平成13年度未踏ソフトウェア創造事業


採択案件評価書

1.担当PM  2.上林 弥彦
2.採択者氏名  木實 新一(コロラド大学生涯学習研究所リサーチフェロー)
3.プロジェクト実施管理組織  財団法人京都高度技術研究所
4.委託金支払額  13,000,000円
5.テーマ名  <質問レンズフィルタによる携帯端末向きパーソナライゼーション>
6.関連Webサイトへのリンク  http://www.q-anywhere.net
7.テーマ概要

 モバイル環境では、各利用者の要求に応じて必要な場所・時に適切な形式で情報を提供する仕組みが重要である。しかしながら、既存のシステムの多くは、サービス提供者が前もって準備した情報を、利用者に一方的に送信するモデルに基づいているため、各利用者が十分に満足できる「快適な」モバイル情報環境を実現することが困難である。
 パーソナライゼーションは、モバイル環境における最も重要な問題の一つである。モバイル環境では、利用者の好みや状況(場所、時間、従事中の作業、周囲の物や人など)に関連して、情報の様々なニーズやウォンツが生じる。これらを汲みいれたパーソナライゼーションにより、各個人に高い満足感を与えられれば、システムを成功に近づけることができるだろう。
 本研究開発では、自然言語質問およびデータベース質問を物体に貼付して共有することのできる質問レンズシステムを拡張し、モバイル環境における実用性の高いパーソナライゼーション機能を実現する。質問レンズは、平成12年度未踏ソフトウェア創造事業の支援によってプロトタイプの開発を行ったシステムである。
 質問レンズは、利用者からのフィードバックを促進するシステムであり、質問の形式で外在化された情報のニーズやウォンツをデータベースに格納しモバイル環境で共有することができる。また、能動的に利用者に質問や回答の通知も行える。
 本年度は、質問レンズの改良および拡張コンポーネント群の開発を行う。開発する拡張コンポーネント群の核となるのは、物理オブジェクトを用いた質問レンズフィルタである。同じスーパーマーケットに行く場合でも、食料を買いに行く場合と雑誌を買いに行く場合ではある意味でコンテクストが異なるが、これを自動判別することは一般に困難である。このような場合のコンテクストの明示的な指定の手段として、質問レンズフィルタを用いることができる。

8.採択理由

本テーマは、平成12年度未踏ソフトウェア創造事業(テーマ名「携帯端末を用いた質問偏在型データベース環境の実現」の成果に基づくものであり、システムの拡張によ って実用性の高いパーソナライゼーション機能を実現することを目指している。
提案者が昨年度開発を行ったシステムである「質問レンズ」は、自然言語質問およびデータベース質問を物理オブジェクトに貼り付けて共有することのできるシステムであり、情報を直接物体(や空間)に関連付ける従来のモバイル情報環境と逆に、質問 (情報のニーズ)を利用者間で流通させるものである。

昨年度は、プロトタイプを稼動させ、利用シナリオの検討を綿密に行った。独創性の高いアイディアに基づくシステムであり、またビジネス的な発展の可能性も感じられることから、成果は国内外で注目されつつある。昨年度の開発終了後も、米国および日本の研究者、デザイナー、企業、学生、様々な応用分野の専門家を対象としてプレゼンテーションとシステムのデモを行ってきている。
現在、昨年度の成果がビジネス化の種を生み出しつつある段階である。
昨年度の開発成果となったソフトウェアは、アイディアを探求するためのプロトタイ プとしての性格が強かった。本年度の提案では、昨年度のシステムの実用性を高め、 具体的なビジネスとしてのスタートを可能にすることを目指している。昨年開発したプロトタイプの利用経験に基づき、本年は、利用状況をシステムがより細かく理解す ることができるパーソナライゼーション機能を実現する予定となっている。物理的なフィルター(フェースプレート)によって情報をフィルタリングするための機能を具体的に提案しており、本人の開発能力も高いことから、システムの実現の可能性も高い。
9.成果

昨年度に引き続く採用となった。昨年度実現した質問レンズという独自のアイデアを発展させ、今年度はシステムの機能の追加や改良、および携帯電話上でのシステムの実現可能性調査およびプロトタイプ作成などを行った。質問レンズは新しいユービキタスコンピューティングスタイルを提唱するもので、現実世界の様々な物に仮想的に「質問」を貼り付けることができる。貼り付けられた質問を共有することで、状況に依存した質問を効果的に保存・再利用することが可能になる。このようにして必要な情報を必要な状況で参照することが可能になる。単なる情報ではなく「質問」を貼り付ける点が本テーマの特徴であり、異なる時間、異なる場所にいる利用者間で質問と回答という形態を通じたコミュニケーションを計ることができる。今回行われた作業の一つである「質問レンズフィルタによるパーソナライゼーション機構」の追加によって、目的や好みといった利用者のコンテキスト情報を表現することが可能になり、これによってそのコンテキストに適した質問のみが選択的に表示されるようになった。利用者にとってはPDAに装着するフェースプレートを交換するだけでこの機能が実現できるため、直感的に使いやすいインターフェースとなっている。
  
10.評価

昨年度実現された質問レンズというアイデアを、今年度は改良および発展させることによってより実用的なものとした。当初から採用していたPalmだけでなく、携帯電話でも同様の機能を実現するためのプロトタイプの作成を行った。特許を出すとともに、今後はビジネスとして発展させていく予定である。利用者にとって非常に分かりやすいユーザインターフェースとなっているため、うまくビジネスの軌道に載せることも可能ではないかと思われる。また、本プロジェクトの内容に関する特許を現在申請中である。