〜天才プログラマー/スーパークリエータの認定者と 
 プロジェクト・マネージャー(PM)の評価基準について〜


T.天才プログラマー/スーパークリエータの認定者

 下記の開発者(敬称略)は、優れた開発成果を残し、担当プロジェクト・マネージャー(PM)から「天才プログラマー/スーパークリエータ」との評価を得ました。
  (注)開発者の所属は事業実施時点の所属です。

平成14年度


(1)中尾 恵(京都大学大学院 情報学研究科 博士後期課程)
 テーマ名  実時間力学計算手法のライブラリ化と手術シミュレータの開発
 金出 武雄PM
からの評価
 大動脈壁に対する触診という有用な現実の問題を例に、反力計算、前処理、グラフィックス、力覚提示装置をすべて統合した実時間システムを作り、それを実際に大動脈触診シミュレータとして実験的に臨床実習へ導入し、医学生の医療応用の体験を目的とした授業の一部として使用されている状態にまで持っていき、かつ、実時間力学計算ライブラリのインターネット配信まで実現できた。これは単にソフトウエアを作るというだけでなく、ユーザー特に扱いが難しい医療関係においてユーザーの要求を取り入れ実用に供するものを開発するという、ソフトウエアエンジニアの本来あるべき能力を示したことはきわめて高く評価されるべきであり、中尾氏を天才/スーパークリエータと評価するものである。
 開発成果評価書   


(2)藤井 敦(筑波大学 図書館情報学系 助教授)
 テーマ名  CYCLONE: 最強事典サイトの構築
 喜連川 優PM
からの評価
 藤井氏は2年目ということもあり、一年目の実績の上でシステムを開発していったため、他の開発者に比べると優位であったと言えるが、センスの良い「事典サイト」を構築出来たと考える。藤井氏は自然言語関連の基礎的な知識を広く有すると同時に、システム開発に関する高い能力を有し、その才能により、本プロジェクトにおいて、切れ味の良い、ソリューションを導出出来た。
 前年度は検索エンジンと比べた評価を行い十分な優位性が示せなかったことから、当初、手で単語数を増やすなどの提案がなされたが、新語抽出に軌道修正し、興味深い成果を得ることができた。開発したサイトと同レベルのシステムは他に例が無く、是非、公開によるフィードバックを介し、更なる高度化が進められることを期待する。スーパークリエータとしての藤井氏の今後の活躍を確信する。
 開発成果評価書  


(3)田中 浩也(東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤工学専攻 博士課程)
 テーマ名  写真画像群による個人の空間軌跡の3Dコンテンツ化支援ツールと、それを用いた実風景型Webブラウザ
 田中 克己PM
からの評価
 開発ソフトウエアの根底にあるアイデアの面白さ、新規性、有用性は申し分なく、さらに、事業化を志向した企画立案能力および高いソフトウエア開発能力が認められ、天才/スーパークリエータにふさわしいと評価できる。
 開発成果評価書  


(4)川合 史朗(フリーランサー)
 テーマ名  3Dコンテンツのコラボレーティブオーサリングフレームワーク
 近山 隆PM
からの評価
 プロジェクト遂行にあたって、まずフレームワークを確立し、それを実現するソフトウェアをライブラリからアプリケーションまで着実に設計・構築していった過程から、開発者のソフトウェアクリエータとしての非常に高い能力を見ることが出来た。開発に重要な役割を果たしたのはGaucheと名づけられたScheme言語の処理系である。この処理系は開発者自身が過去に開発したものであるが、高品質のScheme処理系として評判が高いものである。本プロジェクトに際しても、開発者が同じであるという利点を活かし、プロジェクト遂行に必要な機能を追加して用いている。こうした総合的なソフトウェア開発能力においても、たいへん高いものを持っていると評価できる。
 開発成果評価書  


(5)新井 俊一(有限会社メロートーン 取締役社長)
 テーマ名  音楽演奏情報処理を応用した教育と芸術のためのソフトウェア
 萩谷 昌己PM
からの評価
 背景となる音楽情報処理の技術力、ソフトウェアの開発力などに関して高い能力を発揮した。昨年度と全く異なるテーマでプロジェクトを成功させたことからも、限りない着想と創造力を感じさせる。さらに、独学でこのような技術力と開発力を身に付けたことは驚嘆に値する。今後の活躍を確信している。
 開発成果評価書  


(6)五十嵐 健夫(東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師)
 テーマ名  3次元グラフィクスを手軽に作成するためのソフトウェア
 増井 俊之PM
からの評価
 五十嵐氏は前年度の未踏プロジェクトですでに「天才クリエータ」の評価を得ているが、本年度のプロジェクトでも前年度に劣らず、 3次元コンピュータグラフィクスを簡単に作成するための画期的なソフトウェアを複数提案し、見事な実装を行なったことはスーパークリエータの名にふさわしいと考える。
 開発成果評価書    


(7)鈴木 健(東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程)
 テーマ名  「伝播貨幣」のデモンストレーションソフトウェアの実装
 村岡 洋一PM
からの評価
 伝播投資貨幣(Propagational Investment Currency System:PICSY)という、価値が伝播するという興味深い性質をもつ全く新しい概念をもつ電子貨幣システムを創造したことは何よりも高く評価するところである。従来の決済貨幣が決済手続きによって貸借関係を精算するのに対し、PICSYは価値の伝播性によって貸借関係を精算するという、人間社会にとって新しい価値観の精算方法であり、実際に利用できるシステムとして完成させたことは今後社会的に大変有用であり、実社会で役立つ事を期待している。
 開発成果評価書  


(8)大島 芳樹(Walt Disney Imagineering R&D, Inc. Technical Staff)
 Theme(テーマ名)  An Implementation of Multilingualized Environment on Dynamic Objects
Evaluation
(Alan Kay PM
からの評価)
 The project tackled a very hard problem -- dealing with true multilingualization of a programming environment using UNICODE as a base -- in a very comprehensive and useful way.  The excellent results will benefit both education & computer science in Japan and in the rest of the world. Each of the actual work, the presentations and the documentation were done in a timely and excellent fashion. This is first class work!
 開発成果評価書  


U.各プロジェクト・マネージャー(PM)の評価基準について

 天才プログラマー/スーパークリエータの認定等、各プロジェクト・マネージャー(PM)における開発者の「評価基準」について公開します。

1.金出 武雄PMの評価基準
1.基本となるアイデアが概念的に新しさを十分ふくむ
2.出来上がったソフトウエアの機能とその規模が実用に十分耐える
3.実際のユーザーに試用に供され、その有効性が実証された
4.上記の要件を満たすソフトウエアを開発するにあたり、その理論開発、設計、ユーザーとの折衝、説得力のある発表などすべてを実行できた人


2.新部 裕PMの評価基準
1.普通の状況ではできない, 大変なことにチャレンジしているか?
2.他の人ではできない, これまでにない新しいことにチャレンジしているか?
3.国際競争力があるか? 活動は国際的なひろがりがあるか?
4.継続してプログラミングの活動を続けてきているか, これから続けられるか?
5.個人としてだけでなくチームとして開放型の開発を推進する力を持っているか?

 プロジェクトの評価, 開発したソフトウェアの評価および開発者の実力そのものとは少し離れて, 総合的な人間力, この1年での向上, 今, 抱いている野望とこれから伸びる(かもしれない)将来性を評価した。


3.喜連川 優PMの評価基準
 今回採択した開発者は、テーマによって以下の3カテゴリに分類できる。各カテゴリにおいて目標を定め、その達成度を評価の尺度として用いた。
1.「広く公に利用されるツール・システム構築」
2.「新規ビジネスの可能性を探るソフト開発」
3.「研究的要素を有する斬新なソフト開発」

 スーパクリエータ判定基準としては上記に加え、「開発者自身の高度ソフトウエアの作成能力、ならびに、成果物の独創性」とした。


4.紀 信邦PMの評価基準
1.目標とする技術の独創性
2.開発期間・予算に対する成果物の内容
3.プログラミング技術に関する追求の深さ

の3点から評価し、いずれについても優れていると認める開発者を天才/スーパークリエータ認定するという基準とした。


5.田中 克己PMの評価基準
1.アイデアの斬新さ・新規性
2.開発ソフトウエアの有用性
3.企画立案能力
4.ソフトウエア開発能力


6.近山 隆PMの評価基準
1.社会のニーズと現時点のソフトウェア技術のシーズを把握し、必要で開発可能だが未開発であるソフトウェア分野を同定できる、構想力。
2.将来の発展性をも視野に入れて上述のソフトウェアを適切に設計できる、設計力。この設計力にはプロジェクトの対象応用分野および既存の関連ソフトウェア技術についての知見を含む。
3.設計したソフトウェアを適切な手順により、適切な期間内に高い完成度で実現できる、開発力。ことに、実用レベルの大規模なソフトウェアを着実に実現する能力に重点を置く。

このうち構想力の部分については不十分と考えられる者はプロジェクト選択時点で不採択としているので、今回の評価は主として2.〜3.の観点によるものである。


7.徳田 英幸PMの評価基準
1. 基本的なソフトウェアアーキテクチャ、アルゴリズム、プログラミング等に関する知識を有し、抜群の応用力を持っている。
2. 卓越したセンスを持っており、単に効率が良いだけでなく、拡張性、保守性、ユーザビリティなどに関して直感的に良いデザイン、インプリメンテーションを見出せる能力を持っている。
3. 作業スピードや生産性が普通のプログラマの100倍近い能力を持っている。
4. 発想が豊かで、アイデアが枯渇しない。


8.萩谷 昌己PMの評価基準
1.企画力
 世界中で広く使われるソフトウェアを開発するには、もちろん、ソフトウェアの開発能力が必要であるが、それにも増して、世の中で必要とされているものを的確に嗅ぎ分ける能力が重要である。
2.技術力
 これはいうまでもない。当該ソフトウェアの開発のための技術力である。
3. 開発力
 これもいうまでもない。プログラミング能力だけでなく、設計、プロジェクト管理、ドキュメント執筆など、開発力は多岐に渡る。
4. 普及への意志と戦略
 開発したソフトウェアを売り込んで行く戦略も非常に重要である。さらに最終的には、開発したソフトウェアに拘って広めようとする根性としつこさが要求される。


9.増井 俊之PMの評価基準
1.プロジェクタの未踏性 (同種のものがこれまでに存在するかどうか)
2.プロジェクトの実用性 (実際に有用かどうか)
3.実装技術

を考慮して判断。


10.村岡 洋一PMの評価基準
 評価表に基づき、創造性、社会性、新規性、実用性の4項目の評価基準を定義して1−5(最高)の点数付けを行い(20点満点)評価した。

評価基準項目
創 造 性: 開発者の創造力をプロジェクトを通して評価
社 会 性: 開発者がプロジェクトと社会の係わりをどの程度意識していたかを評価
新 規 性: どの程度新規性のあるプロジェクトであったかを評価
実 用 性: どの程度実用性のあるプロジェクトであったかを評価

 評価点が16点以上の該当者を天才プログラマー/スーパークリエータに認定した。


11.Alan Kay PMの評価基準(Criteria for Evaluation)
Projects were evaluated via a number of criteria and from the start of the application process.
1. Initial proposals;
2. Progress reports were submitted periodically to PM for review and comment. Partial evaluation of overall project comes from reading and discussion/email based on progress reports;
3. Face to face meetings and presentations; at two times the project recipients gathered in Kyoto for presentation of their project. PM made evaluation of projects based on the presentation, presentation materials from both the interim and final face to face presentations;
4. Written materials presented as final report. Each grant recipient submitted papers and online materials for review and dissemination.



Last updated 26 September 2003,

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