平成12年度未踏ソフトウェア創造事業


採択案件評価書

1.担当PM  7.西岡 郁夫
2.採択者氏名  浅里 幸起 (三菱電機株式会社)
3.プロジェクト実施管理組織  三菱電機コントロールソフトウェア株式会社 長崎事業所
4.委託金支払額  19,990,205円
5.テーマ名  分散シミュレータ知識普及メディアの開発
6.関連Webサイトへのリンク http://www.welport.com/kouki/
7.テーマ概要

一部地域で家庭でも利用可能になり始めた本格的ブロードバンド・サービス:基幹網:衛星マルチキャスト+アクセス網:CATVインターネット+端末:パソコンという仕組みを活用した新たなメディア創出の提案である。対象分野としては、社会教育・生涯教育を主とする教育分野、家庭や教育施設向けの知識普及である。各端末は2000年に制定されたIEEE1516標準 High Level Architecture (HLA)に基づいて接続し、講師と受講生が教育向けに作成されたCGシミュレータによる仮想空間や映像・画像などの教材ソフトを共有できる構成とする。DVDやCDとしてシミュレータ及び教材ソフトを各端末に備え、操作情報と講師の音声映像のみを伝送して端末側のソフトウェアにて豊かな映像・音響を生成する仕組みを、正確な時間管理のある統合されたアーキテクチャーで実現しようとするものである。

8.採択理由

ブロードバンドアクセスを積極的に利用しようという点で非常に 興味深いテーマである。
 しかし、IEEE1516 HLA という技術的なトピックはあるが、この仮想空間のシミュレーション技術を生かしてどのような特色あるサービスが提供でき、どのような利用価値があるのか具体的に見えていないのでこの点が注意点。
 知識提供という点は理解できるが、「知識を得たくなる」動機に関する考察と対応がほしい。もちろん動機は幾らでもあるはずで、提案者の専門分野である「天文学・宇宙科学」以外の豊富なコンテンツへの発展を検討してほしい。また、衛星通信を利用するメリットをもうすこし研究したほうがよい。
 24Mbpsの衛星トランスポンダの運用費用が毎月どの程度になるか、そのためにどのような収支構造を作るのか、衛星用アンテナの設置はどこでもできるのか、など詰めを要する。
 また、CATV インターネットでは、テレビの有料チャンネルとは違い、コンテンツに対する課金は簡単とは言えないので研究が必要。
 アクセス方式については、コンテンツが複数配信先に同時に同内容が配信されるか、衛星のような同報メディアが適切かも検討を要す。また、CATV で 30Mbps という、まだ常識的とは言えない帯域を前提にするのであれば、光ケーブルも検討すべき。
 本件の核心である、仮想空間シュミレータソフトの開発とコンテンツの構成について、もっと具体的なメリットが欲しい。
 例えば、教材はすべて講師が一から製作するか、何かの素材を受講者にも選択できるように見せるか、受講者の質問をどのように扱うか、など。

提案者が「コミュニティを作る」と言う点は「知識を得る動機」としても非常に重要であると思うので、仮想空間の実現だけではなく、コミュニティ作りのためのしくみが重要だと考える。

以上をアドバイスした上で採用とします。

9.開発評価

本プロジェクトは一部地域にて、家庭でも利用可能になり始めた本格的ブロードバンド・インターネットを用いた、知識普及のための新しいメディアの実現を目的としている。

基幹網:衛星マルチキャスト + アクセス網:CATVインターネット+ 端末:パソコンという仕組みを活用した新たなメディア創出の提案である。対象分野としては、社会教育・生涯教育を主とする教育分野、家庭や教育施設向けの知識普及である。各端末は、2000年に制定されたIEEE1516標準 High LevelArchitecture (HLA)に基づいて接続し、講師と受講生が教育向けに作成されたCGシミュレータによる仮想空間や映像・画像などの教材ソフトを共有できる構成とする。


(1) 開発結果

 本メディアを開発・実証運用するにあたり、最初のコンテンツとして開発者が長年システム開発に従事した「天文学・宇宙科学」分野を選定した。開発者は、公共天文台や宇宙開発関連の研究所や事業組織など、正確な科学知識を供給できる科学者・教育者と協力し、画像・映像・CGなどのコンテンツの提供を受けて、プロトタイプを作成した。プロトタイプでは当初計画の機能、画像の品質を実現することができた。一方、ネットワーク上で使う時に、一定時間の遅延を生じることが分かり、運用方法にてカバーする必要があることが明らかとなった。

 また、シミュレータの描き出すCGを自由に操作して、講義を行うことは、従来の教育方法と比較して視聴覚に訴えて、はるかに分かり易いことを新ためて確認した。これをインターネット上で行える本開発成果のメリットは、非常に大きいと考えられる。


(2) 今後の展開

 今回の未踏事業の開発成果を活かすため、科学教育に係わる教育者・技術者・事業家有志にて、新会社Internet Intelligence Agency(IIA)を、大阪の中心地である心斎橋に設立し、未踏事業の成果を活用したインターネット事業の展開を始めている。心斎橋オフィスには、フレッソ10Mbps(近日100Mbpsに増速予定)及びADSLを引き込み済で、サーバーセンターおよび、観客に公開する形式の常設インターネット放送スタジオNature Cafeを備えている。

今回の開発は、東京北の丸の科学技術館にてシミュレータ教育を実践する理化学研究所や国立天文台広報普及室をはじめ、各地の天文台の教育部門より、ハンズオン・ユニバース/リアルサイエンス教育運動(Real Science を Real Time に Real Scientist と共に体験する科学教育運動)の一環として、全面的な協力を得ることができた。また、日蝕や流星群のストリーム中継を専門とするライブ!エクリプス実行委員会と協力している。

IIAでは、開発成果を科学館、天文台、学校を結ぶネットワークにて活用を図り、常設インターネット放送スタジオ Nature Cafeを中心に、自然科学や環境保護に関するコンテンツを発信して事業を拡大していく予定であり、未踏事業の開発成果を、経済効果として実態化していく活動を、今後も効果的に継続する予定である。