未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書
プロジェクトマネージャ 平木 敬
○プロジェクトの総括
1.目的・目標
本プロジェクトが当初目的としていた項目は、次のとおりである。
・未だ到達したことが無いレベルのソフトウェア創造を実現する。
・このために、組織による開発ではなく個人の資質に強く依存するソフトウェア開発を実現する
・いままでのソフトウェア開発事業ではあまり取り上げられなかった若年かつ開発組織に属していない、個人的才能を発見し育成する。
勿論、未だ到達したことが無いレベルという概念自身に幅がある。ソフトウェアの存在概念自身がいまだかつて無かったものから、新規に開発したソフトウェアまでが対象となるが、この両極端ともに現実的なプロジェクトとは成り得ない。
私が管理するプロジェクトでは、高速化という切口から到達度を求める考え方に立脚して、プロジェクトと開発者の選定、各プロジェクトへのガイダンスと方向付け、評価の取りまとめ指導を行った。これは、最も使われ重要性を持つソフトウェアは、必ず高い性能を持つという考え方に基づく。また、ソフトウェアの高速化には、基礎となる概念・理論に基づく高速化と、ソフトウェア作成技法に基づく高速化の両面があり、その双方で非常に優れたものでなければ真に高速化を達成できるものではない。本プロジェクトでは前者については提案に含まれる基礎概念・理論から判断し、後者は個人の資質に基づくものと考えた。
2.成果
「高速化した計算機システムにおける高速フーリエ変換ソフトウェア」、「実時間制御を支援する組み込み用RISCコアライブラリの開発」のプロジェクトとも、当初予定していたレベルの成果を得ることが出来た。これは、開発を担当した個人の資質によることが大であり、PMとして有効なプロジェクト管理ができたと考えている。ただし、研究開発期間が著しく限定されていたところから、ユーザへのインタフェース、細部のポリッシュアップ、動作検証の確実性ともにかなり粗削りとの印象を持っている。平成13年度およびそれ以降、この2名の開発者によるプロジェクトが継続することの意義は十分にあると考えている。
3.評価
私が管理した2件のプロジェクトは、数値計算ソフトウェアとプロセッサ記述ソフトウェアというように各々性質が異なるが、高速化とユーザにとって益のあるソフトウェアという観点からは、十分に評価できる結果が得られた。個々のプロジェクトに関する成果の評価は次章意向で述べるが、プロジェクト発足時に想定した成果を達成したと判断する。しかしながら、研究開発期間が限定されていたため、現状での評価は必ずしも十分であるとはいえない。プロジェクト成果をより客観的に評価するための拡大実験を今後行うことは必須である。
4.今後の課題
本プロジェクトについては、今後次の課題に取り組む必要がある。
・今年度の開発は、まだ可能性を示した段階で、高速化、ユーザからの使い易さともに多くの改善の余地を残している。
・特に、評価において、客観的な評価や、最も高速であることを実証するための評価という観点が不十分である。
・高速化した計算機システムにおける高速フーリエ変換ソフトウェアのプロジェクトでは、より多くのプラットホームにおける客観評価が必要である。
・実時間制御を支援する組み込み用RISCコアライブラリの開発のプロジェクトでは、SOCの一部として実際のアプリケーションと組み合わせた状態での評価、効率的組み合わせ方法の開発が必要である。
・一方、成果の普及という観点からは、成果物に関するデモンストレーションをいくつかの場所(主要国際会議の併設デモンストレーションなど)で実施することが必要である。
(以上)