平成12年度未踏ソフトウェア創造事業


採択案件評価書

1.担当PM  8.長谷川 正治
2.採択者氏名  岡本 慎太郎 (株式会社日本総合研究所)
3.プロジェクト実施管理組織  株式会社日本総合研究所
4.委託金支払額  12,889,297円
5.テーマ名  プログラム記述スキルを必要としないプログラム開発ツール
6.テーマ概要

専門的なプログラマでない人間にもソフトウェア開発が可能となる様に、コンポーネント技術を利用し、文章と図による記述でソフトウェアを開発するツールの実現を目的とする。

 特徴としては、以下の2点を有する。

1. 文章でコンポーネントの振舞いを記述する

2. コンポーネント間の関連を図的に記述する

 当提案ではコンポーネントをラッピングするものとして、コンポーネントのインターフェースや実装の違いを吸収して、統一的なインターフェースを与えるオブジェクトとして「エージェント」を定義し、外部からのメッセージとコンポーネントの処理の仲介をしたり、コンポーネントの持つ機能とその意味を形式化した形で外部に公開したりする機能を持たせる。これはユーザのニーズに合ったコンポーネントの機能を検索する為に、エージェントがコンポーネントの機能を説明する機能を持つ必要があるためである。

 開発のポイントはソフトウェア開発者がエージェントに対して自然言語の文章で命令を記述し、エージェントはそれに相当する自身の機能の一覧を開発者に示して選択させることが可能になる事で、これを実現する為には自然言語処理や情報検索技術の応用が必要である。なかでも意味解析に基づいた意味の比較によるマッチングが重要であり、これらの点が当開発の重要な技術課題と認識する。

 また、エージェント間の関連 (コンポーネント間の連携)をいかに表現し、開発者にそれを定義させるかも課題となるが、当開発ではUMLなどで定義された様々なダイアグラムを用いて、エージェント間の関連を複数の異なるダイアグラムで表示し、ダイアグラムを通じてエージェント間の関連を編集することを目的にしている。このコンポーネント間の関連の図示も、文章による振舞いの記述と同様にプログラムの可読性向上に貢献し、保守性・再利用性の向上につながるものと期待できる。
7.採択理由と期待

当ソフトウェアの開発によって、プログラミングの専門能力を持たない人間が様々なコンポーネントを組み合わせて、一つのプログラミングを作成することが可能となり企業や社会に大きな貢献をすることが期待できる。特に業務スペシャリストによるシステム開発の実現や、既存資産の再利用性の向上によって、生産性が向上し日本の重要な課題であるIT競争力の強化につながると予想される。


当開発を実現するたには、自然言語解析、なかでも意味解析の適用度が重要であり、その選定・応用には十分留意されたい。また、開発成果物が広く普及する為にはコンポーネント・サプライヤーがコンポーネントとともにエージェントを配布することであり、特に機能と意味を記述した形で外部に公開する事を実現させる手だてがポイントとなる。その為には、当ツールが十分に機能を果たし、かつサプライヤーに対しても十分なメリットを提供できることが肝要である。
8.採択時の提案に対する成果進捗に対するコメント

ソフトウェア仕様の形式的記述に関しては従来から多くの研究が行われているが、それに基づいたプログラム自動生成系にまで発展させた事例というのは少ない。本プロジェクトでは、再利用性も考慮したプログラムを自動生成する所までを目指した点が高く評価できる。 ただし自然言語処理の実装が行われていないため、テーマになっている”プログラム記述スキルを必要としない”という点が実現できておらず、仕様記述言語そのもの自体も未だ改良の余地が多くあると思われる。
9.成果に対する今後の展望

汎用性、一般性を持ったソフトウェア仕様記述をXMLベースで実現するという発想は、今後急速に普及すると予想されるブロードバンドインターネットをインフラとしたアプリケーションにおいて応用範囲の広い期待される技術である。 本プロジェクトでは時間の都合により自然言語処理技術やXML文書の処理技術などのコンポーネントは実装できなかった。 ただしその分野では既存の優れたソフトウェアも多く存在するため、それらを組み合わせるなど柔軟な発想で対処されることが望ましいと考える。 そして本プロジェクトで最も価値が高いと思われる仕様記述言語の完成度を高める事に注力されたい。