平成12年度未踏ソフトウェア創造事業


採択案件評価書

1.担当PM  11.村井 純
2.採択者氏名  中村 豊 (奈良先端科学技術大学院大学)
3.プロジェクト実施管理組織  株式会社アックス
4.委託金支払額  23,999,999円
5.テーマ名  サーバ管理支援システムの開発
6.テーマ概要

開発するソフトウェアは、インターネット上でサービスを行っている大規模なサーバシステムを、安定して運用・管理するための支援システムである。実際に運用中の複数の分散したサーバに対して、稼動状況の正確な把握、性能の測定、システム不具合の即座の検知などを行い、それらを障害の対処方法のヒントなどとともに即座に管理者へ通知することで、広域に分散したサーバ群を集中管理することを実現する。これにより、従来サーバ管理者の経験やそれに基づく勘に頼っていたようなサーバ管理業務を、よりシステマティックにかつ正確に行うことができ、管理者の負荷を劇的に軽減することにもつながる。
 本提案では、サーバシステムの通信を外部からモニタリングする手法と、非常にライトウェイトなモニタリングモジュールをシステム内部に組み込む手法を利用して、従来のログ解析、ベンチマークテスト、カーネルレベルモニタリングでは実現できなかった即時性や、正確性、運用持続性、分散性などを実現する。
7.採択理由

現在多様なサービスがインターネット上で萌芽しつつあるが、これらのサービスが社会生活の基盤として根付き、さらに発展していくためには、ネットワークの安定運用・発展とともに、サービスシステムそのもの安定運用が必要不可欠である。その意味で、サーバシステム稼動状況の正確な把握と問題対処に対するシステム運用者の負担を大幅軽減することを可能とする本提案は、私が掲げた「2010年のインターネットを支えるためのソフトウェア」というテーマにふさわしいと判断した。また、提案しているモニタリング手法は、今までに実現されていない新しい発想である。これらのことから、本件を採用した。
8.プロジェクトの成果

(1)開発ソフトウェア

下記モジュールの開発を完成し、統合的に目的を遂行するためのソフトウェアが完成した。

  ・パケットモニタモジュール

  ・プロトコル別解析モジュール

  ・外部状態抽出モジュール

  ・内部状態抽出モジュール

  ・視覚化モジュール

開発されたソフトウェアは、サーバシステムの通信を外部からモニタリングする手法と、非常にライトウェイトなモニタリングモジュールをシステム内部に組み込む手法を利用して、従来のログ解析、ベンチマークテスト、カーネルレベルモニタリングでは実現できなかった即時性や、正確性、運用持続性、分散性などを実現した。


(2)成果実績

本ソフトウェアは、奈良先端科学技術大学院大学内のサービスモニタリングを定常的に実施するのに貢献、また、本ソフトウェアは、第82回全国高校野球選手権大会(甲子園)のインターネット中継に用いられたサーバの観測を行ない、今後の設計のために実際に利用された。


(3)研究論文

開発の成果として、以下の論文が発表された。

・ 中村豊, 小川晃通, ”中継システム ?Web Cashing, DV Multicasting ?,”, 情報処理, VOL.41, NO.11通巻429号, Nov 2000

中山貴夫、中村豊、知念賢一、砂原秀樹、”WWWサーバにおける特徴抽出のための過渡解析手法”,IN研究会、2000年1月
9.評価

契約締結後より順調に開発を進め2月末には開発が終了した。

2001年2月22日、開発成果のデモを奈良先端科学技術大学院大学において実施した。デモの概要は下記の通り。


デモ構成:デモに利用したネットワーク環境を図1に示す。



図 1 デモンストレーション用システム環境

デモ内容:

・ 開発したソフトウェアを利用し、奈良先端科学技術大学院大学の実トラフィックによる、リアルタイムのネットワークモニタリング、および、サーバモニタリングを行い、その結果を表示。図1の「Server」システムが、モニター対象のシステムである。「Monitor」システムで稼動しているモニタリングソフトウェアと、「Server」システム上で稼動しているライトウェイトなモジュールにより、システム情報を収集し、その情報を用いて「Visualization」システム上で表示を行った(図2)。

・ 開発したソフトウェアを利用し、甲子園中継時に測定したサーバモニタリングデータを用いた可視化および負荷分析のデモンストレーションを行った(図3)。



図 2 NAIST モニタリング




図 3 甲子園インターネット中継用サーバの解析


いずれも、実際に動作することを確認し、また実用に耐えうる品質であることを確認した。


まとめ:

本デモ結果と、既に述べた成果、および開発チームより報告された成果報告書による総合的な評価として、本プロジェクトが目的としたソフトウェアが開発され、かつ十分実用に耐えうる品質であったことを高く評価する。
10.本開発テーマの今後の展開の可能性

本開発ソフトウェアによって、大規模なサービスを行うサーバの負荷状況、およびネットワーク状況のモニタリングを行うことが可能となったが、次なる段階として、その結果を利用して、システム構成の改善などを自動的に促すようなコンサルティングツールの構築など、さらなる発展が期待される。