平成14年度未踏ソフトウェア創造事業(未踏ユース)

採択案件評価

1.採択者氏名 川合 秀実 27歳
2.プロジェクト実施管理組織 株式会社メディアフロント
3.委託金支払額  3,000,000
4.テーマ名  新OS,OSASK(おさすく)の開発
5.関連Webサイトへのリンク  http://www.imasy.org/~kawai/osask/
6.テーマ概要

 川合君は以前からOSASK (おさすく) という新規OSをオープンソースで開発しており,本テーマはその開発計画の一部である.

 提案テーマは,OSASK上でC言語によるアプリケーション開発を可能にするような開発環境の構築と,OSASKの高解像度対応である.

 OSASKは以下のような目的・方法で開発されている.

 (1) 現在のOSに求められる機能 (WindowsやLinuxがもっている機能) を備え,かつ高速・高効率にする.
 (2) 新規OSが持つアプリケーション不足問題にはエミュレーションなどで解決する.
 (3) さらに新時代のOSを目指して特徴的な機能を追加する.

 OSASKは未だ開発途上であるが,現在ver.3.0に達し,以下のような特徴をもつ.

 (a) フル32bit,マルチタスク,GUIをサポートしている.
 (b) 「CPU: 486,メモリ: 5MB,ハードディスクなし」で十分に快適に動作する.
 (c) AT互換機版とFM-TOWNS版と9801版があり,OSのサイズは50KB前後,486パソコンでの起動時間は3秒である.
 (d) アプリケーションがコンパクトに書ける (テキストエディタが6KB弱など).

7.採択理由

 テーマ申請自体はレガシーハードでOSASKを動かそうというやたらと後向きの計画だったが,前向きの計画に変更してもらった.このようにOSをまた一からつくり直すというプロジェクトは大きな予算ではできないが,日本の若い人の元気印が脈々と過去を繰り返し,その経験を血とし肉として成長していくプロセスを支援することが重要だとPMは考えた.

 このプロジェクトが中学生とか高校生が自分の手に届くものになればもっとよい.「見せしめ」,もとい,「引立て」に意義があると強く感じた提案である.でも,瓢箪から駒もあり得るとPMは期待している.プレゼンで発露した川合さんのキャラクタも気に入った.



 
8.成果概要

OSASK計画とは川合君が構想したOSASKというOSをオープンソースで開発しようというプロジェクトで,2000年4月に開発が本格化したものである.未踏ユースで,その息の長い開発フェーズの一部を支援したことになる.

 今回の未踏ユース期間中の成果は,

(1) これまでWindows上でのクロス開発しかできなかったアプリケーションが,OSASK上でgcc (C言語)を動かして開発することが可能になった.

(2) OSASKの表示能力が向上し,高解像度・多色化に対応した (これまでは800x600の16色までしかできなかった).

(3) コミュニティが順調な成長をした.具体的には,OSASKのWebページが月間アクセス数1万くらいを維持していることと,初めてオフ会を実施できたこと.このオフ会には中学生や高校生も参加した.

という予定したものに加え,

(4) 移植性とコンパクト性で優れた改造gcc-3.2を開発した.MinGWとの比較で,大きな優位性を実証できた.

(5) OSASKの起動速度がさらに向上し,起動時間が3秒から1秒に縮まった.

(6) これまで,外部記憶としてFDDしか使えなかったが,HDDアクセスが限定的ながら可能になった.

(7) OSASKの簡易プレゼンテーションツールを開発し,OSASKのプレゼンテーションをOSASKでできるようになった.

 OSASKは発展途上のオープンソースOSであり,未実装のものが多い.実装されていても部分的なものが多い.さしあたっての最大の難点はネットワーク周りが未実装であることである.今後は

 ・起動シーケンスの大幅な拡張
 ・HDDやCD-ROMのサポートの改善
 ・インターネット周りのサポート
 ・コミュニティのさらなる成長

が重点課題になる.

 OSASKについての最新の情報は

    http://www.imasy.org/~kawai/osask/

から得ることができる.川合・図1,川合・図2はそこから取ったOSASKの画面例である.


川合・図1



川合・図2

 
9.PM評価とコメント

 川合君は個性派が揃った今回の未踏ユースの開発者の中で突出したユニークさをもっている.PMは未踏本ちゃんのときから,「無職」の人を採択する癖(?)があるが,彼も無職だ.未踏事業でなくては発掘できない人だと思う.

 川合君は一見,ドンキホーテのような,まかり間違うとガリガリ亡者にならないともかぎらない無謀さをもっているように見えるが,その実,非常にウォームハートで周囲や若い人への思い遣りがある.OSASKコミュニティには川合君のこういうキャラクタに惹かれて集まっている人も多いのではないかと想像する.日本発の独自OS開発プロジェクトとしては最大のオープンソースコミュニティを有しており,若年層 (中学生・高校生など) の支持が他と比べて大きいことも特徴である.中学生や高校生にOSの面白さを体感してもらうことの意義は大きい.

 OSASKは究極のOSとなるべく,徹底して速さやOSのインストールサイズの小ささを追求しており,これによって何世代も前のパソコンで動作可能であったり,消費電力が少なく抑えられるという特徴をもつ.これは川合イズムと命名してもいいくらいに徹底しており,「コードサイズが小さいこと命」があちこちにありありとしている.また,実際にそれが裏付けられているところが見事である.性能も高い.贅肉をそぎ落すとシステムはここまで軽くなるのかという感慨に打たれる.OSASKのWebページを見ると,川合君のいろいろな哲学が披露されていて,読むとなかなか楽しい.

 川合君が成果調査会に持参していたLibrettoはコンパクトフラッシュ (CF) をHDDの代わりに使っていた.いまどきのCFの容量は一昔前のHDDと変わらない.OSASKのようなコンパクトなOSだと,CFにより回転メカのまったくないノートPCができるわけである.しかも,CFを外して,ほかのマシンに突っ込めば,OSごとほかのマシンに寄生できてしまう.これは面白いアイデアだと思う.いつかはPDAへの進出を期待したい.OSASKの完成度が上がれば,(ただ,プアマンズOSと言われるだけではなく) どこかにちゃんと生きるニッチがあるはずである.

 OSをゼロからつくるには長い道のりが必要だ.gccの移植により自前の環境で開発することになり,開発は加速すると思われるが,やはりネットワークの実装が次の最大の課題だろう.ここを越えれば,もっと広い視野が開ける.

★ スーパークリエータに準ずる: 向う見ずのドンキホーテと見えて,その実,高いプログラミング能力と独自の哲学をもつ逸材.ただ,独自なところが強すぎるかも.彼の努力と成果が花開くことを願う.

   
(補足)