|
■概要
学校においては、OSSを活用したデスクトップを導入しやすい条件として、導入機種やアプリケーションが比較的特定されていること、利用形態を類型化しやすいため導入成果を授業間・学校間で共有して活用できること等が挙げられます。
一方で、OSSの普及の阻害要因として、これまで日本語入力やインストール等の使い勝手の問題、システムの導入、維持・管理、利用サポートに対する不安が挙げられていました。
このような状況をふまえて、IPAでは小学校から大学まで全国で17校、約3800名の児童・生徒・学生の参加を得て、実際の授業における実証実験を行いました。その際、利用者の使い勝手やアプリケーションの動作状況などを確認するとともに、遠隔サポートによるシステムの保守運用を行い、OSSの有効性を検証しました。
OSSデスクトップ環境について、このような大規模かつ広範囲な実証実験が行われたのは、日本では初めての試みです。 今回の実証実験では、様々な利用環境を考慮に入れて、@Linux専用デスクトップPCを利用するもの、およびACD起動のLinux(KNOPPIX)を利用するものの二つの形態で実施しました。
■ 実証実験の結果
(1)Linux専用デスクトップPC利用による実証実験
実験期間 :2004年10月〜2005年5月
参加校 :つくば市5校、岐阜県3校、埼玉県1校、計9校
参加生徒総数:3089名
参加企業 :株式会社三菱総合研究所、他全9社
1) 既存の商用ソフト向け教育用コンテンツに一部改良を加えることによって、LinuxPC上で問題なく動作することを確認できました。操作性についても、Linuxへの移行による特段の支障はみられませんでした。(Linuxへの移行実験)
2) Linuxでは不得意とされていた動画コンテンツが、OSSのアプリケーションを改良することで対処できることを確認しました。
3) Linux専用デスクトップPCに合った保守形態として、自動設定、リモート保守、遠隔地サポートを適用しました。
(ア) 「クラスルームPC管理ソフトウェア」を開発し、夜間にクラス全体のパソコンを自動的に所定の状態(例えば、授業開始時点の状態)に戻すことを可能にしました。従来は教師が一台一台のパソコンを点検し、個々に設定を行う必要がありましたが、本ソフトウェアによって、教師の負荷を大幅に削減出来ることが確認されました。
(イ) また、同ソフトウェアによって、ソフトウェアのアップデートやバグ修正の効率的なインストールが可能になりました。
(ウ) 遠隔地(東京−岐阜間)からのリモート操作により、システムトラブルに対応しました。
4) 特に小学校の場合、実験に参加した児童はLinuxPCに問題なく順応し、約80%が習熟度として「使えるようになった」と回答しました。また、教師からは、LinuxPC
は機能的にほぼ要求を満たしており、学校のITを活用した授業に十分使えると評価され、約80%が総合評価として「十分満足」「ほぼ満足」と回答しています。
(2)KNOPPIX利用による実証実験
実験期間 :2005年1月〜2005年6月
参加校 :前半(2005年1月〜3月)関東・関西の小学校、高校、専門学校4校
:後半(2005年4月〜5月)北海道・関東・関西の大学4校
参加生徒総数:673名
参加企業 :株式会社アルファシステムズ
1) 教師、生徒は、初回の授業開始時の短いインストラクションで、KNOPPIXを使えるようになりました。
2) CDとUSBメモリを組み合わせることで、学校と同じLinux環境を自宅で立上げることができるというKNOPPIXの特徴を生かして、学校と自宅で継続して学習に取り組むことが出来ることを実証しました。
3) 教育現場においては、他の教師・生徒への配慮からPC上に新しい学習環境を導入しにくい面がありますが、KNOPPIXを利用することでそのような問題を解消できることを確認しました。(CDを抜けば元の状態に戻る。)
4) 障害発生時であっても、CDからの再起動で簡単に復旧出来るということが、教育現場では有効にはたらき、教師からも高く評価されることが解りました。
■ 今後の展開
(1)実証実験で得られた資料の公開
本実証実験の成果は、IPAのホームページ上で、詳細な数値データや、実証実験に協力頂いた学校関係者・生徒各位のアンケート結果など詳しい内容を公開します。さらに、実験実施中に使用された利用者向け、導入検討者向け、SI業者、サポート業者向けの資料が含まれています。
(2)導入ガイドブックの作成
今回の実証実験の結果を元に、学校関係者ら学校へのパソコン導入を検討する立場の人に向けたガイドブックを作成します。OSSデスクトップ導入にあたって検討すべきポイント、導入・運用コストの考え方の解説等について取りまとめ、本年秋を目処に公開する予定です。
(3)サポートビジネスモデルの例示
実験に参加した企業各社は、本実証実験を通して、障害保守事例の分析などを含め、導入コストや運用コストを評価しました。その結果、学校教育現場でのOSSを活用したデスクトップ環境におけるサポートビジネスやカスタマイズビジネスが十分ビジネスとして成立する、という結果を得ることができました。例として、ヘルプデスクと遠隔サポートを組み合わせた保守についてと、KNOPPIXの利用を前提とした、学校向けIT教育システムの導入コンサルタントについて、報告されています。
(4)教育関係者に向けた普及活動
教育関係者を対象とした学会、展示会等への発表を活用し、本事業の普及を図ります。
■ まとめ
IPAは、今回の実証実験の成果がOSSを導入しようと考えている学校や団体・企業などの判断の一助と成り得るものと考えています。加えて、PCベンダやシステムインテグレータの、OSSを活用したデスクトップ環境に対するサポートビジネスやカスタマイズビジネスへの新規参入を促し、OSSの普及・促進に道を開くことが出来たと考えます。
■詳細については、以下のURLをご参照ください。
http://www.ipa.go.jp/software/open/2004/stc/eduseika.html
|