未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書
プロジェクトマネージャ 高田 広章(豊橋技術科学大学 情報工学系)
○プロジェクトの概要
平成12年度未踏ソフトウェア創造事業において、高田がプロジェクトマネージャとして実施したプロジェクト
(以下、本プロジェクトと呼ぶ) について、その概要をまとめる。
1.プロジェクトの公募対象と審査基準
本プロジェクトでは、組込みシステムのための実行時ソフトウェア (リアルタイムOS、ミドルウェアなど)
およびソフトウェア開発支援ツール (CASEツール, 言語処理系, デバッグツール,
コデザインツールなど) の開発を行うテーマを公募の対象とした。ハードウェアと一体で開発することで価値が生じる(または、価値が高まる)
ソフトウェアの開発を提案する場合には、開発テーマの中にハードウェア設計を含めることができるものとした。
審査にあたっては、日本の産業力強化つながるものであることを重視したのは言うまでもないが、組込みシステムの特性から、次のように考えた。
上記の公募対象においては、多くの場合、その成果の利用者は、システムの組み込み対象となる機器を開発する企業
(機器メーカ) であって、機器のエンドユーザではない。そのため、プロジェクトの成果が、日本の機器メーカの国際競争力向上につながるものであることを重視した。例えば、高い信頼性をもった組込みシステムを効率よく開発することを支援するツールは、機器メーカの国際競争力向上につながると考えた。
また、組込みシステム分野は、大学などの学術界における研究が活発でない分野であるため、学術界における組込みシステム研究の活性化に寄与するものである場合には、加点要素として評価した。
2.プロジェクトへの応募テーマと審査の経緯
本プロジェクトに対しては、15件の開発テーマの応募があった。審査にあたっては、組込みシステム分野の研究・開発の活性化が重要であるという観点から、採択する開発テーマを絞り込むのではなく、フィージビリティスタディも含めてなるべく多くの開発テーマを採択したいと考えた。
最初に書類審査により、1件を提出書類の不備を理由に、4件を公募対象との関連が薄いことを理由に不採択とした。
残った10件については、提案者と会ってヒアリングを行った。10件の中には、提案書からは新規性が低いために未踏ソフトウェア創造事業の趣旨にあわないと考えられるものも含まれていたが、そのようなテーマに関しては、ヒアリングにおいて提案書に書けていない新規性があるかを聞き出すように勤めた。また、申請予算額の妥当性を確認するという観点からも、質問を行った。さらに、組込みシステム分野の専門家に対して、10件の提案書のレビューを依頼した。
ヒアリングの結果と専門家によるレビュー結果より、6件のテーマを採択、2件をフィージビリティスタディとして採択、2件を不採択と決定した。不採択の理由は、1件については同様のソフトウェアがすでに実現されていること、もう1件については既存のソフトウェアの実用化・事業化に関する提案であったことから、いずれも本事業の趣旨にあわないと判断したためである。
採択した開発テーマについては、必要となる予算額を査定したが、フィージビリティスタディとしたテーマはもちろん、採択したテーマの多くでも、申請のあった予算額と比べてかなり減額した査定額となった。
3.その後の経過と開発者のプロフィール
採択した8件の中の1件の開発者が、勤務先の会社の了解が得られなかったことを理由に開発を辞退したため、開発テーマは最終的に7件となった。
残った7件の開発テーマの 7名の開発者 (開発者が複数の場合には、代表者) の中で、2名は公務員
(内 1名は国立大学の教官)、3名は会社員、2名は無職であった。公務員および会社員の多くは、兼業もしくは兼職という形で本プロジェクトに従事したが、会社員の中の1名は、会社を休職してプロジェクトに従事した。会社員の中の別の1名は、採択の決定と同時期に勤務先を退社し
(退社理由は本プロジェクトに従事することとは関係ない)、新しい会社を立ち上げた。
4.開発テーマ毎の評価
これは、開発テーマ毎の評価を参照されたい。
5.プロジェクトの総括と反省点
本プロジェクトでは、最終的に7件の開発テーマ (内 1件はフィージビリティスタディ)
について開発 (もしくは検討) を行い、そのいずれも委託した部分について開発に成功した。ただし、十分に満足できる開発成果が得られたテーマもあれば、やや不満な点が残ったテーマもある。いずれのテーマについても、今後の発展が期待できる。
本プロジェクトは、未踏ソフトウェア創造事業の初年度ということもあり、プロジェクトのスタートが遅かったために開発期間が3〜5ヶ月しかとれなかったことが、開発成果に不満な点が残った大きな理由であった。また、IPA、プロジェクトマネージャ、開発者の3者とも、試行錯誤しながらプロジェクトを進めることになった。プロジェクトマネージャの立場からは、多くの点で裁量が与えられているために自由度があった一方で、進め方を決めるのに労力を要した面もある。さらに、プロジェクトの知名度が低かったにも関わらず、応募期間を十分に取れなかったために、予想よりも応募が少なかったことも反省材料の一つであろう。
このような反省を踏まえて、2年度目以降は、プロジェクトの円滑な運営に勤め、より大きい成果を上げるよう尽力したいと考えている。