイルの取り込み, Flashクライアントの起動といったソフトウェアの実利用に必要な各種機能を, HTMLインタフェースによって提供するCGIを開発した.

 ・ クリエイティブボックス Flashクライアント
位置ベース表示部分の改良, 写真の共有機能と共有写真の表示機能の追加, 作業時における画像の一時保管スペースの追加, Weblogへのパブリッシュインタフェースの追加を行った.

 ・ 写真共有のためのインデクスサーバ
FlashクライアントからPingされたURLをキューに保存するインタフェース, 画像URLを巡回してRDFをパージングするロボット, ロボットによって収集されたメタデータとURLをインデクスに収める機能, Flashクライアントからの共有データの要求に応じてデータを返すインタフェースの実装を行った.




11.成果


初期の計画では, CGIのみによるWebアプリケーションとしてソフトウェアを開発する予定であったが, ユーザのソフトウェア利用のシチュエーション, Web上に存在する写真コンテンツの利用方法に関する検討を積み重ねた結果, CGI及び, スムーズな操作が可能なGUIを備えたFlashクライアントのパッケージとして開発が行われた. ボトムアップ的に収集されたデジタル写真コンテンツを, メタデータを利用して有用に活用するという当初の目的は同じであるが, ユーザが日常的に活用できるものとして, より利便性, 実用性の高いソフトウェアを開発できている.

後期開発には, 8名の実ユーザによるソフトウェアの利用実験を行い, ソフトウェアの利用状況調査, 詳細なログ解析, アンケート結果などから, 既存の位置情報BBSと呼ばれるシステムに対する優位性を確認している.

成果はhttp://www.creative-box.org/で公開されている. また, ユーザ利用実験に関する論文概要(PDF 4.7MB)と本文(66MB)は, それぞれ以下のURLで公開されている.
http://www.media.k.u-tokyo.ac.jp/~sunouchi/master_thesis_sunouchi_abst.pdf
http://www.media.k.u-tokyo.ac.jp/~sunouchi/master_thesis_sunouchi.pdf




12.プロジェクト評価


携帯電話端末で記録した写真のWeb上での整理・編集・共有・利用するための「クリエイティブボックス」を開発した. 生身の個人によって撮影されたものがボトムアップ的に結合していくのが特徴である. 時系列的、空間的表示をともに備えているのも印象的である. 拘りともいえるほど地図は使っていない. 見慣れない地図に意味はない, 地図に頼らず位置(緯度、経度)だけで勝負する, 地図なしで町の輪郭が浮き出てこなければ駄目だと考えている. 地図を付けるのは技術的にはいつでもできるという姿勢は好ましい.

ユーザインタフェースは良くできている. メールやBBSのテキストメッセージのように写真を気軽に扱うことの面白さを感じさせている. 社会的インフラ(災害, 事故, ニュースのサーチ)としても意味があるし, 観光案内, レストランガイドとしてeコマースにつながる.

近傍検索と時間検索を組み合わせて横断的に記憶をたどれるのが「クリエイティブボックス」のポイントだろう. サンドボックスという作業域を設けてWeblogへのパブリッシュなども簡単にできる機能も備えている. 教育やフィールドワークのためのツールとしても有効だろう.

ソフトウェアの個々の部分について, 建築学を背景とするメンバーと情報科学を背景とするメンバーとが, 開発を進めながら議論を繰り返し, そのフィードバックを開発に活かしている. 情報科学の視点だけでなく, 「異なる分野を専門にもつメンバーが日常的に使ってみたいと思えるソフトウェアを開発する」という目標を常に意識して, プロジェクトに取り組んだことが伺える. この結果, 複数のユーザからボトムアップに収集されたコンテンツを, ネットワークを通じて共有しながら, FlashのGUIを使ったスムーズな操作により写真の編集・整理・コンテンツのパブリッシュを行うソフトウェアが生まれている.

携帯電話のカメラは完全に市民権を得た感がある. 多くの写真から, 街の空気が伝わってくるようなシステムの構築を期待したい.




13.今後の課題


アプリケーションとして配布できるよう, デバッグ, インタフェースの改良, ドキュメントの整理を進め, パッケージとしての完成を目指すことが必要である. 現段階では, 「クリエイティブボックス」の基礎部分ができたという段階であり, ソフトウェア公開後のフィードバックを得ながら, バージョンアップを重ねていく必要がある.

また, この開発テーマの初期の目的は, 「都市記憶のアーカイブとその自在な活用」である. 写真整理ツールの亜流とならないよう, 初心に戻った設計の見直しも必要と思われる.


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