平成13年度未踏ソフトウェア創造事業


採択案件評価書

1.担当PM  10.松島 克守
2.採択者氏名  奥富 秀俊 (東芝情報システム株式会社 デジタルネットワーク・ソリューション事業部)
 渋谷 琢司 (クオリティ株式会社 ドキュメントソリューション事業部)
3.プロジェクト実施管理組織  東芝情報システム株式会社 
4.委託金支払額  18,341,475円
5.テーマ名  <カオス暗号+認証方式での認証局提案とコンテンツ配信・購買応用>
6.関連Webサイトへのリンク  
7.テーマ概要

 本提案は,昨年度(H12年度)未踏事業にて開発した「カオス現象を応用し,暗号化+端末認証を同時に兼ね備えた機能統合型暗号方式」に対し,(目的1)自己検証〜安全性の説明の充実化を図ると共に,(目的2)最適応用は「コンテンツ配信・購買システム」と考え,これら各部のセキュリティ要素を本方式のみで実現するという構想で,基本モデルの一提案と各部基本関数群の開発を行う.というものである.

 ここで本暗号方式を簡単に説明すると,莫大鍵長を有する高速なストリーム暗号であると共にカオス乱波形を「指紋」と見立てた端末認証として機能する統合型の新方式である.同時に,整数演算,ビット演算のみで記述するなどプロセッサ依存性は無く,さらにコプロセッサを持たないシステム(ICカード,携帯端末,ゲーム機器,情報家電など)への幅広い展開が期待できるというものである.

 これら特徴を踏まえ,本方式の最適応用は,携帯端末,ゲーム機器,情報家電などへのコンテンツ配信,および購買システムとの連携と考える.具体的には,コンテンツ購入時に本方式の端末認証機能により端末の識別〜個人の特定を行い,個人認証情報を信販会社など金融機関へ通知し決済を促すと共に,個人データ機密保持,および著作権保護目的でのコンテンツ暗号化配信など,各場面に必要なセキュリティ要素を本方式のみで解決するというもので,これら基本モデルの一提案と各部関数群の開発を行う.本認証機能は,様々な情報端末と金融機関,電子政府などをグローバルに連携させる際に不可欠な端末認証を専門に行う組織「端末認証局」として発展させていくなど,新たなセキュリティモデルの可能性を秘めていると考える.

8.採択理由

未踏にふさわしい技術的な新規性に加え、EC分野における基礎的技術分野であり、その汎用性は高く、将来のビジネス可能性は大きいと判断した。また、すでに前回の「未踏ソフト」においてすでに基礎的な技術開発ができており、実現可能性も高い。

9.開発目標

H12未踏開発を継承した
(1)コア部検証

(2)下記システムの開発
 ・暗号化/復号化
 ・認証子生成
 ・認証手続き
などの基本モジュール群の開発

(3)成果報告書
   
10.成果

上記開発目標をすべて達成し、必要な成果物受領の報告を受けている。    
 
11.プロジェクト評価

 カオス暗号は、カオス関数が「ある時点での状態(初期値)が決まればその後の状態が原理的にすべて決定される」という決定論的法則に従っているにも関わらず、非常に複雑で不規則かつ不安定なふるまいをして次の状態における予測が不可能である、すなわち「関数は簡単だが結果は複雑」という暗号技術としての優れた特性を利用したものであり、以前よりその実用化に向けた研究が進められてきた。 

 しかし、開発者も指摘するとおり、「従来のカオス暗号は高精度な再現を前提とするアプローチのため,異なるプロセッサ機種間の演算特性差にまで敏感に反応してしまう"非互換性問題",高精度コプロセッサ類を搭載したシステムに応用が限定されるなど"汎用性が乏しい"など不利点があった」。本システムは、この課題に着目し、「整数演算,ビット演算のみで実現させるといった工学応用の容易性」を実装することで、その解決を試みるものであり、実用化を大いに前進させる画期的な取り組みとして評価できる。

 また、この技術の延長線上には、「チップ化」も想定されており、その市場性は大変大きいものと予想される。

 また、「現時点で最高レベルの鍵長(現時点で16384-bit以上),多大周期(〜P(ペタ)バイト以上)を実現した。また,鍵長を増加させても処理速度は落ちないといった画期的な方式へと仕上がった」との成果は、極めて画期的なものであり、世界レベルのものとして十分に評価される。

 当事業において開発されたシステムは、「H12未踏」の成果をさらに発展させたものであるが、十分にその成果を継承し、完成度の高いものである。
 
12.今後の課題

 当成果を実際のビジネスに適用し、その運用にかかわる課題を抽出、検証する必要がある。